第4記:蒼天
眼が覚めた。枕辺の時計は「朝の7時35分」を示していた。カーテンを開けて、外の様子を窺ってみた。窓の向こうに青空が広がっていた。
絶好の「乾燥日和」である。俺は部屋の一面にぶら下がっている脱水衣類を、ベランダの物干し台へ全て移動させた。余った空間は布団で埋めた。
快晴ではあるが、日光が本格的にベランダを差(射)し出すまでには、相当時間がかかる。そのため、冬期はどうしても乾きが鈍くなる。
太陽の動きを意識し始めたのは、俺の場合、洗濯と乾燥がきっかけである。俺の他にも、そういう人がいるんだろうか。
台所に行き、湯沸かし器にミネラル水を注いだ。食べるものは何もない。昨夜の内に全部食べてしまった。唯一残っていたのが、近所のコンビニで買ったどら焼きであった。どら焼きを齧りながら、コーヒーを飲んだ。ささやかな、真にささやかな朝食である。
食後、愛機を起動させて、ぴよぶっくを呼び出した。ダブン1頁を投稿した。素材は映画である。時代劇と西部劇、俺はどちらも大好きだ。
時代劇みたいな西部劇や、西部劇みたいな時代劇も好きである。両分野の要素が溶け込んだような小説(冒険活劇)を書くのが、映画の撮れない俺の夢だが、実現には至っていない。永久に実現しない気もする。
愛機の電源を切り、もうひとつの愛機、ニンテンドーDSを起動させた。タスケチェスを指す。対戦相手は「レベル10のもんぞう」である。
先手もんぞう、後手鍋太郎。洗濯ならぬ選択定跡はピルツ・ディフェンス。ユーゴスラビアのチェス名人が開発した作戦だそうである。もんぞうは俺にとって、大変な強敵だが、今日は(珍しく)俺が勝った。ピルツ・ディフェンス……なかなかいいかも知れない。陣形が俺の趣味に合う。〔2月7日〕
♞ベランダではなく、バルコニーだが、あえてそのままにしておく。どら焼きとコーヒーの組み合わせは異様であろうか。甘いものを食べながら、苦いものを飲むのは、不思議ではないはずだが。とは云うものの、やはり、緑茶ですかね。どら焼きに合うのは。世の中には色んな好みがあって、お茶漬けならぬ「コーヒー漬け」を食べる人がいると聞いて驚いたことがある。でも、その人にとっては、ごく自然な食べ方なのだろう。突然思い出したが、砂利の頃、茶漬けが苦手だった。家族が茶漬けを食っている中で、一人だけ「お湯漬け」を食べていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます