第4話 狐の姫君


 大宰府では貴正に捕まっていた主な人々が解放されていきます。

小雪も父君の無事な姿を見て、年甲斐もなく嬉しくて飛びついていくくらいでした。

今回の旅には、狐の母君も一緒に後からついてきており、兄弟4人(匹)と家族みんなで過ごす時間を久々に得ることができました。

貞朋が何やら狐の兄弟たちに伝言を伝え、それで母君が九州までやってきてくれたのだとか。


そして、太宰府には有力なものたちが集まり、九州各地に飛ばしていた密偵からの情報が貞朋の下に集まってきました。

その情報を全て確認し、貞朋は皆に言います。


これから九州が独立すること。

それに、正当な血筋の帝をこちらも抱えていること、などを話し、独立宣言を都にすでに送ったことを明言したのです。




 帝達は早馬により戦の結果を知っていたので、戻ってきた軍を歓迎して、労をねぎらいます。


 都へ戻った壱彦は帝に貞朋より預かった書状を手渡しました。それを読んで行くうちに帝の表情が変わります。



 「おのれ、貞朋、計ったな」

 

 怒りと、どこか楽しそうな口調でそう言いました。

摂政も書状を読んで顔色を変えます。


「いかが致しましょう」


しかし、帝は落ち着いたもので、


「別に九州が独立しようと私はかまわぬ。ただ、あちらにも“帝”がおるというのが少し気に食わぬが」


と言い、左右を見ながら



「使いを送れ、九州の帝に日の本の帝へ一度会いに来いと。捕獲したりせぬから安心して来いとな。まだ碁の決着がついておらぬからな、碁を打ちに私も九州に行ってみたいものじゃ」


と笑いながら言いました。




戦が終わってすぐ、貞朋は太宰府の有力なものたち、九州の有力者を太宰府にある最も巨大な屋敷へと集め、重要な発表を行うと指示を出したのです。



小雪も屋敷に呼ばれ、そこで父君が


「そなたは、これより我々の君主として働いていただく事になった。よろしいかな?」


と言います。


小雪は自分が君主とは何事かと思い、父君に問いますと、送り出す時に持たせた着物を取り出し、言いました。


 この着物にある紋は紛れも無く帝の血筋の家。

 しかも帝には生まれてすぐに生き別れた双子の兄弟がいたと。


狐の母君はそれを知った上で、大切に育てていたという話も初めてされました。


母ギツネは帝の血筋を守るために都を設計した陰陽師の放った式神であり、帝の血筋を守るために数百年という月日を生きている普通の狐ではない、ということを父君からも話され、頭が混乱していきます。

つまり、

自分が帝と同じ血を分けた姉妹ということだと言われたわけです。


 貞朋はこの事を知った上で都では帝と会わせていました。


「帝と知った仲であればむやみな戦はおきないだろう」


という考えの上で。
 


 その後、太宰府では九州の帝の戴冠式が狐の母君のもと行われることとなり。多くのものたちの前で正式に小雪が美しい少女へと戻り、帝の血筋であることを表明しました。


 平次郎を含め多くの部下が驚きに包まれました。しかし、帝自らが戦場でともに戦ってくれていたという事にみなは感激し、一生小雪についてゆく気持になったのでした。
 


 それからしばらくして、若い女帝が治める「九州国」が正式に都にも認められ、九州の帝は都の帝と区別するために「狐の姫君」と好意をもってこう呼ばれていきました。



第一部 完

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狐の姫君 スコ・トサマ @BAJA

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