7.トライアウト②
——くっそ、さすがにそろそろ1本欲しいぜ……
ここまで、第1打席は変化球にバットが止まらず空振り三振、第2打席は初球を叩くも痛烈なサードライナーで2打数ノーヒット。まだまだ打席は残っているけれど、ここで強烈なインパクトをスカウト陣に与えるのならシングルヒット2、3本では足りない。いい加減打たなければ、ちょっとの興味すらも持って貰えなくなってしまうだろう。
——
対戦相手は大江戸クラフトマンズから戦力外になったサウスポー、
——狙うなら初球、か?
内山にとっては3打席目だが、仲村にとってはこれが初めての対戦打者。どんなに沢山の球種を持っていたとしても、大抵のピッチャーは大事な場面の最初はストレートを投げたがる。仲村のストレートはせいぜい140キロそこそこ、ヤマを張っていれば打てない球じゃない。
ゆったりとしたフォームから、仲村が左腕をしならせる。
——1、2の……
仲村の指先を離れたボールは、外角低め、ストライクゾーンいっぱいいっぱいをのコースを突いてくる。
——3!
カアァァン!
逆らわずに弾き返された打球が、ファーストの頭の上を越えていく。
——よし、まずは1本目! ……ライト遅ぇ!
内山は決して脚力のあるタイプでは無い。プロの世界であれば少し遅いくらいである。が、バウンドを読み違えたのか何なのか、ライトがやたら打球に追いつくのが遅れている。さらに体勢を考えれば、よほどドンピシャの送球が来ない限りはセカンドを陥れることが出来るはず。
——行ける……!
内山はスピードを落とすこと無くファーストベースを蹴ってセカンドに向かう。
「セカンッ!」
セカンドのベースカバーに入ったショートの選手が、大きく手を広げて送球先がここだと示す。
——間に合えぇぇぇ!
セカンドベース手前、内山はヘッドスライディングで頭からベースに飛び込んでいく。グラブの革にボールが当たる音がしたと思ったら、そのすぐ後に背中にタッチされた衝撃が走る。
「セーフ!」
一瞬間が空いてからの審判のコールに、内山はベース上で思いっきり拳を握りしめた。
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