十一話 強いという事
俺はクルトに対して、お節介ながらも色々と教えてやった。
更に最後には、グングの株も上がるようにした。
これで多少は言う事聞くようになるだろう、そう思っていた。
「ナニ勝手に終わったみたいにしてんだよ!」
そう叫んだクルトは立ち上がり、すぐに剣を構えた。
「根性はあるみたいだな」
「イチイチ上から目線で、うるっさいんだよ」
「俺の方が『おっさん』だからな」
「あーそうかよ! じゃあ、もういいから。逝っちまえよ、アルティメットスキル<ディフュージョンバン>!!」
クルトが持つ剣先に光が集まりだす。
剣先に集まりきらない光が逆流するかのように、キラキラとした光が俺とクルトの周囲を照らしていく。
「クルト! それはやりすぎだ!」
離れた場所にいるグングの声が聞こえてきた。
俺がパーティにいた頃に、クルトがこんなスキルを使うところは見た事がない。
昨日獲得したスキルポイントで、新しく習得したのだろうか。
そしてこの攻撃はそんなにも危険なものなのか。
部屋の事といいスキルといい、ギルドで別れたのがかなり裏目に出たかもしれないな。
「別にいいだろ! もう同じパーティの仲間って訳じゃねぇんだ! どうなろうが知るかよ!」
「根性はあっても、性根は直らないか」
「最後に遺言くらいは聞いてあげますよ! アッハハ、形が残ってればですけどねぇ!」
クルトは相変わらず、ニヤついた顔をしながら俺を見下しているようだった。
「これで終わりだァ!!」
俺たちの周囲に舞っていた光が、急に意志を持ったかのように俺だけに集まりだした。
そう思った次の瞬間――俺は無数の爆発に飲まれた。
「ハハハッ! 見てくださいよグングさん! 跡形も残って、残って……?」
「……これは確かに物凄い衝撃だったな、並みのモンスターならそれこそ跡形もなさそうだ」
俺は傷の一つもなく、同じ場所に立っていた。
「無傷……? な、なんで」
「信じられないか? 俺のアクティブスキル<使い
「お、おいシン。お前、大丈夫なのか?」
あの爆発を見たグングは、急いで近くまで見に来ていたらしい。
俺はグングに無事だと伝えると、クルトと目を合わせる。
するとクルトは、悔しそうな顔をして目を逸らした。
「この威力と範囲ならそのウルトは
「っ!」
「いいか、戦うのは何もモンスターだけじゃない。冒険者同士での戦闘になる場合もある、その時はスキルの撃ち合いになって『読み』が発生する。覚えておくといい」
クルトはモンスター相手の戦闘経験しかなかった筈だ。
だから俺が攻撃を無効化するなんて考えてもいなかったのだろう。
このスキルはどんな攻撃でも無効化出来るが、気軽に何回も発動出来るほど消費MPもクールタイムも軽くない。
それも対象が俺一人のみ、無効に出来るのも一度きりという制限付きだ。
正直あの爆発が多段スキルだったら危なかっただろう。
「あんなスキル持ってたんだな、それならサポーターでももっとやりようがあったんじゃないのか?」
グングは俺のスキルの効果を勘違いしているようで急に責めてきた。
だが俺にしか対象に出来ない事を教えると、グングは謝りながら頭を下げた。
「俺も教えた事はなかったからな、別に構わない」
「そうか、すまねぇな。ほらクルト、お前も謝っとけ」
「なんで俺が!」
「お前から吹っ掛けたんだろ? だったら謝ってホーム戻るぞ」
「くっ……すいません、でした」
まだ納得が出来てはないみたいだが、クルトも頭を下げた。
これで少しは矯正出来ればいいが。
「じゃあ俺はもう行くぞ、この後にも用事があるんでな」
「そうか、時間取らせて悪いな」
「じゃあなグング。それとクルト、そのショートソード。大事に使ってくれ」
俺はそれだけ話すと、踵を返してホームと逆側へと歩き出した。
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