第6話 先輩とテスト勉強

「先輩、数学分からないので教えてほしいです」


「私より、問題集の解説の方が分かりやすいぞ」


 先輩は自分に対する評価がかなり低い。


「その解説が分からないんです」


「そうか、なら私から君に助言をしよう」


 なんだろう? 定期テスト必勝方みたいなものがあるのだろうか。


「今の時代はインターネットだ。分からないことがあればSNSに聞け!」


「……先輩は分からないことを友達に聞いたりしないんですか?」


 拳銃で一発撃ち抜かれたような顔をして固まる先輩。この質問はマズかったかもしれない。


「聞きたいことは全て君に聞いている。私には君しかいないからな!」


 なんだこの人、めっちゃ恥ずかしいこと言ってくる!


「君と私は友達ではないのか?」


 純粋な疑問の目を向ける先輩。それに耐えられなくなった俺は少し目線を逸らす。


「いえ、僕と先輩は友達です」


「そうか、なら良い」


「じゃあ、数学教えてください」


「ん? だから、インターネットで……」


「信頼している人に教えてもらいたいです」


 先輩は小声で「信頼」という言葉を反復する。


「……そうだな、普段君にはいろいろな質問に答えてもらっているからな」


 教えるからには百点を取ってもらうからなと張り切る先輩。


「ありがとうございます」


 俺に数学を教えている時、どことなく先輩が嬉しそうな顔をしていた気がする。あまり表情を変えない先輩から感情を読むことができるのは嬉しいことだ。


「何故こんなことが分からないんだ。……違う! そこはこっちの公式を使うんだ!」


 先輩は意外にも鬼教官だった。


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