第11話 僕のストーカーが許嫁になった
「「二人共、結婚しなさい」」
え?、意味がわからない。
大事な話っていうからてっきり同居をやめろって言われるのかと思っていたのに結婚しろ?!
「あの……前にも言いましたけどそれはできません」
「二人が好き同士じゃないとだめなんだろ?結夏、お前は栄汰君のことどう思ってるんだ」
そんなのただの同居人でしかないだろう。
僕は大して顔も良くない年齢=彼女できたことないどこにでもいる高校生。
結夏が僕のことを好きなはずがない。
「それは……でも栄汰は優しいし私は許嫁になってもいいよ」
「おい結夏、ほんとにそれでいいのか?」
「私はいいけど、栄汰はダメなの?好きな子とかいたりするの?」
な、なんで今そんな質問を……
まぁ僕は二次元にしか興味がないので。
「いないかな」
「そーなんだ……」
なんで少し嬉しそうなんだ? 別に変なこと言ってないよな。
「じゃあこの話は決まったということで」
――時計を見るともう日付が変わりそうな時間帯。
じいちゃんと結夏の親父は酔いつぶれ呂律も回らない状態。
結夏は横たわって幸せそうに眠っている。
明日は学校があるっていうのに……
でも気持ち良さそうに寝ている結夏を起こすのも少し可哀想な気がする。
僕は仕方なくじいちゃんよりも酔がましな結夏の親父を揺する。
「あの、お父さん起きてください」
「誰がおとーさぁんだってェ?、君におとーさぁうんと言われる筋合いはなぁい」
「あの……僕って結夏さんの許嫁ですよね?」
「はぁい?結夏とのけっこぉんはみとぅめぇん」
めんどくせぇ。
初めて会った時は真面目そうで怖くてでかくて貫禄もあったのに、今となってはただの酔っ払ったおっさんだ。
酒って人格すらも変えてしまうんだな……
僕はこれ以上ここにいるわけにもいかないので結夏を背負って帰ることにした。
――目が覚めると同時に腰に少し痛みが走った。
あぁ、昨日は結夏を背負って家まで帰ったんだっけ。
タクシーは値段が高いので迷いながらも歩いて帰ったことを思い出した。
僕はベットから起き上がり隣を見る。
「もう起きたのか」
のしのしと階段を降り洗面所に行って顔を洗う。
それから少し鏡に写る自分を見つめていると
「クスス。なに鏡の前で自分の顔眺めてんの?」
「え、いや別に眺めてなんかないしっ」
「ほんとかな〜」
見られたくないところを見られおまけにからかわれた。
それに僕がナルシストみたいじゃないかっ!
べ、べつにこの間ネットのサイトで見た『ダンディーな男子のモテるポージング』を参考に自分がイケメンに見える角度を鏡の前で研究なんかしてないしっ!
いつか絶対仕返してやると思いながら歯を磨いてリビングに向かった。
「なぁ栄汰。最近アイシングライブ開いてねぇじゃねえか」
「そーだなー。二次元は最近飽きてきてな」
「お前頭打ったんじゃねーのか?伊藤まみちゃんのことはどするんだよ!」
「打ってないしまみちゃんは二次元だ」
隆平の言うとおりアニメーションアイドル育成ゲームは最近サイレンしていない。
結夏といる時間が増えて携帯ゲームよりも映画鑑賞やテレビゲームをするようになったから。
「どーしちまったんだよ、前までは非リアでアニメオタクで平凡な生活をおくるただのDTだったのによッ!」
「今も非リアでDTだし僕をディスり過ぎだッ」
「なぁ前から思ってたけどお前俺になにか隠してるだろ」
「え、いや……それは」
「栄汰俺たち親友だよなぁ」
「待て隆平!両手に持っているトウモロコシでなにをするきだ!」
そして隆平は僕の前まで来て昼飯になるはずのトウモロコシを振りかざした。
「ま、待ってくれ!わかった、わかったから」
隆平のトウモロコシは僕の顔に当たる寸前の所で止まった。
「じゃあ話せ」
「でも少しだけ待ってくれ、確認が必要なんだ……」
「ちょっとだけだからな」
僕は席を立って結夏のいる席に向かい、話しかけた。
「なぁ結夏、隆平に問い詰められて誤魔化すのももう限界だ、僕たちの事話してもいいか?」
「ん〜……隆平君って口軽いよね」
「そーだな」
「うっかりさんだよね……」
「そーだな」
まずい、全然安心できない。
「でも栄汰の大切な友達だし……嘘をつくのも良くないからいいよ」
「いいの?!」
「その代わり栄汰のことえい君って呼んでもいい?」
「いいけど、なんで?」
「だって……陽葵ちゃんだけあだ名で呼ぶのはずるいから」
「ずるいって?」
「えい君のお嫁さんは私なんだからね!」
「はッ、はい!」
やはり僕の許嫁兼ストーカーは可愛い。
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