二十七話 帰る場所
俺たちは街に着くと、ギルドへ向かって報告を済ませた。
その際に
同時に、討伐もした事を一緒に報告しておいた。
話しを聞いた受付嬢に「上と確認を取りますのでまた改めて、後日報告をお願いします」と言われた。
今回は元々の規定通り、クエストのクリア報酬のみを受け取って帰る事になった。
俺もみんなも疲れていたので、ホームまでの帰り道に何か食べる物を買って帰る。
そしてホームに着いた時にはもう、すっかり夜になってしまっていた。
「あー……疲れましたぁ」
「ねむ、い」
「あらあら、ご飯はいいの?」
「たべる」
「たべます」
「あたしももう、お腹空きすぎて限界だわ……」
へばっているみんなに、各々が選んで買った食事を配っていくイリス。
俺のところにも、スパイシーな香りがする肉が置かれた。
「ありがとう、それじゃあ食べようか」
「んぐんぐ、んぐう」
「はい! いただきます!」
「ルクシア……あんたは食べるのが速すぎるわ……」
「あらあら、うふふ」
俺たちが手を付ける前に、ルクシアはもう食べ始めていた。
みんな食事しながらも今日の反省、というより軽い振り返りをしていた。
これまでもきっと、そうして来たのだろう。
そう感じるほどに、自然に話し出していて仲の良さが伝わってくる。
「そういえばシンさんの腕がガブーって食べられちゃった時は、つい目を逸らしちゃいました」
「あぁ、あの時か。スキルを使うつもりで囮にしたからな」
「わたしも、おどろいた」
「あれは俺のアクティブスキル、
自分だけが対象、効果も一回分だがどんなダメージでも無効に出来るスキル。
回数無効系なので噛まれ続けていた時に、途中から痛みを感じていた事を一緒に説明しておいた。
「どんなダメージでも、なんて凄いスキルじゃない!」
「そうねぇ。私はそういうスキルもないから、いつも足手まといで……」
「そんな事ないですっ」
「あぁ、特にユニークスキルの効果は一級品だと思う。俺が保証する」
「あれは一体ずつにしか効果がないから……沢山モンスターがいると、どうしても使い勝手が悪いのよね」
「俺のスキルもクールタイムが長いからな、いざという時にしか使えないのが玉にキズだ」
強力なスキルは、それだけ消費MPが多かったり、クールタイムが長い。
それにイリスの役割は回復役だ。
普通のパーティなら回復さえ出来れば、それで充分と言える。
だが彼女は強力なユニークスキルを持っている。
それだけで他の回復役より上なのだが、もっと役に立ちたいという事なのだろう。
まぁ長年サポーターをしていた俺も、そう思って色々試していた時期があったからな。
その気持ちはよく分かる。
「だったら今度、みんなで神殿に行かないか?」
「神殿ですか? 私が行ったのはまだ百……ええと、かなり前ですね!」
昔の恥ずかしい記憶でも思い出したのだろうか。
リリアは顔を真っ赤にしながら言った。
「みんな今回の戦闘で、スキルポイントが増えているはずだ」
「そうね、そこそこ増えたわ」
「そうだろう? これでイリスの悩みが解決出来るかもしれないからな、行ってみるのも良いと思うんだ」
この世界のスキルとは神殿で神の啓示を受け、ポイントを消費して使えるようにする物。
それは神族のイリスは勿論、魔族のラプスウェルでも同様だ。
だがこの世界のモンスターは何故か、スキルを使ってこない。
それはこの啓示を受けられないからだと、どこかの学者が言っていたのを思い出した。
俺にはそれが本当かどうかなんて、分かる訳ないけどな。
とにかく現状では火を吐く、雷を発生させる、といった『スキル扱いではない』攻撃がいくつか確認されているのは確かだ。
「そうねぇ。それじゃあ今度の日曜にでも、どうかしら?」
「いいわね! あたしもなにか開放出来るといいんだけど」
「日曜、シンさんとお出掛け……お出掛け!」
「よし、それじゃあこれで決定だな」
話しが終わった俺たちは、これで解散しようと席を立つ。
すると、とある場所から「ぐー……むにゃ……」と安らかな寝息が聞こえてきた。
「あらあら、ルクシアちゃん寝ちゃってるわね」
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