第2話 禁じられた愛

その後も、何度も自分ではない記憶を辿った。そのどれもが、生きているのが辛く、苦しく感じるもの。その中でも、今の自分が辛かったのはこの状況が数日続き、手が自由に動かせるようになった頃の記憶だった。


その記憶は、1人の男性の記憶だった。その男性の第一印象は、とても明るくて、いい人。顔もいいので、きっとモテるのだろう。流れてきた記憶には必ず女性が写っていた。でも、その誰にも心はときめかない。心に常に決めた人がいるのだろう。でも、その感情はどこか悲しげだった。彼の心がときめく瞬間は必ずある人がいた。


「お兄ちゃん。」


5つ下の妹だ。自分の高なる胸で確証を得た。そうか。結ばれちゃいけない愛なのか。自分としおりの関係とは違う。本当の兄妹。どの宗教も兄妹の婚約は認められない。法律もそれに準じる場合がほとんどで、日本は禁止だ。


「お兄ちゃん?」


高校生になる妹は、彼にべったりで、彼氏も出来たことないし、家に彼がいると友達の誘いも断ってきてしまうくらいだ。だから、彼は、彼女から離れることを選択した。このままだといけないと思ったのか、それとも、結ばれない運命から顔を背けたかったのか。実家から離れて、一人暮らしを始めた。まだ大学生だった彼は、転入して、また1から学校生活を送っていた。妹には何も告げずに。


実家から出て行ってから、2年の月日が経った。新しい環境で、新しい友人もできた。それに、初めての彼女も。でも、頭の片隅には必ず妹の存在があった。何しているのかなとか。彼氏はできたのかなと心を締め付けたりもした。そんな状態で、うまくいくわけもなく、初めての交際は3ヶ月も持たなかった。


そんな時だった。妹が、彼の通っている大学に入学してきた。母親が思わず口をこぼしたらしい。妹には黙っていてと言ったのに。彼女は家を借りることなく、兄の家に同居することになった。


妹がきた初日。空気は気まずかった。


「なんで、黙って行ったの?」


ストレートに聞いてくる妹。明らかに動揺する兄。目線を合わせることはできない兄。真っ直ぐに兄の目を見つめる妹。こんな状態が続いた。


「私は、お兄ちゃんが大好き。兄としてではなくて、1人の男性として。」


妹からの言葉は、兄の感情を抑えていたものにヒビを入れてしまった。嬉しいという感情と明らかな動揺。


「お兄ちゃんは?」


兄は何も言えなかった。自分も妹が好きだって。正直な気持ちにはなってはいけない。何も答えない兄に対して、妹はさらに続ける。


「私、お兄ちゃんとならどうなってもいい。」


妹は自分を抱き寄せた。自分は、妹のその言葉に答えてしまった。


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