幕間【追放side】
二十九話 その後、敗戦
彼らは砂漠フィールド<サイレント・デザート>を、一列に並んで歩いていた。
Sランクのクエスト『デザート・ワームの巣窟』を受け、
デザート・ワームとは砂の中を移動出来るほどの強靭な体皮、頭部と思われる部位に生えた無数の歯牙。
そして砂中から獲物の移動する音を鋭敏に察知する、レーダーの様な器官を持ったモンスターだ。
そのデザート・ワームが複数確認されているので、それらを討伐するというクエスト内容になっている。
「あっちぃーっす……」
「クルト、お前はさっきからそればっかりだ」
「サピエルさん……そうは言っても俺たち、もう二時間は歩きっぱなしですよ? そりゃ言いたくもなりますって」
「移動手段を用意してなかったのはお前だろう」
「くっ、それはそうなんですけど……」
まだ幼さの残る顔をしたクルトは立ち止まって不満を伝える。
だが自分のパーティのリーダーであるサピエルから、自業自得だと突き放される。
それもそのはず、クルトは三日前にサピエルから直接「次はデザート・ワームを狩りに行く、準備しておけ」と聞いていたからだ。
砂漠での移動がここまで辛いものとは思っていなかったクルトは、移動手段を用意をするという考えに至らなかったのだ。
「でもこうして、飲み水や装備は用意しましたよ!」
「あぁ、だから文句は言わなかっただろう。俺は歩いていくのに不満はないからな」
「そうだぞ。俺も新入りのディードも、こうして歩いてるんだからな」
「あ、はい。僕はこの辺りの出身なので、慣れてますから」
クルトが言い訳をすると、サピエルは一蹴した。
槍を持って歩く教育役のグングと、クルトより少し若いディードも不満は言わなかったのだ。
一人だけ不満そうにしていたクルトは、大きな溜め息と悪態を吐いて歩きだした。
「はぁー……こっちの街じゃ何一つ、手に入らないとはなぁ……ったくよォ」
クエストの事前準備や、現地での移動手段の確保などは、全てサポーターのシンがこなしていた。
そのシンが抜けた後、雑用は全てクルトが担当する事になっていた。
彼らが延々と続いていきそうな砂漠を歩いていると、崩れた遺跡のような物が見えてきた。
それを見たクルトは元気を取り戻したのか、遺跡に向かって急に走り出した。
「やった、日陰じゃん! ここで休んでいきましょう!」
「あっ、そんな大声で走りだしたら危ないです! 戻ってください!」
ディードは静止の声を掛けるが、クルトは既に走っていってしまった。
残った三人は警戒したまま、合流しようと近付いていく。
「なーにのんびりしてんすか! 早くこっち来てくださいよ!」
クルトは自分に危険が迫っているとは思ってもいない様子で、三人に対して大声で話し掛けた。
「分かったから待ってろって、そこ動くんじゃねぇぞ」
「サピエルさん、多分そろそろ……」
「あぁ、どうせ狩りに行くところだったんだ。手間が省けたな」
彼らの討伐目標である、デザート・ワームが生息している場所までは、まだ少し歩かなければいけない。
だがクルトが騒いだせいで、周辺にいたであろうデザート・ワームに察知されていた。
遺跡の周りから、不自然に砂埃が舞っていることがその証拠だ。
その事にクルト以外の三人は気付いていた。
そして三人がクルトの近くまできた時、デザート・ワームたちは砂の中から一斉に襲い掛かった。
「こんなにいたのかよ!?」
「下がれ!」
サピエルとグングは自分に向かってきたワームは防いだ。
だがディードは――既に上から半身が消えていた。
「ディード! くっそぉ!」
「マジかよ……」
デザート・ワームに食われまいと、槍で受け止めているグングが悔し気に声を荒げる。
対照的にクルトは、ディードが消滅する瞬間を目の前で目撃してしまった。
そのせいで、ショックが大きかったようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます