続き再生文

第四話〔続き新規再生文〕

〔西木草成さま文〕

『……これ……』

『ん? なんか見たことない表紙。作者は……魔王? すっごい名前』

『忍……これ、


〔新規再生文〕

あたしが書いたんだ」

「えっ!?」

 忍は少し驚いた様子で。渡されたノベルと真央の顔を交互に見た。

 しばらくして、忍が興奮した口調で言った。

「すごい! すごいよ! まさか、学校で初めてプロの作家と会えるなんて!」

 予想していなかった忍の反応に、少し戸惑う真央。

「あ、ありがとう」

 不思議な気持ちだった、学校で真央がラノベ作家だと伝えたのは忍が初めてだった。


 そして、葉山 忍は学校で真央が作家である秘密を知っている唯一の存在になった。

 放課後──体育館でバスケ部が部活練習をしている光景を、真央は壁の隅で背もたれた格好で眺めていた。

 男子バスケ部と女子バスケ部が、練習を共有している体育館。

 部員同士の元気な声が体育館に響く。


 汗を散らしながら、ドリブルから味方にパスをしている元気な忍の姿に、体育系な部活とは無縁の真央は、ちょっぴり羨ましさを感じた。

 体育館では、ある名作バスケアニメに感化されている男子バスケ部顧問のジャージ教師が。

「諦めたら、そこで試合終了だぞ!」

 そう言って、男子バスケ部員を指導している姿もあった。


 いつしか、真央の視線は一人の長身の男子バスケ部生徒を追っていた。

 ひいらぎ 真央が見ているのは、桜川 勇太だった。

 男女バスケ部の合同練習の小休止時間──スポーツタオルで汗を拭きながら、真央のところにやって来た葉山 忍が言った。

「どうバスケ部の練習風景、何か次回作のネタになりそう?」

「うん、何か見えてきた……次回作の構想」


 真央の隣に並んで背もたれした、忍が言った。

「せんせー、ずっと勇太ばかり見ていたでしょう」

 忍に言われて動揺する真央。

「そ、そんなコト……」

「せんせーの反応分かりやすーい」

 少しの沈黙の後、忍が真央にボツリと言った。

「魔王さまは、勇者さまに告白したの? この先も。ずっと、プロデュースしているだけ?」


 真央は怖かった、好きな人に告白するのが……失恋するかもと思うと怖かった。

 だから『魔王様が、勇者をプロデュースするそうです』の作中でも、魔王と勇者のどちらにも告白はさせていない。

 スポーツドリンクを口に含んだ、ポニーテールの忍が言った。

「これは、『魔王様が、勇者をプロデュースするそうです』の、いちファン読者の独り言……踏み出さないと、先へは進めないぞ……と」

 そう言い残して、忍は練習にもどった。

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