二十六話 目的達成!
ラプスウェルは血のような深い赤色の大剣を、上から大きく振りかぶる。
そのまま俺の顔の至近距離に刃が下ろされて、苦しそうに暴れていた
ルクシアのウルトの後に、ラプスウェルの攻撃をまともに食らった夜狼の身体は消滅を始める。
夜狼の身体が完全に消えると同時に、噛まれていた腕を自前の回復スキルを使って治療しておく。
「助かった。ただ剣の位置が目の前すぎて、流石に肝が冷えたぞ」
「斬る場所はちゃんと狙ってるから大丈夫よ。それに助けてあげたんだから感謝してよね」
ラプスウェルはそう言うと、手元から大剣を一瞬で消す。
そのまま流れるように両手を腰に当て、自慢気に胸を張ってきた。
俺は彼女への返答をスルーして、落ち込んでいそうなルクシアへ言葉を掛けた。
「わたしのこうげき、いっかいじゃ、ダメだった」
「ルクシアは攻撃力が飛び抜けて高い訳じゃないからな」
「……うん」
「でもダメージはかなり入ってそうだったぞ、それに急所への攻撃も正確だった。あれで倒せないならしょうがないさ、気にするな」
「わかった」
素直に頷いたルクシアは本当に気にしなくなったのか、すぐにインベントリの確認を始めた。
すると離れた位置にいたリリアとイリスも近寄ってきたので、俺はクエストの受注書を取り出した。
みんなで眺めていると、『クリアマーク』が付いた。
「やった! シンさん、今度こそクリアですよ!」
「あぁ、イレギュラーはあったが何とかなったな」
「シンさんのお陰です!!」
「いや、こちらこそ助かった。イリスの支援もタイミングが良かった」
「あらあら、どういたしまして」
俺は無邪気に喜んでいるリリアに同意して、二人に感謝を伝える。
クエストに行く前から予想していたが、この娘たちはみんながみんな優秀なステータスを持っているせいで、自分勝手に動いてしまっていたのだろう。
俺の所属していたパーティも、昔に似たような事があった。
だからこうしてすぐに改善点を見付け出せた。
以前の経験ってのは意外なところで役に立つもんだな。
ともあれ今回の『チームワーク』を意識させるという目的は、充分に達成出来たと思う。
最初のウルフたちだけなら俺の指示で上手くいっただけ、と思われたかもしれない。
しかも夜狼が現れた後も、もし俺が一人で倒してしまったら、みんなで協力して上位ランクのモンスターを倒すという経験は出来なかった訳だしな。
まぁ……こんなに凄いステータスなのに、俺一人で倒せてないんだが……。
これまで見た事がないくらいの数値に、つい舞い上がっていたのだろう。
今後の自分を戒めつつ、みんなと一緒に帰り支度を始めた。
「って、あたしにも何か言いなさいよーっ!!」
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