最後にポツンと一滴

 昨日出かけた時は雨でした。予報ほどたくさんの雨ではなかったけど、ワイパーはずっとつけてるぐらいの雨、帰ってきた時にはもちろん車は雨で濡れてました。


 今朝、いつもよりちょっと遅く家を出て、駐車場から車を出そうとした時、車の天井の中心部に、ふと、なにかがあるのに気がつきました。


「なんか丸いのが乗ってる」


 乗り出して見て分かりました。


「水滴が丸く残ってる」


 車を駐車場にしまってから今朝まで何時間もあります。その間に天井にあった水滴もずっと流れたり乾燥したりしてるのに、その最後の最後、コインぐらいの大きさに、おそらく車の天井の中心なんでしょうね、そこに丸く残ってたんですよ。


 なんとなくかわいいなと思ってしまいました。

 それと同時に、水ってやっぱり重力に従って四方八方に流れてるんだな、とも。


 車が濡れるのって雨や雪が降った時か洗った時だけです。そしてその後は拭くか乾くまで放置するかのどっちかですよね。拭く時は見られるけど、乾く間ってじっと見たことがないけど、いつもこんな感じに中央を一番厚くて次第に周囲から薄く流れたり乾いたりするんだろうか。


 そういや、高校一年の時の生物の先生が、


「シャワーを浴びた後、じっと立っていたら水滴が流れる方向、それが血管の走行方向だ」


 と言ってたんですが、あれって本当なのかなあ、とそんなことまで思い出しました。


 その言葉を思い出す度に、自分の腕の血管とかをじっと見て、水滴が流れるように自分の血管が作られているところを想像したりするんですが、立ってる方向ってなんか違うんじゃないかとも思います。


 だって人間ってお母さんのお腹の中で丸くなって血管ができていくと思うから。


 生物の先生の言ったこと、あれは一体どういう意味だったんだろうなあ。もう今さら聞けないし(先生がご存命かどうか分からないし)、車の上の丸い水滴を見て、またそのことを思い出してました。


 車だったらつるんとしてるし、自然にその婉曲に沿って水滴が落ちて、一番高い場所の水滴が丸く残っても不思議じゃないけど、人間の場合は頭のてっぺんに残るとは思いにくいですよね。


 頭をつるつるに剃って、頭から水かぶって、乾くまで立ってたら、一体最後まで水滴が残るのはどこなんだろう。いつか頭を剃ることがあったら試してみようか。まあ、なさそうですが。

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