入学編Ⅱ
僕は暗闇の世界の中にいた。この世界では体が浮いているようなどこか心地よい感覚が体を包み込んでいる。だが、程なくして暗闇の世界の中でキィーンと言うノイズ音と共にまがまがしい強烈な赤い光が暗闇を照らしこむ。僕はその光から目を細めて腕で目を覆いこむような体制に入ると突如として目の前が昔僕が住んでいた家の中へと変わる。
「えっ。なんで...僕ここに居るんだ?」
僕が混乱していると後ろから抱きつかれる。
何事かと思い後ろを振り返るとそこには僕の姉ラミーがいた。綺麗な青髪のショートヘアに目鼻立ちの整った顔。それにあまり大きくはないがどこか母性を感じる胸。これは間違えなく姉さんだ。
「姉さん!?なんでここに...」
と僕が本当に状況を読み込めず問うと姉さんは微笑みながら、呟く。
「一人にさせてごめんね。これからは姉さんがルーくんを守るからね!」
「生きてたの!?良かったでも僕...!でも、もう手も汚れてるし、姉さんの隣に立っている権利もなければ生きてる価値すらないや」
僕がそう告げると姉さんが僕の頭を撫でながら微笑む。
「私が隣にいてほしいんだよ!人はみんなやり直せる。私だってルーくんが思っているほど良い姉さんじゃないよ?だからさ、二人でもう一回立て直そう。」
僕が初めて人を殺した日から一番言って欲しかった言葉を姉が呟く。
「うん!そうだ...」
僕が姉さんに返事しきる前にまた、世界が暗くなり再び光を取り戻すとそこには血だらけの姉と魔術師がいた。
「アハハ!君のお姉ちゃん僕に歯向かったから死んじゃたーーー!」
僕はこの光景にデジャブを感じていた。そう僕が10歳の時にもこの男は僕の前で姉さんを弄んび、挙げ句の果てには殺したのだ。
「ルーくんごめ...」
姉の言葉を遮るように世界はまた光を失う。だが、さっきの暗い世界の感覚とは異なり、どこか重みを感じる。何だと思い僕が確かめるように立ち上がろうとすると、僕の目の視界が広がり僕が一人暮らししている家の天井が見える。そうか。これは僕の願望が混じった夢だったのか。
「あー。おはようございまーす。せんぱーい起きましたか?」
と僕にシャリーを殺す任務をいきなり課してきた仕事仲間兼後輩のラムがベットの上で横になっている僕の腹の上を跨ぎながら話しかけてくる。
「お前なー。合鍵渡したからって勝手に家にはいるな!しかも寝込みを襲うとは...」
僕が不機嫌そうにラムを責め立てるとラムは笑いながら手を振ってくる。
「せんぱーいー。寝込みを襲うって人聞きの悪いー!私は重労働で疲れてる先輩の為に家の家事をしにきたんですー。」
僕がはいはいと頷くとラムは少し心配そうな顔をしながら言う。
「それに、先輩最近色々つらそうだったから...」
最近気づいたのだが、ラムは人の気持ちを読むことのできる本当に優しい少女だ。
僕は彼女の綺麗で、良い匂いのする金髪ツインテールにしている髪を整え撫でながら呟く。
「そっか。ありがとな」
改めて彼女を見て思うが、本当にあざと可愛いと言う言葉を具現化したような少女だ。男を一瞬で虜にしてしまいそうなくらいには整った目鼻立ちにエプロンを着ていても隠しきれないほどに大きな胸。それに抱き締めたくなるような華奢な体。
僕がラムの頭を撫で続けているとラムは顔を赤らめながら、話しを変えて昨日の事について聞いてくる。
「そ、そういえば昨日シャリーさんとは進展ありました?」
ちなみに、別に殺し屋にターゲットと仲良くなる必要性もなければ人柄を知る必要も全くないのだが僕はいつもターゲットと関係を深めてから仕事をするか降りるか決めているのでラムは聞いてきているのだろう。
「あー。昨日食堂で一緒に飯食ったな。」
「へー。せんぱーい。そんなんですね。」
と何故かラムは不機嫌になりながらも呟く。
僕は不機嫌になる意味もわからずラムの頬を軽く小突きながら問う。
「お前、なんで怒ってるの?」
「怒ってはいませんよ!先輩が...気づいてくれないから...」
と彼女は呟くとおそらく朝ごはんを用意しに台所に行ってしまった。
気づいてくれないとは何なんだろう。なんて、考えつつ僕は朝食を食べ学校へと向かうのだった。
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