第12記:夜桜

 恐ろしい夢を見た。夢だけに説明するのは難しいが『オーメン』と『シャイニング』と『ザ・チャイルド』と『チャイルド・プレイ』を組み合わせたような内容……とでも、表現すれば良いだろうか。

 子供の化物(性別不明)に追いかけられる話(夢)である。怨霊なのか?悪魔なのか?幽鬼なのか?妖怪なのか?「奴」の正体はよくわからないが、異様に執念深い性格で、逃げても逃げてもしつこく追ってくる。と云うか、俺の行く先々に忽然と現れるのだ。鬱陶しくて、仕方がない。


 あの餓鬼が何を象徴し、何を暗喩しているのか?意識の底にドロドロと渦巻いているもの(潜在的不安)が、モンスターの形となって、襲ってきたのだろうか?ともあれ、二度と見たくない夢である。あんなものを、毎晩見(見させられ)たら、気が狂ってしまう。もっとも、どんなに怖い夢を見ても「発狂することはない」そうだけど。違ったかな?


♞以上は3月27日の日記の一部。


 業務終了。職場の先輩K氏に誘われて、上野公園へ移動し、夜桜見物を楽しんだ。平日だと云うのに、園内は大層な賑わいであった。

 見物中、酔っ払いのおっさんに絡まれかけたが、絡み甲斐(そんな言葉、あるのかな)のない奴だと判断されたのか、すぐにどこかへ行ってしまった。何事もなかったけど、ちょっと怖かった。

 あのおっさんも大概にしておかないと、相手によっては、喧嘩沙汰になるだろう。まあ、彼がどんな目に遭おうが、俺の知ったことではないが……。


 見物後、御徒町の名物酒場『かっぱ』に潜り込んだ。ビールで乾杯した。こちらも凄く賑わっていた。刺身、煮込み、モツ焼きなどを食べた。特に珍しい料理ではないが、なかなか美味しい。美味しいし、安い。なるほど。人気があるわけである。店員のおばちゃんも威勢が良くて面白い。


 翌日(今日ですね)の朝。俺は目覚まし時計の目覚まし音で目を覚ました。普段の俺ならば、鳴り出す前に覚醒するのだが。どうやら相当深く眠り込んでいたらしい。台所に行き、湯沸かし器にミネラル水を注いだ。

 熱いコーヒーを飲みながら、タスケチェスを指した。後手の作戦―フレンチ・ディフェンスの練習である。全然勝てない。数局指して、全て負けた。あまりの弱さに、吹き出した。失笑を誘発するほどに弱い。どうにもならない。


♞以上は4月1日の日記の一部。かっぱは閉業してしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る