二十八話 輝く笑顔
「あらあら。ルクシアちゃん、ほーら、おへや行くわよ」
「んぐぅ……」
寝てしまったルクシアの事を、二階の部屋まで連れていったイリス。
「全く、ルクシアは自由すぎるのよね」
「でも本当に今日は疲れましたぁ……」
「そうだな、二人ともお疲れ」
「そんな! シンさんがいてくれなかったら危なかったですから」
「あたしたちじゃ、ウルフに負けてたかもしれないしね」
ウルフだけではそんな事もなさそうだと思ったが、
みんなが個人戦で戦っていたのなら、その通りになっていただろう。
「夜狼がいなかったら大丈夫だったと思うぞ」
「そうだといいんですけど」
「それにしてもあの夜狼は、なんであんな森にいたのかしら」
「うーん、やっぱり群れのウルフたちが呼んだ? とかでしょうか」
「そこまでは俺も分からないな……」
俺たちが話しをしていると、すぐにイリスが戻ってきた。
「あら、なんの話しをしてたの?」
「別に特別な話しはなにもないぞ」
「そうなの? 二人とも本当?」
「そうよ。あんなところにどうして夜狼がいたのかって、話しをしていたところよ」
「そうですね。結局、私たちじゃ答えは分からなかったですけど」
二人とも同意してくれたので、イリスは素直に引き下がってくれた。
別に疑っている訳ではないと思うけどな。
「イリスも戻ってきたし、俺は帰らせてもらうか」
「あらあら、別にいいのに」
「そうですよー! 部屋はありますから泊まっていってください!」
俺が帰ろうとすると、イリスとリリアの二人が止めてきた。
だが俺は苦笑しながら断る事にした。
「いや、それは駄目だろう……」
「あたしも反対よ。そりゃ悪いやつだとは思わないけど……流石にね?」
「そうだろう。だから今日も
俺の言葉にラプスウェルが同意してきた。
魔族だけどそういうところはしっかりしてるものなんだな。
少し感心……というと語弊があるかもしれないが、まぁつまり驚いた。
種族が違っても、やっぱり気にするよな。
ラプスウェルが援護をしてくれたので、俺は席から立って玄関へと向かう。
実際、疲れたので一人でゆっくりと休みたかったのもある。
夜狼と俺一人で、それも真正面から戦闘したのは初めてだったからな。
本当になんとかなって良かった。
「それじゃあ、長々と悪いな」
「あ……はい」
「あらあら。リリアちゃん、また明後日には会えるのよ」
「そう、ですね!」
俺の言葉に寂しそうな顔をしたリリア。
彼女の後ろにいたイリスが、両手をリリアの肩に置いて励ます。
するとリリアはすぐに元気が出たのか、可愛らしい笑顔を見せてくれた。
ラプスウェルも「日曜、みんなで行くんだからね。忘れるんじゃないのよ」と言って手を振ってくれる。
……そういえば俺も、言い忘れた事があったな。
扉に手を掛けていた俺は、その場でくるりと振り向く。
「みんな、これからも、よろしく頼む」
「……っ! はい!」
「うふふ、楽しくなるわね」
リリアもイリスも、大歓迎といった感じで喜んでくれた。
俺の事を誘ってくれたリリアには、本当に感謝しないといけないな。
そしてラプスウェルは、腰に手を当てながら当然!とでも言いたいのか頷いている。
「まぁルクシアはもう寝ちゃったから、いないけどね」
ラプスウェルが茶化すと、俺たちはみんなで笑う。
本当に良いパーティに出会ったと、俺は心の底から感じたのだった。
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