2話
振り返ると、昇降口から1人の女子が走ってくるのが見えた。
でも、ボクたちがじゃれていると、なぜか変顔でヨダレを垂らしながら、こっちを見てるんだよね――不思議。
「……デュフフ……ナオ×ヨシ……いや……ヨシ×ナオ……かもしれない」
そういうときの小橋さんは、決まっておかしい。代わりに小橋さんの友達から「気にしなくていいよ」って言われるんけど。
そんな本人は、目の前で切らした息を整えている。
「小橋さん、いま帰り?」
「ええ、いま生徒会が終わったとこ」
「そっか~。来週には、文化祭だもんね」
「2人とも、文化祭はクラスの出し物手伝うんだよね?」
「うん! ボクもクラスの出し物、いっぱいお手伝いするよ」
「私は、女バスの方があるから無理かな」
「そういえば、女バスは模擬店やるんだっけ?」
「焼きそば屋台をやるみたい。そんなわけだから、クラスの準備は当然無理。当日は執事として、にぎやかすから期待してて」
「ありがとう。ゴリ推……じゃなかった、提案した甲斐があったわ」
いまヘンな言葉が聞こえたのは気のせい?
でも、小橋さんは普通に会話してる。
「そうだ、生徒会でもイベントやるわよ? 題して『アスレチック双六』!」
「アスレチック双六?」
「よくぞ聞いてくれました、吉成君。我が生徒会は、今年の文化祭で特別な催し物を行うことにしたの」
「へぇ~、どんな内容なの?」
「要約すると、この双六は二人でペアを組んで、人生ゲームよろしくゴールを目指すゲームなの」
そう力説する小橋さん。
というか、生徒会の予算っておかしくない? よからぬ何かが働いた気がするような、しないような……。
「つまり、二人で絆を確かめ合って、アグレッシブかつ、エンジョイする企画なわけ? Do you know understand ?」
「お、おっけー……」
「よろしい。なので、思う存分楽しんでちょうだい!」
と言われてもなぁ……。
小橋さんが怖いぐらいグイグイ迫ってくる。おかげで、スゴく不安になって、奈緒ちゃんの顔を見ちゃった。
当然、奈緒ちゃんはボクの視線に気付いた。
それから、安心させようとニッコリ笑って頭を撫でてくれた……えへへ。
「小橋さん。この話をするってことは、何か意図があるんだよね?」
「……おやおや。気付いてしまいましたか」
「まあ、なんとなくね」
「理解が早くて助かります。ここは1つどうでしょう? 私に貸しを作るということで手を打つというのは?」
「いいよ。私もお願いがあるし」
「ありがとうございます。では、交渉成立ということで」
なになに? どういうこと?
頭越しに繰り広げられる会話は、ボクの理解を超えて付いていけない。それどころか、妙な雰囲気に「仲良くして」って思っちゃった。
「まあ、もっとも――。美樹と共に一番にゴールを駆け抜けてみせるけどね」
とっさに奈緒ちゃんの顔つきが変わる。
気付ば、ボクは背後から奈緒ちゃんの両腕に包まれていた。その意味がわからなくて、ボクは頭の中で「???」って思っちゃった。
けど、小橋さんにとっては違ったみたい。なんか興奮しながら、鼻血を垂れ流してるし……。
「王道シチュぅぅ~ッ!! ありがとうございます! ありがとうございます!」
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