第4話 ループDKとあるある
安田とミスターとばっちゃんはごく普通の男子高校生3人組だ。
1週間のループに囚われただけの、ごく普通の男子高校生だ。
「第1回ループに囚われた人あるある~」
「既にねーよ」
ミスターが話題を出し、ばっちゃんがツッコむ。安田こと俺は寝転がって漫画を読んでいる。
俺の部屋には窓から春の暖かな風が吹き込んでいる。
「漫画に飽きる」
「あるある~」
「またドラゴンボール読んでんのかよ。飽きねえ?」
「これが飽きねえんだよ、ドラゴンボールだけは」
「あるあるじゃねえじゃん」
「そっか」
会話が途切れる。俺がページを捲る音は、ばっちゃんのスマホから流れてる動画の音に隠されている。
「毎日投稿してるYouTuberの明日の動画の内容を知ってる」
「あるある~」
「ちなみにテロップとかカット割りは変わります」
「へー」
繰り返される1週間は、ループする度に微妙に変化が起きている。撮影自体は先週撮り終えてて、今週に入ってから編集しているのだろう。
「抜き打ちテストに驚かなくなる」
「「あるある~」」
「点が取れる訳では無い」
「10年くらい前に習ったとこだからな」
「島田さんだけは毎回驚いてるよな」
「きっ、聞いてませんよ~!」
「似てはない」
537回中537回驚くんだから、俺達の中では島田さんに委員長としての威厳はとっくに感じられなくなっていた。
「島田さんは金曜日に生理が来る」
「……」
「きっしょ」
「あるあるだろ」
「あるあるというか、ただの生理現象だからな」
「女子の生理が来るタイミング把握してるのはヤバい」
「流石に察しただろ? 妙に機嫌悪いしよくトイレ行くし」
「だから彼女出来ないんだって安田」
「いやいや、彼女出来たら生理周期把握しといて気に掛けるだろ」
「こわいこわいこわい」
「ちなみにたまに木曜日に来てる時もあるぞ」
「お前もかよこっわ」
「だからバイト辞めらんねーんだよ」
「安田がそっち側にいくのおかしいからな?」
男で良かったと、心底思う。もし自分が女で、このループする1週間の中で生理が来るような周期だったらと思うと震える。
「彼女が出来ない」
「あるある~」
「ねぇ~俺ピンポイント過ぎな?」
「ちなみにループしなくても出来ない」
「あるある~」
「出来ます~! ループ終わったら即行出来ます~!」
ちなみにループが始まる前もずっと、彼女が居たことは無い。
「馬券を買っちゃう」
「あるある~」
「な、父さん毎回喜ぶもん、お前も一緒に観るかっつって」
「俺先週3000円ぶっこんだ3連単当たったよ」
「うわぁ~! ループ終わってればなぁ~!」
「たまぁにあの白いのが勝つの腹立つよな」
「分かる」
「俺大穴狙いで毎回買ってるけどな」
「当たっても日曜だからあまり嬉しくない」
「「あるある~」」
大負けしたタイミングでループが終わっても嫌だから、俺はオッズを信じる。
「最初の頃は怖かったけど、ミスターとばっちゃんと一緒ならこのままでも良いかなって思えてきた」
「まあ、あるある」
「あるある、あるなぁ」
「マジでさ、これ1人だったら無理じゃない?」
「そうなんだよ、お前ら居て本当に良かった」
「分かるわ。終わらねー青春時代って感じで案外楽しんでるしな」
「就活の面接で言っちゃいそうだもん。学生時代頑張ったことは? ループする1週間に囚われていましたが、友人と共に協力してその状況を楽しむことに努めました」
「「ねーよ」」
「流石にかぁ」
いずれ社畜になって変わり映えのしない日々を送る時が来るくらいなら、ずっとこのままで良い。ばっちゃんは既に社畜未満の無給労働者だけど。
「第1回じゃないのに第1回って言っちゃう」
「「あるある~」」
安田とミスターとばっちゃんはごく普通の男子高校生3人組だ。
1週間のループに囚われただけの、ごく普通の男子高校生だ。
ループDK R(oo)M(ee) @RooMee316
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