第2話 先輩はめんどくさい

「君は先生から勉強をする意味を教えてもらったことはあるか?」

「え? ない……ですけど」


 俺は部室の扉を開けた瞬間、全く話の筋が見えない質問を投げかけられた。


 ……いつものことだが。


「私たちは表面上のことしか知らない。本質は何も知らない、知ろうともしない」


 先輩は机に肘をついて、顔の近くで指を組む。先輩の鋭い視線は俺を試しているかのようだった。


「何故だと思う? 後輩」

「めんどくさいから……ですかね?」

 

 真剣な先輩の質問に対し、いたって平凡な答えを返す。大半は自分と同じ意見だろう。俺たちはそれを知ったところで何も変わらないのだから。


 だが、先輩が求めている解答ではない。


「私はその答え、嫌いだ」


 そう言うと、先輩はこの部室に一つしかない小さな窓から空を眺めだした。唐突に。


「あの……先輩?」

「…………」


 俺は先輩に聞こえるぐらいの大きなため息をついて、部室の隅っこにある椅子に座る。


 こういう時、なんて声をかければいいのだろうか?


 ……考えても無駄か。

 本当にこの先輩は、めんどくさい。


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