元気っ娘はうるさい

「おはよう! ほら、お・は・よ!」


「なんだよ。朝からうるさいな」


 明るい茶髪が肩まで伸ばし、大きな目でこちらを見上げて、大きな口で俺に朝の挨拶をする。こいつは俺の中学からの同級生だ。とにかくうるさいのが特徴だ。まぁ、言い方を変えれば天真爛漫とか言えるのかもしれないが。


「おはようだよ! おはよう!」


「あー、はいはい。おはようさん」


 それだけ言うと、満足そうな笑みでどこかへと去って行った。正直、あの笑みを見ることが出来るなら、きっと、挨拶するだけでは払い足りないだろう。あれを見て、かわいいと思わないやつはいないはずだ。あの顔が誰でも見れると思うと、ちょっと寂しい気もするが、仕方のないことだ。




「お昼食べよ」


「友達と食べれば、いいだろ。わざわざ、俺のとこ、来なくてもさ」


 そりゃ、わざわざ、ここまで来て、その笑顔でそういわれること自体は嬉しいことだ。しかし、この元気っに友達がいないとは思えない。きっと、俺のことを心配しているのだ。


「一緒に食べるもん」


 そういうと俺の机の上に持ってきていた弁当を広げ始める。オレンジ色の蓋のシンプルなデザインのものだ。しかし、その色が似あっているからシンプルでもかわいいと思ってしまう。弁当の準備が終わると、箸を持って、こっちをじっと見つめていた。俺が弁当の準備をするのを待ってくれているのだろう。俺の弁当は既に机の上にあるので、手早くそれを準備する。


「いただきます」


 小声ではあるが、母の作ってくれたものに手を合わせて挨拶して、弁当に箸をつける。それを見てから、俺の真似をするように挨拶をしてから、弁当を食べ始めた。俺とは違い、一口が小さく、その様子が小動物のようで癒される。ご飯を食べながら、にやけそうになる自分の顔を引き締める。


 ちなみに、俺の隣には男子が四人固まって昼食を取っていたが、四人とも、こっちを見て、にやついていた。それは、俺たちが付き合っていると思っているというよりかは、やはり、その弁当を食べる姿に癒されているのだ。


 弁当を食べ終わり、弁当を片付けている。それが終わると、チャイムが鳴って、午後の授業の開始だ。


 午後の授業はいつも通り適当に受けて、放課後になる。さっさと教科書を鞄に詰めて、席を立った。教室を出ようとすると、とことこと近づいてくる人影があった。


「一緒に帰ろうよ」


 この元気っ娘は放課後になるにつれて、元気パワーが少なくなる。放課後ともなれば、そこら辺の人と同じくらいのテンションになるのだ。それに動きに力がなくなり、朝なら俺の腕を引っ張るのに、放課後になると、俺の袖を引っ張るようになる。元気っ娘に懐かれるのもいいが、こういうしおらしいのも、嫌いではない。


 毎日、色々考えているが、つまるところ、俺はこの元気っ娘を愛しているのだ。


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