第4話
——ピピピピピ ピピピピピ。
「今日は日曜だぞ。誰だ目覚ましなんてかけたやつは」
いつ聞いても不快になる機械音に無理やり起こされる朝はなかなか慣れない。
しかしこれに頼らなければ起きれない自分の不甲斐なさにも腹が立つ。
それにかけた覚えがないのに騒がしく主を起こすのは何故なのか、意志を持ち始めたのならがんばって買い換えます。
——ピピピピピ ピピピピピ。
「黙れ」
強めに目覚まし時計を止めたはずが鳴り止まない。
壊しちゃったのか、はたまた元から壊れていたのか。あれ、この音布団の中から聴こえてないか。
——ピピピピピ ピピピピピ。
鳴ってたのは携帯か。いや、その、悪かった。目覚まし時計と目覚まし時計をかけたことを疑ってしまった昨日の俺へ謝罪しよう。
「はいもしもし」
『あ、やっと繋がった……お は よ う』
「ん……鳴川か、まだ朝はやいんだけど何か用?」
鳴川とはこの前連絡用にLINEと携帯の電話番号を教えたのだが、まさかこんなにすぐにかかってくるとは思わなかった。
『11時は朝早くないでしょ。昨日LINEしても一向に見る気配がないから電話したのに繋がんないし』
「午前中だし四捨五入したら朝だ。わかった、今見てみるよ」
『どういう四捨五入したのか教えて欲しい』
昨日は不貞寝したまま朝までぐっすりコースだったから仕方ない。そう一人で納得してLINEを開くと、確かに鳴川からの通知が入っていた。
(人狼について調べてたんだけど、この付近でも目撃情報があったらしいので明日一緒に行って欲しいです)
「確認した。俺は不参加で頼む」
『どうして?』
「できれば関わりたくないだけだよ」
『じゃあもう斗賀くんには頼らない。私一人で調べてくるから』
「それもやめて欲しい」
俺の情報を握ったまま、如何にも怪しい情報に釣られて貰っては困る。
それに鳴川を一人で行かせて、もしなにかあった際に責任がとれない。
『ずるいよ……目撃情報も多いし情報収集も大事でしょ?』
「半端な気持ちで人狼を探ろうとするのはやめておけ」
『半端なんかじゃない! 私は私が人狼は危ない存在じゃないってみんなに証明して斗賀くんに恩返したいだけ……!』
「学校での件なら気にしなくていいから」
鳴川の気持ちは嬉しいが、あまりに飛躍し過ぎている。
それにそこまでして貰うようなことなんて俺は——。
『違うよ……ううん……私がそうなって欲しいだけだから!とにかく私行くから!』
なあ、どうして鳴川はそこまで人狼に固執するんだ。
「ああもう、待て!俺も行くから!」
「目撃情報が多発してるのはここら辺みたいだね」
「なるほど。それでこっからどうするのさ」
「とりあえず聞き込みとか……?」
鳴川も後のことは考えていなかったらしく、疑問符までついてしまう程ぞんざいな返答だった。
そんな困り顔で助けを求められても俺だって考えてない。
「そうだ! ここら辺に和風の豪邸があるんだけど、その付近での目撃情報があるみたいだしその家の人に聞いてみよっか」
名案なのか、はたまた迷案なのか。
目撃情報がその近辺がほとんどならば、その豪邸の住人が人狼の可能性は十分にありえる話だ。
それに人狼が全員もれなく話の通じる奴だという保証なんて何処にもない。俺自身、俺以外の人狼を知らないので、ある種の賭けである事は間違いない。
狼男が静かに暮らしているというのは、公になるような大きな問題が今まで起きていないことを指して言っただけ。
それをここまで信用されていたとは困ったな。
「鳴川、危ないから俺が聞く間隠れててくれ」
豪邸まで地図を見て進み、鳴川を遠くに非難させ、俺は恐る恐るインターホンを押した。
——ピンポーン。
想像以上に大きく鳴り響くベルの音が俺の不安を煽る。
「はい、どちら様でしょうか」
「す、少し聞きたいことがありまして」
「少々お待ち頂けますか?」
言われるまま棒立ちで震えながら待っていると、アニメでしか見たことがないようなメイド服を着たメイドが出てきた。
ガチで仕えてるメイドって実在してたのか、金持ち半端ない。
「それで聞きたいことと仰いますと?」
「あの、あー……えっと大変言い難いんですが、この家の近辺で最近人狼が何度か目撃されていると聞きまして」
「その話ですか。わたくしは何も知りませんのでそれでは」
呆れたような、少し怒ったような顔をして、必要最低限の短い言葉で会話を終わらせ、ドアを閉められてしまった。
仕方ないので一度鳴川と合流することにした。
「それで? 諦めちゃったの?」
「いや、何度かインターホン押したけど無視されたから仕方なくだよ」
「仕方ないなぁ。じゃあ今度はわたしが行ってくる」
「人が問題なわけじゃないと思うけど。待って、鳴川で行けたらめっちゃショックだから!」
今度は俺が鳴川と交代して暫く様子を伺っていたが、やはり狼男の話題を出した途端態度を変えてドアを閉められてしまった。
一応よくはないけど一安心。
「私なんかじゃだめだったみたい……」
「大丈夫、鳴川がだめだった訳じゃないから」
「もう少し頑張ってくる」
「迷惑だからやめなさい」
めげずにインターホンにしがみつく鳴川を説得し続ける絵面が傍から見たら面白すぎたのだろう、通行人にクスクスまたはゲラゲラ笑われた。
「君たち僕の家の前で何やってんの?」
「あ、主様!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます