三十三話 寄り道ホリデイ

 出店は本当に色々な物があるが、食べ物を売っている場合が多い。


 例えば麺を鉄板に広げて炒めている物、甘くてふかふかの菓子、調味料を掛けて焼いただけの肉。


 他にもさっきリリアが見ていたようなアクセサリーを売っていたり、口の中が弾けるような飲み物を売る店もある。


 これは歩きながら見ているだけで、腹が減ってくるな。




 食べ盛り……が関係あるのか分からないが、ルクシアはこの誘惑を振り切るのに苦労をしているようだ。


 ついさっきも我慢出来ずに食べていたせいで、イリスが二度目のモンスター顔を披露していた。




 なので今のルクシアは出店をチラチラと見てはいるものの、通りすぎては次の店も見る、を繰り返していた。 


 気になる物はあっても我慢しているのが丸分かりで、猫と同じ形をしている彼女の耳が、ぺたりと垂れているのが見える。


 それはもう、いかにも元気がないです……という感じだ。




 そうして真面目に十分ほど歩いていると、ようやく神殿が見えてきた。


 ホームから神殿までは二十分も歩けば着くはずなのだが、どれだけ進んでいなかったのやら……。








 神殿のすぐ近くまで来たが、未だにずっと元気がないルクシアが可哀想になってきた俺がいた。


 なので自分の手持ちで、なにか買ってやる事にした。


 勿論、リリアとイリスの二人にもだ。




 すぐ近くの店で売っていた、果物とクリームが巻かれたクレープなる物を買ってやった。


 後でラプスウェルにもなにか買ってやろう、と覚えておくのを忘れない。








「うぅ……まだ、たべたい」


「今俺が買ってやっただろう、これ以上は駄目だぞ」




 クレープをものの数秒で食べてしまったルクシアは、物足りなさそうにしている。


 そんなに食欲があるのはもう、食べ方の問題なんじゃないのだろうか?


 そして少し遅れてリリアとイリスの二人が食べ終わると、笑顔でお礼を言ってきた。




「ふふっ、私たちも。ごちそうさまです!」


「本当、美味しかったわ」


「それは良かった。じゃあそろそろ行こうか」




 みんな食べ終わったので、神殿の入り口まで行く事にした。


 俺はそこでラプスウェルを待つつもりだったが、すぐ脇の道からラプスウェルが現れた。




「あれ? 遅れちゃったと思ったのに、丁度よかったわね」


「まぁ、のんびりしてたしな……」


「はい、一緒に行きましょう!」




 俺たちがあんまりにも進まなかったので、むしろ良いタイミングになってしまったのだろう。


 これでみんな揃って神殿に入れるのだから、終わり良ければ全て良しとでも言えばいいか……。


 自分の中でそう納得しておく事にした。

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