ツンとデレを二等分して生まれてきたはずの双子が噂と違う
冬峰裕喜
第1話
世の中にはツンとデレが存在する。いや、存在していると言わざるを得ない。
このどうしようもない現実に、深夜帯アニメでよく使われる表現を当てはめるのはいかがなものかと当の本人も思っている。
だけど・・・・この姉妹を知っている人ならば、この表現に深く納得してくれるはずだ。
「あぁ、確かにあれはツンで、あれはデレだね。うんうん」
こう呟くことは必須なのである。ちなみに今呟いたのはクラスメイトの知人Aだ。特に紹介する必要はナシ。
デレの姉、藤野玲香。ツンの妹、藤野玲奈。
ともかく、彼女達は段違いのツンとデレということで校内に名を轟かせている。
これで終わりのはずだった。これ以上、俺の人生史に藤野姉妹の名前は登場しない予定だと勝手に考えていた。
だが、6月の生徒会初顔合わせの時から。俺の人生史には彼女達の名前が何度も刻まれることとなった・・・・。
「っておい!!!!! お前大丈夫なのかよ!? 目、死んでるぞ!?」
物思いにふけっていた脳を揺さぶられる。
「あぁ、なんだ。知人Aか・・・・」
「おいおいおいおいおい? 聞き間違いか? それとも、お前の頭から名前の概念なくなっちゃったパターンか!?」
放課後テンションな親友を見つめる。
「気にするな。大丈夫、覚えているよ、遼」
おおっ! とわざとらしい安堵した表情を作る親友。
「大丈夫。遼が一昨日、付き合えそうと言っていた女子に振られたこともぉぉぉぉ・・・・」
「黙ろうか?」
ニコニコと笑顔を向けているものの、殺気を立てて俺の口を力任せに引っ張る。怖い。マジで目が笑ってねぇ・・・・。
「ひょうぅさぁんしまぁすぅぅぅ(降参します)・・・・」
情けない声を出して許しを請う高校一年生。クラスメイトがヒソヒソと話しているのが視界の奥に映る。「あいつらそっち系なんだ・・・・」とか言っていたような気がするけど気のせいだよね?
「ダメダメ、そういう言い方。今は多様性だから! ・・・・というか私の好物だし!」
なんか興奮したように話す女子の声も聞こえるんだけど? 大丈夫だよね、この状況? もうキャッキャッという声で何も聞こえないけど大丈夫だよね!?
「まぁ疲れてるんだろ、ほら。今日も生徒会だろ?」
ようやくほっぺたの肉を離してくれた遼が俺の机の上から、よいしょと降りる。
なんだかんだ、この親友、内川遼は心配してくれているのだ。
「慣れるまでの辛抱だ。頑張れよ!!!」
そう言って手を俺に振り、あいつはスポーツバッグを背にグランドへと廊下を急ぐ。
竜巻みたいな奴だ。昔から何も変わらない。
ちょっとだけ元気をもらって欠伸をしながら椅子から立ち上がる。
だけどな、遼。多分、慣れることは無いな。
生徒会室の扉を開けながら、親友へと語りかける。
この状況、どうやって慣れろって言うんだよ。
「遅い!!!! 有馬~、罰ゲームで腕立て伏せ100回!!」
筋肉に脳を蝕まれている生徒会長。
「そうね~。遅刻は良くないわね~。ほら、2人を見習ってね~!」
そんな会長に一切ツッコミを入れない、のんびりと人生を送ることに全てをかけている副会長。
そして何より。
「そ、そうね!! 玲香たちを見習ってよね!!!」
「いやいや~。このくらいの遅刻ならセーフだと思うよ? 玲奈はね??」
普段、噂に聞いていたキャラとは程遠い姿を見せる藤野姉妹。
そんな生徒会面子を見回してその場へとへたり込む。
「もう・・・・キャラが濃すぎて俺の居場所ないでしょ・・・・・」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます