第25話キャッチコピー


「今日は体育祭でやる演劇の宣伝用にチラシに劇の見どころを書いてもらう」


先生はそう言いながらボールペンと紙を生徒達に見せた。


この上に自分達が考えた出し物のアピールポイントを書いてもらう」


「そして、書き終わったらそのグループの代表が前に出て、それを読み上げてもらう」


「それじゃあ、グループどうしていつもみたいに固まってもらう」


先生がそう言うと生徒達がいつもの場所へと移動する。


グループ同士で集まったあと先生がそれぞれに紙とボールペンを渡した。


「どうやって書けばいいんだろ?」


「漫画のキャッチコピーみたいにしてみるか?」


「でもそれだと余計に難しくなりそうじゃない?」


グループの中でしばらく沈黙がついた。



「やっぱりここはシンプルに私達は演劇でこういうストーリーがやりたいですって書けばいいんじゃない?」


「でも、どういうストーリーをやるかまだ決まってなくない?」



俺はその言葉を聞いたあと、手を挙げていこう言った。


「まだ途中だけど、台本は持ってきてる」


「本当か陸!」


「ああ」


そういった後立ち上がって自分の席の横に掛けて置いた鞄から台本を取り出した。


「これなんだけど?」


俺はそう言ってグループの生徒達に台本を見せた。


同じグループの生徒たちが台本に一通り目を通したあと、こう言った。



「陸この台本、すげえ面白いよ!」


「そんなに面白いか?」



「ほんとほんと初めて台本書いたとは思えない!」


みんなが口々にそう言った。



俺は全く予想していなかった言葉に思わず驚いてしまった。


「それでこの紙になんて書く?」


男子生徒のひとりがそう言った。


「やっぱり漫画みたいにキャッチコピーぽくしたら面白いんじゃないか?」


「それじゃあ陸このストーリーのキャッチコピーみたいなのってあるか?」


俺はしばらくそう言われて沈黙を続けた。


キャッチコピーみたいなやつって言われてもなぁ、俺がただ好きなラノベとかを参考にして書いただけだからなぁ。


なんて書けばいいんだこの作品のキーになりそうな言葉みたいなのってあったか?


俺はそう思いながらこのストーリーの1部分を思い出していた。


あ!そうだ!


「1人の少女との出会いから始まるちょっと不思議な冒険っていうのはどうだ!」


「いいじゃん、いいじゃん!」


みんなは笑顔で納得しているようだった。


「それじゃあ…代表…りく…お願い」


ティーナが当たり前のようにそう言った。


「それじゃあ、代表は前に出て宣伝広告の発表しろ」


俺はそう言われて緊張しながらもゆっくりと前に出た。


俺は一息ついた後たどたどしく喋り始めた。


「今回の劇のお話はファンタジーと恋愛ものをメインに描いています」


俺は大体のあらすじをクラスの生徒たちに説明した。


「まだざっくりだけど、これが大体のあらすじです」


するとクラスのみんながたくさんの拍手をしてくれた。


俺はその時単純に嬉しいと思った。


体育祭とか学園祭とか嫌いだった俺がこんなことをやるとは思わなかったけど案外いいものなのかもしれないな。


俺は心の中で少しそう思った。



「それじゃあ、これが宣伝広告でいいか?」


先生がクラスの生徒達にそう聞くと迷いなく笑顔で頷いた。


俺は自分の席に戻りながらほっと胸を撫で下ろしていた。


「良かったぞ陸!」


「ほんとほんとよかったよずっと緊張してたけど」


一言余計な言葉が含まれてるような気がするが、褒めてくれてるんだし、ここは流しておこう 。



「えっそれじゃあ早速宣伝する為この紙、貼ってこようぜ!」


男子生徒の1人が楽しそうに笑いながら、そう言った。


俺達はその男子生徒について行った。



「よし、それじゃあまず近くのクラスから貼っていこうぜ!」


「うん」


みんなは納得したようで、そう返事をした。


そして俺達は順番に紙を貼っていった。


すると目の前から雲雀達が歩いてきた。


「よう 陸こんなとこで何してるんだ?」


「雲雀こそこんなとこで何してるんだよ!」


俺は少し警戒しながらそう聞いた。


「俺は他のクラスがどんな出し物をするか見て回ってるんだよ」


雲雀は奇妙な笑みを顔に浮かべながら、そう言った。


まさか!もしかして大きな事をしでかそうっていうんじゃないだろうな!


俺は心の中でそんなことを考えていた。


「ところで陸のクラスはどういう出し物なんだ?」


「演劇だよ!」


「へー、それは楽しみだなぁせいぜい頑張ってくれよ」


楽しみにしているというより、俺が失敗して恥をかくのを期待しているような表情だった。



「無事に再会できるといいな」


雲雀は俺の耳元で小さくそう言ったあと、去っていった。


「あっ、そうだ!今日から演劇練習に体育館使わせてくれるってよ」


先生がクラスの中から顔を出して、俺たちにそう言った。


「よし、それじゃあ体育館に入って、早速練習しようよ!」


女子生徒の1人がそう言った。



俺は台本を持って体育館に向かった。



「この学校…の体育館…て初めて…来たけど…広いん…だね」


ティーナは驚いた表情でそう言った。


「俺もこの学校の体育館初めて来たけどこんなに広いのは知らなかったな」


少なくとも普通の学校の倍はあると思う!


「それで、私達はどこで演技をすればいいんだろう?」


「さっき先生が体育館の上で練習してくれって言ってたよ」


女子生徒の1人がみんなにそう言った。


そう言われて俺達は体育館の舞台に上がった。


そして俺は手に持っている台本を見る。


「それじゃ始めていいぞ?」


「うん」


みんなはそう頷いた。


なんだ、緊張してきたなこれ、今までこういうことやってこなかったし。


今までやってきたことっていえば家でアニメ見たりゲームやったりラノベを読むことだったもんな。


俺がそんなことを考えていると。


隣にいるティーナが俺の手を両手でパンと叩いてくる。


俺はいきなりのことに少し驚いた。


「どお…りく…緊張…なくなった?」


ティーナはそう言いながら上目遣いで俺の顔を見てきた。



ティーナにそう言われるとゆっくりと俺が感じていた緊張が徐々に消えて言った。



俺はその後一つ深呼吸をした。


「それじゃあ、まず俺とティーナの場面だな」


俺とティーナは体育館の上に上がった。


そして俺から台本を読み上げていった。



それから俺達はヒロインと出会う所までを何度か通しで練習した。



俺が少し窓の外に目線を向けてみると、夕日が出てきていることがわかった。



「よし、今日はここまでにするか」


俺は一息ついた後、そう言った。


「うん」


「それより、劇で使う衣装とかってどうしよう?」


相づちを打った後女子生徒がそう言った。


少し話し合った結果その女子生徒が知り合いに頼んでくれることになった。


「それじゃあ、みんな今日ありがとうまた明日もよろしく」


俺は少し緊張しながらそう言った。


「また明日」


みんなは口々にそう言いながら、自分のクラスへと戻っていく。


「ティーナさっきはありがとう」


「ありが…とう…何が?」


「ほら、さっき俺の緊張を解いてくれただろう?」


「りく…あれ…で元気になった…なら…よかった」


「頑張って…りく」


ティーナは笑顔でそう言った。


「ああ、やるだけや、ってみるよ」


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