第5話 戦
そして幾日か過ぎた頃、都に早馬が飛ぶように駆けてきました。
その使者が伝えた内容に、帝や貞朋、他の重要な役職についているものたちが驚かされました。
それは、九州が大陸に占領されているという内容です。今、関門海峡の近くで、で北上するのを食い止めているので応援を乞う、とも。
そこで、至急会議が開かれ、応援の部隊を送り込むことになりました。
小雪は自分もその部隊に入り、九州へ行くことを志願しました。貞朋は、父君の事を思えばそれも仕方がないかと思い、貞朋も帝の代理として小雪と一緒に行く事に。 平次郎達も他の侍たちも同行し、都からは南に向かって討伐軍が出発したのでした。
小雪たちは下関に向かっていましたが途中、中国地方にさしかかった時に平次郎が言うのです。
ここで少し暇を下さいと。
ここでもう少し戦力を集めてきます。と言うのです。
正直、都の戦力だけでは心もとないところもあったので、小雪は貞朋に許しをもらって、平次郎と以下数人とここで別れました。
平次郎達は馬に乗り瀬戸内海を目指してゆきます。
小雪たちは途中で都側の豪族から戦力を少しずつ出してもらい、都から出発した兵の数の倍近くを集めつつ、下関につきました。
海峡の向こうには大陸から来たと思われる軍船がいくつかと、九州の船が多数あります。関門海峡での水軍の働き、そして潮の流れなどの関係で、まだ本州への上陸は果たしていないようです。
そこで、小雪はキツネの兄弟をむこうに送り込んで、状況を偵察させようと思いたちました。人間より小回りがききますから。
下関で、小雪は一太と再開を果たし、キツネ達は一太の船でこっそりと九州に渡ってゆきました。その間、下関側では軍船を集めたり、部隊をまとめたり、情報を集めたりと次第に戦いの気運が高まってきていきます。
何度か強行偵察を出したり出されたりで、おおよその規模を把握したところ、船の数や戦力は九州、大陸側のほうが有利なようでした。
そこで、貞朋は極力海戦は避けて、陸上よりの攻撃をしつつ、情報を集める作戦をとりました。何度か小競り合いがありましたがまだ小手調べ程度。
そしてキツネが渡ってから2日後、偵察からかえってきました。それによると、大宰府にいた主要な人物は、ほとんど監禁されていると言う事。今回の状況は、貴正がほとんど一人で大陸側と交渉して引き寄せたものらしいのです。
大宰府の小雪の父君などは大陸の力が入ることに反対していたので、現在監禁されているとか。それと、キツネ達は相手側の布陣も教えてくれまして、大陸の軍と九州の軍は2:8の割合で構成されているとか。
九州の軍は、前の戦いで都と相反した豪族達が組織しているようで、本来九州ではないもの達の顔ぶれもあったとの情報もある。
そして、会議が開かれ今度の引き潮の時に、まだ相手側の意思の統一がとれていないうちに大規模に船で攻め込もうということになりました。相手に海峡の潮の動きを把握されてから戦うのは不利だということで。
小雪も鎧に身を固め、大弓を持って一太の操る船で出陣です。潮の流れを読んだ攻撃の仕掛け方で、当初、小雪達の軍が有利に戦闘を行っていましたが大陸の軍艦が動き出してからは一変しました。
圧倒的な攻撃力で、日本の小型の船を蹴散らしてゆきます。もともと水軍の不足していた都の軍隊はだいぶ危険な状況になってきました。
小雪が大弓で敵将をバタバタと射落としていたため、攻撃が船に集中し
戦いの中、一太も矢を膝に受け負傷し船の操作ができない状態に。
それから小雪は船から船へと飛び移りながら大弓を使い続けて大活躍をしていましたが、流石にもう力も出なくなり始めていました。
都の兵にも疲れが出て、大陸の船達に押され気味になってきます。
日も落ち初めて、潮の流れが逆方向にかわった時、瀬戸内海がわから軍船の大船団がやってきたのです。
それは平次郎が集めてきた海賊の軍団でした。
平次郎は自分と同じように元武士で仕方なく海賊をしている仲間に声をかけ、説得してともに戦うようにしむけたのです。海賊は潮の流れ巧みにを読み、効果的な攻撃を加えてゆきます。
劣勢だった小雪達の都の軍も勢いが出始めました。海賊達は軍船にも取り付いて、大陸の船一隻を沈めてしまいます。それにより九州軍は引き始め、都の軍と海賊達が九州への上陸を果たしたのです。
貞朋は海賊達を褒め称え、このまま一緒に戦ってくれれば正式に召抱えると約束をして、仲間に加えました。海賊はその後も夜襲を仕掛けたりして大陸の船を苦しめ、戦力を削るのに活躍しました。
皆が九州で陣を固めている時、一太の傷は深かったため、小雪たちと共に進む事が困難になり下関に残る事になりました。小雪たちはまた再開を約束したのでした。
小雪達の軍勢は九州に上陸し、快進撃を続けてゆきます。貞朋の口車・・・説得のおかげで九州からの寝返った部隊も多く、貴正の軍勢はだんだんと追い込まれてゆきました。
元海賊の力は絶大で、海上からも貴正の軍勢を圧倒して行きます。
ついに、高取山の砦にて貴正は追い込まれ、捕縛される事に。
貴正は言います。
「九州に流されたものの辛さ、苦しさを都のものに思い知らせてやりたかった」と
貞朋は
「それは私とて思うところがある。あなたはやり方がまずかったのだ」
と言って、貴正を都へ連れて行くよう部下の壱彦に言いました。 貞朋は、
「私はまだここでやる事があるので 途中で集めた豪族から預かった兵と、農村出身の兵とともに戻ってくれ。もうじき作物の収穫もあろうから」
そこで都の軍勢は、貞朋の直属の部下と小雪の兵(平次郎達と海賊達)を残して都へ帰る事になりました。
その後姿を見送りながら、「さて、これからが本番だ。」貞朋はそうつぶやくのでした。
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