第7話 妹の凪沙
帰宅すると凪沙が出迎えてくれた。
「お帰りですーお兄ちゃん」
「ああ、ただいま」
俺はリビングに入って、冷蔵庫からお茶を取り出して飲む。
「お帰りなさい、凛。今ご飯するわね」
「いやいいよ、外で食ってきたから」
リビングを出る。
俺は勉強をするために、自室に入る。机の上に教材を並べたときに、「あっ、教科書を忘れた」と気がついた。仕方がない。今から学校に取りに行くか。
腕時計で時間を確認する。午後七時ちょうど。今からすぐに向かえば夜も遅くならなくて済むか……。
俺は母と凪沙に教科書を取りに行くことを伝える。「気をつけてね」と母。「何やってんの。もう、お兄ちゃんはドジなんですから」とプンスカ怒る凪沙。
家を出ると、少しひんやりとした。
電車に乗って三十分。いつもの通学路を歩く。この道を夜に歩いたことがなかったので、新鮮だ。
俺は阿賀宮高校の正門を通って、職員室へとよった。担任にすぐに戻るようにと念を押された。夜に学校に来ることが許されていないためだ。「本当はダメなんだけどね」
教室の自分の机の引き出しから、教科書を取って、すぐに部屋を出る。
——ふと、屋上の桜の木が気になった。あれは消えているだろうか、と。
今いる二階から四階の屋上へと行く。
屋上へとつながる扉は開けられていた。開けるとギィと音がする。
向かい風とともに桜の花びらが俺にあたる。
桜の木は桃色に光り輝いていた。
木に竜華がもたれかかるようにしていた。眠っているようだった。
気づいたら声をかけていた。
目覚める竜華。俺を見るなり驚いた表情をした。
「どうしてこんなところに?」
それには答えなかった。その場から立ち去ろうと思った。理由は竜華が“気持ち悪い”と思ったからだ。なぜ夜に学校の屋上で眠ってるのか。そんな疑問から嫌悪感が生まれたのだろうと思う。
扉をもう一度開けようとすると、腕を掴まれた。
「……お願い。全て……話すから。だから逃げないで」
俺は乱暴に腕を振り解いて、今度こそ立ち去る。
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