二十五話 チームワーク
俺は
それに気付いた夜狼は後ろ側へ大きく跳んだ。
距離を離したいのだろうが、俺はそれに追い縋るように更に速度を上げて距離を詰める。
「逃がすか!」
すぐに近付いた俺は、右手に持ったナイフを小さく振りかぶる。
夜狼はそれを避けて、また離れようと動きだした。
現状を打破しようと前に出たが、このままじゃ結局長引きそうな予感がする。
このモンスターは『夜狼』の名前の通り、夜になるとかなり強力なモンスターに変貌してしまう。
今はまだ夕方に差し掛かったところだから余裕はある……が、のんびりしていられるほどの時間はない。
「私が止めます!」
「わたしもいく」
「あたしは二人を守り抜くわ」
「あらあら、私も良いところを見せないとね」
後ろにいる四人の声が聞こえた。
同じステータスであるルクシアなら、このスピードにも付いてこられるだろう。
俺とルクシアで攻めれば、おそらくリリアたちへの攻撃が少なくなる。
そうすればリリアも援護はしやすいか。
俺は一瞬でそう考えるとルクシアに声を掛ける。
「俺は左から行く、挟むぞ」
「わかった」
俺たちはそれだけ話すと、夜狼へ向かってお互い走り出した。
夜狼は挟まれると察知したのか、俺たちが近付く前に間を抜けていこうとする。
だがそれを許すリリアではなかったようだ。
「そう来ると思ってました、アルティメットスキル<エアリアルアロー>!!」
「私も続くわ、アクティブスキル<
リリアが放ったウルトは、夜狼に目掛けて荒々しい暴風を巻き起こしながら迫っていった。
イリスのスキルで自慢のスピードが奪われた夜狼は身の危険を感じ取ったのか、それを避けるように俺の方へと向かってきた。
正面から対峙する俺は夜狼を斬り付ける――だがそれもギリギリ避けられてしまった。
そして夜狼が反撃とばかりに、俺が伸ばしている右腕を食い千切ろうとしてきた。
その瞬間、俺はアクティブスキルを発動してダメージを無効にする。
「<
噛み付かれた右腕はそのままに、左手で夜狼の首を掴んで抑えつける。
「やっと捕まえたぞ」
両手が塞がった俺はどう攻撃しようかと悩んだが、すぐにルクシアが来てくれた。
「そのまま、おさえて。アルティメットスキル<ウィークポイントブレイク>」
ルクシアは俺が抑えている場所を正確に避けて、すぐ近くの喉元に深々と短剣を突き立てた。
夜狼はゥゥグッ!と声にならない鳴き声をあげながら暴れ出す。
これまで大きなダメージは与えられていないので、急所への一撃とはいえ流石に倒せないか。
俺は逃げ出そうと暴れ続ける夜狼を、全身を使ってしっかりと抑えつける。
だがアインマリッタの効果時間が切れたのか、噛まれたままの腕から痛みを感じてきた。
「くっ……だが、逃がさないからな!」
「こうげき、つづける」
「頼む!」
「わかった」
俺の代わりに誰かが抑えてくれたらウルトが使えるんだが……。
この状況では思ってもしょうがないので、腕の痛みに耐えながらルクシアに託す。
すると黒のドレスを模した装備を着ているラプスウェルが、大剣を見せ付けながら俺の前に現れた。
「あたしに任せなさいよね!」
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