第二部  許嫁と同際

第10話  大事な話があるらしい

 あれからまた結夏との生活が始まった。


 結夏は家に帰ったのがきっかけで父親とも仲直りし、この家に同居することも認めてくれたらしい。


 今日は久しぶりにゆっくりできる日曜日。


 だと思っていたのだが……


 プルルル プルルル


 僕のスマホの着信音が鳴った。


 嫌な予感……


「ッ!?じ、じいちゃん!」

「はい…もしもし」

「おぉ栄汰、今日の夜にな桐花の娘さんも連れてわしの家にこい」

「なんでじいちゃんが同居のこと知ってるんだよ!?、それに突然すぎ!」

「お前たちのことについて大事な話があるんだ。必ず来るんだ」

「いや、大事な話ってなんだよ…」

「詳しいことは夜に話す。車を用意させるから7時に外で待っておれ」


 ブチッ!


 7時にってまだ結夏に伝えてないし、大事な話ってなんだよ。

 まぁ、同居をやめろとかいう話ではないだろうし。


「おはよー栄汰」

「おはよう、今日起きるの遅かったな」

「うん、昨日は夜遅くまで猫のドキュメンタリー映画観てて」

「それってこの間の休みに二人で観た映画だよな…」

「うん。そうだけど」


 猫がただただ動き回るだけの平和で幸せ二時間映画を何度も観て楽しめるって、やっぱ女子はすごい。


「なぁ結夏。今日の夜とかまだ予定ないよな?」

「うん。ないけどどうしたの?」

「なんかじいちゃんが大事な話があるからって今日の夜結夏も連れて家に来いって」

「いいよ。予定ないし」


 割りとあっさり……


「おぉそうか、じゃあ7時までに用意しといてくれ」

「わかった」


 まだ7時まで時間もあるしと思い僕は風呂に入った。

 のぼせる手前くらいまで湯船に浸かり身体を拭いて外に出る。


 ガチャ


「「え・・・・」」

 風呂から上がりドアを開けるとそこには、


「きゃっ!、、、栄汰こっち見ちゃだめッ!」

「お、わかたたた、、ッ。てか何で裸なんだよッ」

「だって、もうお風呂上がってると思って私も入ろうと思ったからッ!」


 我慢しろ、我慢しろ!、見るんじゃない!、栄汰ぁぁぁあああ!

 僕は自分のえれふぁんとを片手で抑えながらもう片方の手で顔面を全力で叩きよこしまな気持ちを紛らわす。


「も、もう大丈夫だから!」


 血が出る手前くらいで僕は叩くのをやめ顔を上げた。

 あ、服着てる……


「ねぇ栄汰、なんか少し落ち込んでない?」

「そ、そんなことない!」








 それから服を着替えたり本を読んだりしているうちに時間は経ち、


「栄汰、そろそろ7時だよ」

「今行く」


 僕は階段を降りて財布とスマホをもって外にでた。

 今日は空に星が沢山見える。


 ガチャ


「明日は晴れそうだね」

「そうだな」


 後から外に出てきた結夏も星を見てそう呟いた。

 少しするとタクシーが家の前に止まる。


 僕と結夏はそれに乗りじいちゃんの家に向かった。


 ――20分ぐらい走りタクシーは祖父の家の前で止まった。


「お代いくらですか?」

「坊っちゃんお代は要らないから早く降りな」


 暗くて気づかなかったがよく見ると、


「この間のドライバーっ!、てかお金は大丈夫なんですかッ?!」

「あぁ、もう頂いてるから」

「もらってるんかいッ!」


 少しでもカッコいいと思ったことを後悔した。







 祖父の家に上がりお手伝いさんにも挨拶をして客間に通され座布団に座った。

 座って待っていると祖父が部屋に入ってきた。


「久しいな、栄汰」

「で、大事な話ってなんだよ」

「待て待て、今日はもう一人客人がおってな」


 客人?


 ガラガラガラッ


「えっ?お父さん?!」

「あぁ、今日は二人に大事な話があってな」


 こ、こぇー。

 大事な話って、もう同居もできなくなるとか…


「で、その話って……」

「「二人共、結婚しなさい」」


「「え……。ええぇぇっ!!??」」

























  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る