第3話 ループDKとバイト(後編)
田崎はやはり、臭かった。
「繋がらん」
「はぁ……」
仕方なしに俺はパソコンの配線を確認する。
「壊れとんだろ」
「いえ、まさか」
配線に問題は無し、と。
じゃあまあパソコンの設定側に問題あり、か?
「ちょっと確認してみるんで、どうします。そこで待ってても良いですけど、タバコでも吸ってきたら如何っすか」
田崎はヘビースモーカーである。
田崎が退室した後の清掃に入ると、ゴミ箱にタバコの空き箱が5箱は捨てられている。
何が怖いって、5箱が最低でも、ってとこ。
俺の記憶の中では最大で10箱捨てられてた時があった。
ループ前だからマジで遠い過去の記憶だが。
「いや、良い、見とる」
「なんでだよ」
「はぁ?」
「いえ、何も」
まずはブラウザを開いてみるが、本当だな、ネットに繋がってない。
なら次はインターネット接続の設定を、と。
「あぁ、設定でネットの接続が切断されてますね」
「なんでじゃ、ネットカフェでネットが使えんとかやる気あるんかいな」
「これ、再起動後に勝手に接続されるようになってるんですよ」
「あぁ?」
「ブースはお客様を入れる前に清掃に入って、パソコンを再起動してます」
「何が言いたいんじゃ」
「お客様によって設定を変えられませんでした? うっかり、とか」
「あ、あぁ、知らん! 知らんぞ! なんじゃお前オレのせいやっちゅうんか!?」
「そうだっつってんだよクソ客がよぉ! 毎回毎回テメエが帰った後のブースめちゃくちゃ臭いんだよ! 体臭のせいかオ〇ニーしてんのか知らねえけどよ、もう二度と来店を控えてくださるとありがたく存じますこのクソボケジジイがぁ!」
と、言いたいところだけど。
今回のループでは何が何でもこのネカフェを辞める訳にはいかないんだ。
何てったって新人JKだぞ、田崎だろうが何だろうが文句も言わねえ、可愛いと噂のJKの御御顔を拝見するまでは居座ってやるからな。
「設定でネットの接続が切断されてますね、繋ぎ直しますので少々お待ちください」
「ったく、ネットカフェでネットが使えんとかやる気あるんかいな」
無いんだよ、バイトに対してやる気なんて。
おいこら田崎、経験したことあるか?
およそ10年間の無給労働をよ。
「接続できました。また何かありましたらフロントまでお申し付けください」
「ったく、クソガキやのうて可愛い女だけやったらええのに……」
待て待て、今回だって初めはサキさんが対応してただろ。
サキさんには悪いけど、そんなこと言うならそのままサキさんにパソコン見てもらえば良かったんじゃないのかよ。
いや、そりゃ内線止めろとまでは言わないけどさ。
俺だって嫌々ながらくっせー部屋でしょうもないパソコンの設定してやったんだぞ、感謝の一つくらいあっても良いだろ。
「さっさと戻らんかい、仕事仕事、仕事せんかい、ったく最近の若いのは……」
田崎、ミズノさんに感謝しろよ。
そうじゃなきゃ俺の右拳がその鼻へし折ってたからな。
「ごゆっくりどうぞ」
そう言い残して俺は田崎の部屋を後にした。
……ループ終わったら、10年分の給料、貰えるかなぁ。
ばっちゃんはごく普通の男子高校生だ。
1週間のループに囚われただけの、ごく普通の男子高校生だ。
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