ママとパパの歌

 今季の朝ドラは日本で女性初の弁護士か裁判官になった女性が主人公のドラマです。


 ドラマの舞台は昭和6年。旧民法の元で結婚した女性は「無能力者」と呼ばれ、法的には夫の付属品としか見なされない時代です。主人公はそれが納得できなくて、お見合いをすすめてこられることにげんなりしています。


 そんなところに主人公の兄と親友が結婚し、披露宴で酔っ払った父親に引っ張り出されて歌うことになるんですが、その歌が始まった途端に、


「あ、この歌知ってる」


 と思いました。


「うちのパパとうちのママが並んだ時大きくてきれいなママ」


 子供の頃、母親が歌ってくれて知ってる歌です。


 とにかくママは大きくて強くてきれいでパパはへなへなでよわよわ、な歌詞が並んでます。


「え、でもこれって今昭和6年よね? なんで母がその時代の歌を知ってるんだ?」


 まだ当時、うちの母親は影も形もない頃です。


 母の母、つまり私の祖母は話を聞く限り、そういう歌を歌うようなタイプの人ではないはずです。母の兄弟姉妹で一番上の伯母と母は15歳離れてたから歌ってる可能性はあるけど、兄弟姉妹の中で唯一歌ってるのを聞いたことのない人です。次の伯父とも8歳離れてるし、あのおじちゃんなら歌ってる可能性はあるけど、それにしてもまだ昭和6年。うーむ、なんで知ってた?


 気になったので調べてみたんですが、この歌、もとはフランスのシャンソンで、


「モン・パパ」


 というタイトルらしい。


 シャンソンは一番上の伯父さんが歌って聞かせてくれてたけど、この歌は聞いた覚えがないなあ。

 

 私が知ってる歌詞と同じく、原曲も同じようにママ上げ、パパ下げの歌詞の羅列です。


「一番いいのはママ一番悪いのはパパ」


 って、今の時代だったら、


「それってモラハラ!」


 になる歌詞だ。


 考えているうちにポツポツと歌詞を思い出してきたんですが、こんなのが出てきました。


「パパの一番大きな物は一つ靴下の破れ穴」


 ひどいですよね~


 妹に母がこんな歌歌ってたよねと聞いてみたら、


「有名な歌だから子供の頃にテレビでも見てるよ」

 

 と返事があったんですが、私は母が歌ってるのしか覚えてない。


 そしてさらに調べたら、日本では、


「エノケン」


 こと榎本健一さんが映画で歌ったり、宝塚でも使ったりしてるので、当時まだ生まれてなかった母も知ってても不思議じゃないということが分かってきました。


 さらに、近年では子供の番組でも「うちのパパとママとボク」というタイトルで歌ってたようです。歌詞は私が知ってるのとは違うけど、動画サイトでチェックしたらちゃんと見つけられました。


 なるほど、私が知らなかっただけで結構知られてる歌なんだな。


 エノケンバージョンも聞いてみたら、知ってるフレーズが出てくる。じゃあ母が歌ってるのはこれかなと思ってたんですが、ラストが違う。


「パパの一番好きな時はうちのママがいない時」


 と、最後までパパかわいそう、な感じで終わってるんですが、母が歌ってたのはハッピーエンドだった気がします。確か、ママが一番好きなのはパパ、みたいな歌詞だったかと。


 推測するに、どうやら母が歌ってたのは宝塚バージョンじゃないかなと思います。何しろうちの一族は宝塚と色々縁が深いですし、それが一番すんなり来る。


 今朝聞くまではすっかり忘れていた歌ですが、また一つ母との思い出を思い出してうれしくなってます。

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