三話 現状への理解

「それで、早速本題なんだが」


「はい。先程も聞いた通りなのですが、シンさん。私たちのパーティに入って貰えないでしょうか」




 リリアは真面目な顔で、俺の事を真っ直ぐに見つめてくる。




「俺も最初に言った通り、今すぐに返事は出来ない。何か事情があるなら聞くし、アドバイスの一つくらいは出来るかもしれない」


「そうですね、まず私たちの現状から聞いて貰ってもいいでしょうか」




 俺は相槌だけ打つと、リリアの話しを待つ事にした。




「まず最初に、私たちのパーティにはヒト族がいないんです」




 それくらいはよくある話しだ。


 多種多様で複数の種族が存在する亜人種あじんしゅとは違い、<ヒト族>にはヒトしかいない。


 だからヒト族が一人もいないパーティというのは、この世界では当たり前に存在している。


 そして亜人種はその種族固有のスキルを持っているが、その種族だったら誰もが同じスキルを持っているという事にもなる。


 だがヒト族はその固有のスキルを持たない。


 その代わりなのかヒト族は亜人種ではなかなか見ない、特別で強力なスキルを持っている場合が多い。


 俺が数時間前まで所属していた『元パーティ』は、そうした理由でヒト族しかメンバーに加えないという決まりがあったくらいだ。




「それでも私は冒険者になる為に強い仲間を探していまして、既にいくつかの種族の方に声を掛けました」


「どうして冒険者をやろうと思ったのかは知らないが。まぁ、王女が護衛も連れずに一人でやっていくには無理があるだろうな」




 リリアはこくりと俯きながら話しを続ける。




「私の事はまた後日、改めて話します。そして実際、ステータスもスキルもかなり強力な皆さんを集める事が出来た、と私は思いました」


「思いました、という事は」


「はい、皆さん全員が何かしらの欠点を抱えていました」




 欠点、というと種族固有のデメリットという感じでは無さそうだ。


 だがこれだけじゃ何も分からない、とりあえず他も聞いてみるしかないか。




「それだけ聞いても分からないな……それで? 他にも何かあったりするのか?」




 俺が続きを促すと、リリアは重たそうに口を開く。




「はい……。それと、私たち……致命的にチームワークが、悪いんです!」


「……なるほどなぁ」




 リリアは切実そうな顔で、俺を真っ直ぐに見てくる。


 呆れ半分、やるせなさ半分を感じた俺は、ついつい窓の方へ目を向けた。


 そこには夜も待てない星がたった一つ、強く輝いてるのが見えていた。

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