すり鉢デビュー

 前回、祖父が切って持たせてくれた山椒のすりこぎのことを書いていて、思い出したことがありました。


「そういや、おじいちゃんのすりこぎが来た時にすり鉢買うたんやった」


 あのすりこぎは切って間もない木なのでしばらく干してから使うように、と言われて干していたんです。何日ぐらい干していたかとかは覚えてないんですが、それに合わせてすり鉢を買ったことと、そのすり鉢がデビューした日のことはよく覚えています。


 そして、ふと、思ったこと。


「すり鉢買うまではうちはすり鉢使った料理ってしてなかったっけ?」


 何しろ偏食の帝王みたいに好き嫌いが多かった頃のことで、あまりよく覚えていません。それで考えていたら、さらに思い出したことがあります。


 プラスチックの小さいすり鉢みたいなのがあったんです。多分どこかのデパートか何かの粗品じゃないかと思います。どうしてかというと、裏にそういうマークがあったのをおぼろに覚えているからです。

 それから推測するに、そういうのがあるからちゃんとしたすり鉢を買わずに、母はそれを使っていたのかも。それがそんなすりこぎをもらったから、じゃあちゃんとしたのを買おうとなったんじゃないのかな。


 そして、どうして初めて使った時のことを覚えているかと言いますと、私もその時に作業を手伝ったからです。


 そのすりこぎとすり鉢のセットで初めて作ったのは、


「いわしの団子汁」


 でした。


 いわしを小さく切って、それをさらにすり鉢ですり、しょうが汁、醤油なんかで味付けをして、沸かしたお湯の中にスプーンとかでぽとんと入れていきます。そこから出汁が出たら薄口醤油で味をととのえて、ささうちにしたネギを入れたら卵でとじて完成です。冬に温かくておいしい我が家の定番の汁物です。


 そのいわしをする作業をなんでもやりたい私が手伝ったんです。


 すり鉢で何かをするなんて初めてだったので、一生懸命にすって作業が終わった時に母が気がつきました。


「すり鉢が欠けてる」

 

 一生懸命叩くようにしてすってたので、すり鉢のする部分があっちこっち欠けてました。


 幸いにしてというかなんというか、その時はいわしの骨も一緒にすってたので、もしも小さいかけらが入っていたとしても気がつくことがありませんでした。まあ大きなかけらじゃなかったですし、その後家族の誰も体調を崩したということはなかったので、大したことではなかったようです。


 そう思ってます!


 今もそのすり鉢をすりこぎと一緒に使ってます。昨日は春菊のごま和えを作りましたが、今日もおつとめ品に春菊があったので作りました。まだ豆ご飯が残ってたので、よく合うんですよ、ごま和え。


※近況ノートに写真があります。


https://kakuyomu.jp/users/oguranatuki/news/16818093075466411228

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