三十四話 神様

 俺たちは神殿の中に足を踏み入れた。


 中は教会のような作りに、長い椅子がずらりと並んでいる。


 それに太陽の光を鮮やかに反射している、カラフルなガラスが印象的だ。


 奥には祭壇のような転移陣の後ろに、大きな女神の像が置かれている。


 その女神像の前には、目を閉じたままの巫女と呼ばれている女性が佇んでいた。




「ようこそ神殿へ、こちらまでどうぞ」




 巫女の澄んだ声が俺の元まで届く。


 俺たちは巫女に従い、近くまで行く事にした。




「私は巫女のリタと申します、本日はどのような御用でしょうか?」




 リタは赤と白の二色で作られた服――和服というのだろうか。


 それと腰まで伸びる黒い髪が、神殿という空間とよく合っていた。


 俺はそんな神秘的な雰囲気を持つリタに要件を伝える。




「スキルの開放をしたくてな、今日は大丈夫か?」


「啓示をお求めですね。確認してみますので、少々お待ちください」




 そう言ったリタは後ろを向くと、祈りを捧げるかのように女神像に手を合わせて膝を付いた。








 俺たちはそのまま五分ほど待っていると、唐突にリタが立ち上がった。




「お待たせしました。本日は啓示を受けられます」


「ありがとう、じゃあ早速頼めるか?」


「はい。それでは、皆さまこちらの転移陣へ」


「久々だから、なんだか緊張しますね」


「私は昔会った事あるけど、それっきりだからもうどれくらい話しをしてないかしら」




 俺たちはリタに促されるまま、転移陣の上に集まる。


 リリアやイリスが喋っているうちに、足元の陣が発光していく。


 そして目を開けていられないほどの光が、俺たちを包んだ。




 ――光が収まったのか、眩しさを感じなくなった俺は徐々に目を開いていく。


 するとそこには、異質な空間が広がっていた。




 黒い壁に縦と横、均等に走っている緑色の線だけの空間だ。


 物はなに一つとして見当たらない。


 足元にあったはずの転移陣がなく、頭上や壁に出口のような物も見当たらない。


 本当に隔離された部屋のようなものと言える。




 「はい、いらっしゃーい。今回はあなたたちね」




 そんな部屋の中に、穏やかそうな女性の声が聞こえてきた。


 他のみんなも反応している事から、俺だけに聞こえているようなものではないのが分かる。




 ……というか俺も含めてだがみんな、この声だけは穏やかで口調が軽薄そうな神と話した事がありそうだった。


 リリアは小さい時に、みたいな事を言っていた気がする。


 神族のイリスはなんと、直接会ったとか言っていたな。


 そして勿論、魔族のラプスウェルもスキルを使っているという事は、だ。


 だがルクシアはどうやらここに来るのが初めてらしく、部屋の様子や聞こえる声に困惑しながら「だれ?」と質問を投げる。




「初めまして、私はかん……じゃなくて神様よ」


「かみ、さま」


「ええ、よろしくね。あなたはええと、ルクシアちゃんね」


「なんで、しってる、の?」


「ルクシアちゃんがまだ赤ちゃんの時に、ご両親が連れてきていたみたいね。既に登録済みになっているわ」




 神はルクシアの質問にそう答えると、続いて俺たちに要件の確認をしてきた。




「それで? 今日は誰のスキルを見ればいいのかしら」


「全員分を見直したい、特にイリスに攻撃用のスキルが欲しいと思っていてな」


「へぇー、イリスが? 分かったわ、ちょっと待ってね。今表示するから」




 神がそう言うと、カタカタと音が聞こえてきた。


 すると、すぐに俺たちの目の前に巨大なステータス画面のような物が映し出された。

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