第2話

生徒会書記、と札が置いてある椅子に座る。


よし、とりあえず深呼吸をしよう。キャラ濃度が濃すぎて呼吸すら上手に出来ない。


スー…、ハー…。スー…、ハー…。


「気持ち悪い! 有馬は何考えてるの!?」


深呼吸の途中で姉の玲香に文句を言われました。えぇ…、俺って深呼吸するだけで文句言われる存在なの? キャラがないだけでここまで酷い扱いを受けるの!?


というか……もう限界だ。


「…もうこっちも限界だよ!! 藤野姉妹、なんでツンとデレが反対になってるんだよ!!」


生徒会に入って1週間抱き続けた疑問をぶつける。


「…ツンとデレって何? キモいよオタクくん」


スっと冷たい目で俺を見る藤野姉。


「それ言うのはやめてくれぇぇぇぇぇぇ」


確かにオタクくんだけど! 深夜アニメ大好きだけど!! 毎週のジャ〇プも楽しみにしてるけど!!


「玲香〜、それは言い過ぎだよ。ほら、有馬が可哀想でしょ?」


ニコニコと俺に笑いかけながら助け舟を出すのが玲奈、藤野妹。


おかしい。完全に狂ってる!!


何事にもツンで対応してる玲奈の態度とは思えない。同時に、いつもデレで対応している玲香の態度とも思えない。


ん? 俺が彼女達の性格を間違えているだけじゃないかって?


確かに同じクラスでもないし、生徒会に入る前に話したことは数回しかない。


だけどな、この2人は目立つから間違えるはずが無いんだよ!


眉目秀麗、成績良好。透き通るような白い肌に、抜群のスタイル。入学して数ヶ月なのに、既にこの高校のベスト美人として名が通っている。


そんな彼女達の情報は寝てても伝わってくる訳で。


「ね、ところで玲奈達のツン…とデレ…?の何が違うの?」


本当に心当たりがないような素振りで俺に聞いてくる玲奈。


…もしかして、本人達は自覚してないの?


「そうだな。確かに俺も有馬の言うことは分かるぞ。事前に聞いていた噂とは随分違うからな」


「ですよね! やっぱり会長もそう思いますよね!?」


「うむ。2年でも藤野姉妹の噂はよく聞くからな。羽島も聞いた事はあるだろ?」


羽島愛夏、のんびり生きることに全てを捧げている副会長に会長が話を振る。


「ん〜、私は〜…聞いた事ないなぁ〜」


紅茶を注意深く入れているご様子。まぁ、副会長は浮世離れしているから知らなくてもおかしくはない。


「そうか。ま、ところでどうなんだ? 藤野姉妹自身は自分達の性格をどう思っているんだ?」


会長が興味深そうに藤野達へと質問する。


玲香、藤野姉が答える。


「うーん、玲奈は人に甘すぎるかな。そこのオタクくんの言葉を借りると、多分デレ」


玲奈、藤野妹が答える。


「うーん、玲香は人に厳しい…かな? なんか、常に怒ってるー、みたいな。有馬くんの言葉はよく分からないけど…」


うん…やっぱり違う。彼女の噂とはかけ離れている…。

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