幼くとも

 ミイは無邪気で恋とは無縁だった。それもそのはずで、彼女は小学生で周りの男子と仲よく遊んでいるような歳だった。


 彼女の姉は言葉遣いが男のようだが、面倒見はよかった。その心を無意識の内に感じ取っていた彼女は優しい女の子として成長していた。


 そして、その姉が初めて男友達を連れてきた。そもそも家に友達を呼ぶことの少ない姉が友達を連れてくるだけで、テンションの上がる話であった。今回、家を訪れたのはなんと異性。彼女のテンションの高さはいつも以上であった。




「アキラにーちゃんは、何が好きなの?」


 アキラと呼ばれた彼がこの家を訪れた異性の友達だ。そして、その姉は晩御飯を作っていて、アキラは放っておかれていた。その間に、ミイが興味津々で彼に話しかけていた。ミイは自分の心臓がドキドキと高鳴っているのは無自覚に、彼の隣に座って彼の腕に触れながら訊いた。


「俺は、そうだなぁ。本を読むのが好きかな」


「おねーちゃんと一緒だ!」


 姉の好きなことは彼女の好きなことでもあった。ミイは姉が読んでいるような難しい本を読むことはできなかったが、小学生向けの小説をよく読んでいる。彼女はお話が好きだった。


 同じものが好きだと理解したミイはますます嬉しくなって、テンションが上がる。彼女は気が付いていなかったが、部屋に漂う晩御飯のカレーの匂いが漂ってきているのも原因だったのかもしれない。しかし、ミイの彼を見る視線はキラキラしていて、まるで憧れの人に会えたかのようなものであった。


 誰もそれに気が付く人はなかったが。

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