三十話 その後、消滅
「こんな……あっさり……?」
目の前でディードが消滅するところを見たクルトは、弱気になっていた。
「サピエルさん! もう帰りましょうよ!」
「何を言ってるんだ! 向こうから顔を出してくれたんだぞ!」
「でも、このままじゃあ……」
クルトとサピエルが言い合っている間も、デザート・ワームたちは襲い掛かってくる。
それは右から、それは前から、それは足元から、それは左後ろから、それは上から、一瞬の休む間もなく。
全てを防いでいるサピエルだが、グングは段々と押し込まれていく。
「くそ! クルト! お前も動かなきゃそれこそ食われちまう!」
「なんでいきなりこんな事に……やってられるかよっ!」
グングはクルトに向かってきていたデザート・ワームを、別の個体へとぶつけるように吹き飛ばす。
その隙に足元から襲われるグング。
「やべぇ!」
「グング! 引け!」
グングは自分の足がデザート・ワームに食べられると思った。
だが、間一髪のところでサピエルが助けに入る。
ダメージ系のアクティブスキル<
「助かったぜ……ほら、クルト。お前も行くぞ」
「あ、あざっす……」
「グング、クルト。俺はウルトを使う、離れていろ」
「分かった、気を付けろよ」
「誰に言っているんだ、任せろ」
サピエルはそう言うと、自己強化のバフスキルを掛けてからデザート・ワームの数が多いところへと向かっていく。
それを見たグングとクルトは、戦線から少し下がった。
「あいつのウルトなら流石にやれるだろ」
「そうっすね!」
まだ何匹かのデザート・ワームは二人を狙っている。
だが、先程のように数えきれないほどの物量が、四方八方から襲う事はなくなった。
なので二人はパーティのリーダーを信じて、身を守る事に専念した。
「はあああぁぁぁぁっ!!」
サピエルはデザート・ワームたちに向かって、ダメージスキルを連発していく。
出し惜しみはするつもりがなく、自分のMP残量を気にしてもいない。
それは彼の持っているスキル構成がヒト族とはいえ、あまりにも強すぎるからだ。
彼のユニークスキルはパッシブタイプ。
自分の持っている、ダメージを与えるタイプのアクティブスキルを全て、500%の威力に上昇させるという効果だ。
ラプスウェルが二倍、それと比べると五倍という破格の数値をしている。
そして彼の持つスキルの中には、自分の与えたダメージ分のMPを吸収するというダメージスキルまで持っている。
このスキル構成により、サピエルはSランクパーティにまで上り詰めたのだ。
「なかなか数が減らないな……!」
だがそんなサピエルも苦戦を強いられていた。
ウルトのクールタイムがもう少しで終了するので、使えるようになるまで少しでもダメージを与えておこうと躍起になっているのだ。
一発、二発、三発、四発……そして、時間にして五分。
ついにサピエルのウルトが使用可能になった。
彼はそれを確認すると、すぐさまデザート・ワームたちと距離を取って大声で宣言する。
「いくぞミミズども! 食らえっ! アルティメットスキル<
サピエルの周囲に、数千、数万の剣閃が現れてはデザート・ワームに飛んでいく。
その剣閃の一つ一つが、Bランクのモンスター程度なら一撃で消滅させるほどの威力。
彼の持つ最大にして、最強のウルトだ。
これで全てのデザート・ワームを消滅出来るのが理想。
最悪でも数えられる程度まで減らした後に、下がらせた二人と合流して残党狩りか撤退のどちらかを選べばいい。
そう考えていたサピエルは、目の前の光景に、目を、疑った。
「全く減ってない……だと……!?」
正確には数匹は消滅している。
だが、そんな事が分からないほどデザート・ワームの数が、減っていなかったのだ。
そしてその動揺が、サピエルに一瞬の隙を与えてしまった。
彼の右前方にいたデザート・ワームは、その隙を見逃さずに右腕に噛み付いた。
「ぐああっ!!」
噛み付いたデザート・ワームは、サピエルを吹き飛ばした。
グングとクルトの二人が飛ばされてきたサピエルを見た時、彼の右腕は――消滅していた。
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