第11話 ベフライエン
「それで、ベフライエンって何をしているんだい? 君たちの言う魔女に対抗しているってことはわかったのだけど……」
魔女――この世界線の男たちは全ての女性を畏怖してそう呼ぶ。彼らが恐れる理由は、ひとつ。男たちには持ちえぬ異能力を持って生まれるからだ。自分たちが持ちえぬ未知の力は恐怖の対象でしかない。
「魔女が征服する社会から権力を奪還する。ってのが目的らしい」
「要は政権交代ってことか? 選挙で勝ちたいってなしか? デモ行進とか選挙活動でもするの?」
「バカ、それじゃレジスタンスの意味ないだろ。クーデターだよ」
「……武力で奪い取るのか?」
淡々と話す一巴の話に朝光は眩暈がした。平和な時代に生まれた朝光はクーデターなんてテレビや新聞でしか知らない。世界のどこかで実際に起こっているであることは理解していても、自分には関係のない話だと思っていた。
それが今、この世界では身近なものとして存在している。そして、彼自身が渦中に巻き込まれようともしていた。
「……俺は争いは好きじゃない」
魔法は使えなくても類まれなる身体能力を伸ばすためにと母親は武道を習わせてくれていたが、それは人を傷つけるためではない。
「じゃ、ドクターにはどういうんだ?」
「断るよ。治療費のことは一生かけてでも働いて返す。……いざとなったら眼球売るぐらいは覚悟しておくよ」
流石に命に係わる内臓を売ることはできないが、どうしようもないときは片目ぐらいならと朝光は考える。希望としては働いて返したいところだけど。
「そうか、じゃああいつの所に断りに行くぞ」
言葉と共に一巴は立ち上がる。その様子に朝光は拍子抜けし、呆けた顔で一巴を見つめる。
「……なんだよ」
抜けた顔して見つめてくる朝光を怪訝な表情で見返す。
「いや……、てっきり断るなっていうのかと思っていたからさ」
「僕も力で無理矢理どうにかしようとするのは好きじゃない」
そう賛同する一巴の瞳は強い意志が宿っていた。
「っていうか異能力もない俺たちが魔女に勝てわけないしねー」
「あのロリータ女相手ですら逃げることしかできなかったのに、魔女全体を相手にするなら十種香が出ないはずもないしな。その時点で負け確だろ」
「十種香?」
聞きなれない言葉に朝光が首を傾げる。
「主に各地のレジスタンたちのデモやテロ、クーデターなどの鎮圧を専門にしている武闘集団だよ。男と見れば容赦なく殺す。会ったら最後、死を覚悟するしかないって言われている」
声を落とし、真面目な顔で甚内が十種香を語る。真剣な雰囲気にのまれ、朝光も自然と息を詰めた。
「って、いくら血も涙もない十種香と言えども何もしていない男を殺すほど非道じゃないさ。君子危うきに近寄らず、わざわざ自分から危険なことに頭を突っ込む必要はないよ」
「……武闘集団十種香か。怖い人たちがいるもんだね。まあ、俺がその人らに会うことはないだろうけど」
のん気にもそんなことをいいながら一巴に続き朝光も立ち上がる。数時間後に自分がその十種香のメンバーの一人と対峙することになるとも知りもしないで。
◆
数十分後、朝光たち四人ははとある建物の前に来ていた。その建物は一巴たちがねぐらにしていた場所よりもはるかに広い。入口にあった看板には消えかけてはいるが、博物館と書いているのがなんとか読めた。
昔は博物館としてにぎわっていたのかもしれないが、今はその面影はなく所々が壊れていて朽ち果て、蔦植物に覆われており見る影もない。
ここはベフライエンが根城にしている場所だ。頼成の勧誘を断るために一巴の案内でここまで来たのだ。
「ドクターに会う前に一つだけ注意しないといけないことがある」
「な、なに?」
真剣な眼差しの一巴に思わず緊張感が高まる。
「魔法が使えること誰にも絶対に言うなよ。絶対にだ」
「え、なんで?」
疑問の声を上げたのは当の本人である朝光ではなく、伊三だった。
「こいつが魔女だと思われたら、後々で面倒だろ」
男なのに魔法が使えると知られたら異端視され奇異の目にさらされ、最悪実験台にでもされかねないと一巴は危惧した。
理由を説明すると、実験台にされた朝光のことを想像でもしたのか伊三は真っ青になりながら小さな声でわかったと答えた。
「まあ、俺の魔法は大したことないし、いつでも意図したとおりに使えるわけでもないから、最初から誰にもいう気はなかったけどね」
下手に魔法が使えることを言ったことで、過剰に期待されていざとなった時に役に立たなかったらお互いに困る。ハナからあってないようなものなら、言わないのが最良だと朝光は思っていた。
「あーあ、兄ちゃんの凄さを皆にも知ってほしかったのにな……」
伊三が不貞腐れたように呟く。自分の推しがいかにすごいかを布教及び自慢したかったオタクのようだ。
「今回は断りに来ただけなんだから、あんまり
目的である建物に向かって行く朝光たちに、唐突に声が掛かった。
「おい、お前ら止まれ!」
カっと何かが足元に刺さった。驚き視線を向けると、地面につき刺さったものは小型ナイフなのだと知る。
「誰だ!」
声がした方を振り向くと、木々の間から紺色のセーラー服を身に纏った少女が現れた。顔の右半分を分厚い髪の毛で隠れており、ミステリアスな雰囲気をか持ち出している。
「お前らこそ誰だ」
相手は新たなナイフを数本取り出し構える。敵意むき出しの視線が朝光たちを射抜く。
「女性……」
「魔女!?」
先日の白石蔵屋を思い出し、朝光は警戒を強める。甚内と伊三は隠れるように朝光の後ろに回った。
「失礼な、見かけで判断するな。俺は正真正銘男だ」
とても不服そうにセーラー服を着た人物は言った。その声は低く、どう考えても男性。
まさかと思い朝光は改めて目の前の人物をよく見る。身長は百六十センチ後半ぐらいだろうか。男性としてはやや低めだが、女性としては高い方だ。手は女性にしては大きくて節くれだっている。肩に流している長い髪で見え隠れする喉には喉仏。上半身は長袖でわからないが、スカートから除く足は女にしては筋肉質で太い。間違いなく男性だ。
「織部(おりべ)。ドクターに用がある、通してくれないか?」
朝光の後ろから一歩踏み出たのは一巴だった。目の前の織部と呼ばれたセーラー服の少年に話しかける。どうやら二人は知り合いのようだ。
「……一巴、なんだお前いたのか。小さくてわからなかった」
「うるさいなー、これから伸びるんだよ」
敵意を解いた織部は一巴と軽口の応酬を始めた。状況についていけない朝光は呆けて二人を見つめるばかりだ。
「ちょっと待て。こいつ誰? 一巴、知り合いなのか? っていうかこいつ男なの? マジ?」
矢継ぎ早に質問を重ねるのは甚内。彼もまだ混乱しているようで頭の中で疑問符が飛び交っていた。
「こいつは
「なーんだ、男なのかよ。ビビッて損した。でもなんでそんな格好してるんだ?」
もっともな疑問を伊三が織部に投げかけた。ビビりの割には存外肝が太い。
「趣味だが? 何か問題でも」
眉ひとつ動かさず、無表情で淡々とでそう言い放つ様は逆に男らしい。堂々とした態度に朝光は「無いです……」と顔を引きつらせながら答えるしかなかった。
◆
「一巴の知り合いというのなら通してやる。ついてこい」
そう言って案内をしてくれることになった織部の後を、朝光たちは大人しくついていく。
外観は壊れ朽ち果てていたが、建物内部は多少のヒビや傷などはあるものの損傷はとても少ない。埃っぽさと天井に張り付く蜘蛛の巣で、碌に掃除がされていないことは一目瞭然だが。
白く長い廊下を五人は進む。その道中特に会話はない。織部から用件は何だと聞かれるくらいはあると思っていたが、それすらもない。ただ事務的に淡々と歩みを進める。
この息の詰まる時間がいつまで続くのかと朝光が思い始めていた時、織部は歩みを止めた。
「ドクターは多分この中にいる」
そう言って指さした扉は両開きとなっており、他の扉に比べると大きな部屋であることがうかがえる。
ドアノブに手をかけた織部がゆっくりと扉を開く。緊張からか誰かがごくりとつばを飲み込む音が聞こえた。
開くと真っ白い部屋が視界に飛び込んできた。窓も光源のないのか、室内は薄暗い。中には十人以上の人。その全ては男性だ。女性は整えられた居住区である華胥に、男たちは整備されず荒れた地を宛がわれているのでここに男しかいないのは当たり前なのだが。
その目全てが、朝光たちに視線を向ける。あまりの威圧感に伊三がヒッと短く叫び、身を縮ませた。
一方織部はそんな視線に気にすることもなく、こっちだと言って部屋の中へと歩み出る。
「織部、誰だそいつら」
部屋の中央に置かれたソファーに尊大な態度で座る無精髭の男が口を開いた。威圧的な視線が朝光たちにそそがれる。
「亘理さん。こいつらドクターに用があるっていうので連れてきました」
亘理と呼ばれた無精髭の男は、傍にいた中年男性に頼成を呼ぶように言った。どうやら頼成は部屋の中にはいなかったようだ。
二十代後半から、三十代前半。彼の傍にいた中年男性よりも明らかに年下に見えるけれども、力関係を見るかぎりは無精髭男の方が上に見える。
「やあ、朝光君。ようこそベフライエンへ。君を歓迎するよ」
呼びに行った中年男性と共に戻ってきた頼成は、両手を広げながら朝光たちを歓迎した。まるで既に、朝光がレジスタンに入ることが決定しているかのような言動だ。
「思ったより早かったね、もう少し悩むかとも思ったのだけれど。いやいや、早いにこしたことはないし、君が仲間になってくれるということは大変喜ばしいよ!」
やっぱり頼成は、朝光がレジスタンに入ることを決めたと思い込んでいるようで異様にテンションが高い。ニコニコと満面の笑みを浮かべる彼にこれから断りを入れるのかと思うと朝光は少し憂鬱な気分になる。
「あの、頼成さん。悪いんですけど……」
「全登。この子は今朝俺が言ってた、魔女に勝ったという少年だよ」
朝光の言葉は聞こえていないのか遮った頼成は、上機嫌のままに話しかけた。
「このほそっこいのがか? とてもそうは見えねぇけどな……」
値踏みするような視線に朝光は晒される。不躾なその視線に朝光の緊張は高まる。
「まあ、ここはいつでも人手不足だからな。どんな奴でも大歓迎だ。俺は
スッと握手を求める右手を差し出された。完全にレジスタンに加入する流れになりつつある状況に朝光は頭を抱えたくなった。
この状況でどうやって断れば角が立たないか全く想像できない。今や、この部屋にいる全員から仲間に対するような好意的な視線を向けられているのだ。考えなしに断ったら何をされるかわからない。
全登から差し出されて右手をどうすべきか考えあぐねていると、伊三が朝光を押しのけ前に出てきた。
「兄ちゃんはレジスタンスなんて野蛮なものは入んないからな! 絶対に!」
張り上げた伊三の声が広い空間にこだまする。その瞬間、室内にいる全ての人間が凍りつくように動きを止めた。ただ甚内だけは、伊三の突拍子もない行動を予測してでもいたのか、「やっぱやっちまったか……」と言いつつ頭を抱えていた。
「はあ?」
低い声が凍り付いた朝光の耳へと入る。恐る恐る声が聞こえた方へと視線を動かすと、怒気を含んだ視線とかちあう。先ほどまで無表情だった織部が何も言わずともわかるほどに怒りをあらわにしていた。
「ッヒ」
それを見た伊三はサッと朝光の後ろに隠れた。今更隠れても既に遅い。盾にされた朝光は後で覚えてろよと思いながらも、織部へと向きなおる。
「ドクターの誘いを断るだけならまだしも、亘理さんにケチ付けるとは許しがたい! 身の程をわきまえろ!!」
とっさに謝りたくなる気迫だが、グッとこらえる。
「おい、織部。下がってろ」
「はい」
そのまま殴りかかって来るのではと思われた織部だったが、全登に下がるよう言われ大人しく彼の後ろへと下がる。しかし射殺すような視線は未だに朝光に向けられたままだ。
「おい」
低い声に呼ばれ、朝光の視線は全登へと戻る。真正面から見つめてくるその瞳は、深く暗くて何を考えているのかわからない。怒っているのかそうじゃないのか……。
「お前、今後ろのガキが言ったことは本当か?」
朝光に隠れる伊三を指さし聞く。一瞬でも向けられた視線に、伊三はガタガタと震え怯え切っている。
「……本当です。俺はレジスタンスに入る気はない!」
恐怖を振り払うかのように声を張り上げる。それはただの虚勢でしかない。全登にはバレていることだろう。しかし、そうでもしないと逃げてしまいそうな心を留める術は他になかった。
「理由は?」
「俺は争いごとは好きじゃない、ただそれだけだ。キレイごとなのはわかっているけど、それでも女性相手に暴力をふるうことは出来ない」
朝光は臆することなく、真正面から全登を見つめ言い放った。それは間違いなく、彼の本心だった。
朝光の本心を聞いた全登は笑った。ゲラゲラと腹を抱えてこれ以上おかしいものはないというように、腹の底から笑った。全登の笑いが伝染したかのように、周りの男たちも一斉に笑い出した。その笑い声は建物内を侵食する。
「……何がおかしい」
笑われるようなことを言ったつもりもない朝光は訝しみながら、全登を睨みつけた。
「おいおい、まさか今の言葉本気で言ったのか? 冗談だとばかり思ったぜ」
笑いすぎて目じりに溜まった涙を拭いながら、馬鹿にするように鼻で笑いながら朝光を見た。
「女性だなんて言葉久方ぶりに聞いたぜ。それだけでなく、俺たち男よりも明らかに強い魔女どもを守るだなんてこれが笑わずにいれるかっての! 女が守るべき対象だったのは二百年も前の話だ。どんな教育を受けてきたのか知らねーけど、馬鹿も休み休み言えや」
ここで改めて朝光は自分のいた世界線とこの世界線との常識の剥離を感じた。
物心がついた時には朝光の家族は母親と妹だけだった。父親は知らない。母親曰く、朝光たちが赤ん坊の頃に離婚して以来連絡すら取っていないらしい。
渡会家で唯一の男である朝光は物心つくころには、自分がしっかりして母と妹を守らなければいけないと強く思っていた。
始めの対象は妹と母親のみだったが、それは次第に二人以外の女性も守るべき対象へと変わっていった。いくら無能だと馬鹿にされ、笑いものにされてもその考えは変わらなかった。
蔵屋と対峙した時もなるべく彼女を傷つけないよう尽力した。それが当然と思っていた。しかし、ここではその考えは非常識にしか映らないらしい。
「甘っちょろい幻想を抱いてるガキなんざこっちから願い下げだ。さっさと帰りな!」
「言われなくたって帰ってやるさ!」
自身の信念をけなされた朝光は、憤りながら怒鳴ると先ほど入って来た入り口を目指してズンズンと歩いていく。後ろから一巴たちの焦った声が聞こえてくるが知ったことではなかった。
「ちょ、ちょっと全登!? 何勝手に追い返してんだよ! 治療費代わりに働いてもらうって話だったんぞ。これじゃ僕はただ働きじゃないか!」
「運がなかったと諦めろ」
折角自分が呼び寄せた朝光をこんなに簡単に返されては困ると頼成が即座に詰め寄るも、全登は素気無く突き放した。
「どうせ、夢見がちなバカはすぐ死ぬ。元も取れないさ」
「好き勝手言うな!」
鼻で笑う全登に怒声が割り込む。声の主は顔を真っ赤にして怒りをあらわにする、伊三だった。
「兄ちゃんは、馬鹿なんかじゃない。ただ優しいだけなんだよ!」
「ほう。じゃあ、ガキ。その優しさで誰が救われるんだ? 魔女に対しての優しさの必要性をよぉ。言ってみろよ!」
「伊佐、やめろ!」
扉に向かっていた朝光は、伊三を止めようと彼の元へ駆け寄ろうと向きを変えた。その瞬間派手な音と共に勢いよく扉が開かれた。
扉から現れたのは、一人の男性。おそらくベフライエンのメンバーの一員だろう。肩を上下させながら息を整えている様を見るとよほど急いできたらしい。
部屋にいた全員が、今しがた入って来た彼を見る。何事かと朝光も足を止めてはいってきた男に視線を向けた。男はようやく息が整ったところで、短く一言叫ぶ。
「魔女が来た! しかも……十種香だ!」
「!」
その一言で、部屋の中の空気が変わった。緊張感が一気に駆け抜ける。一人がポツリと「なぜ……」と呟くと、波紋のようにざわめきが次第に広がる。
蔵屋のような暇つぶしやストレス発散の為に、華胥から東京に訪れ男たちをいたぶる者はたまにいる。しかし、最強と名高い十種香がこのような場所に来るなどめったにない。よほどの理由がない限り。
この場にいた誰もが、レジスタンスである自分たちベフライエンの討伐に来たのではないのかという不安が頭をよぎった。
「魔女は何か言っているか?」
緊張感と殺気を漂わせた全登が男に尋ねた。その途端、部屋は水を打ったように静かになった。
「ロリータ服きた女を倒した奴を出せと喚いている……。今は見張り番の奴が応戦してるけど、相手にならないくらいに強い。こっちまで来るのも時間の問題だ」
ロリータ服を着た女とは間違いなく三日前に対峙した白石蔵屋であることは朝光たちはすぐに思い至る。しかしその言葉に朝光たちが思い至ったのは彼らだけではなかった。先程の頼成の言葉を聞いていたこの場にいた全員の視線が一斉に朝光へと刺さる。その瞳は皆、怒りと困惑が混じっている。
「甘ちゃん、お呼びだぞ」
揶揄った呼び名で、全登が朝光を呼んだ。
「なんで俺が……」
「十種香様直々の呼び出しだ」
呼ばれなきゃならないんだ、という意味で言った言葉は「なんで俺が行かなきゃならないんだ」という意味でとらえられ返された。
「テメーのお優しさで、十種香の怪物を追い返せたらお前の事認めてやるさ」
それはバカにした物言いだったが、わざわざ言い返しはしない。自分が出て行かなければどうにもならないことは朝光自身わかっていた。
十種香がどんな連中なのか知らない。しかし皆の反応を見るに、ここにいる男たちだけでは対応できない強さだという事だけは察せた。きっと、朝光が出て行かないと、殺されなかったとしても皆無傷では済まないだろう。
今日あったばかりの連中だし、正直いけ好かない。だが、そのまま無視するという選択肢は朝光の中にはなかった。再び朝光は扉へと向かう。
「おい、逃げんのか?」
無言のまま部屋を出て行こうとする朝光に、近くにいた男から声が掛かる。その挑発的な言葉に朝光は振り向きもせずに答えた。
「言われなくてもやってやるさ!」
男に視線を向けむせずに、言葉を叩きつけるよう啖呵を切って部屋を飛び出した。
「兄ちゃん!」
「まて、朝光」
その背を追うように、子どもたちも走って部屋を出た。
「ッハ、言うじゃねーか」
朝光たちが去って行った後、全登は楽しそうに笑った。
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