第21話 花咲く春の患い病
陽の当たらない薄暗い校舎裏。
泣いている女子生徒を困った顔でなだめるパクがいた。
女子生徒「どうして……わかってくれないの……。」
パク「……。」
恋愛なんて正直面倒だ。
頭を撫でて自分の胸に引き寄せる。
1番じゃなくていい、都合のいい女でいい。
本当の僕を知らなずにそんなこと言える君が信じられないな。
……俺の中には悪魔がいる。
それを知っても同じことが言えるのか?
フッ……。
人間の感情は煩わしい。
そうだろ?
俺自身ではなく俺の中の悪魔に魅了されて女子たちは寄ってくる。
本当の俺は……
カラッポさ。
パク「僕には彼女がいるんだ……。君みたいに言ってくれる子はありがたいことにたくさんいてね……。君でちょうど100番目だ……。」
女子生徒「それでも……好きなの……。」
言い寄られるのは悪い気はしない。
こうなる事は計算通り、とでも言っておこうか。
(※アナウンス 以下内容は小説の設定ではなくパクの思い込みによる妄想です。(。・ω・。))
――それは数千年前……。
世界に蔓延っていた悪魔たちは、俺たち一族との全面戦争で煉獄の煌炎により一掃された。
しかし人間の心根に渦巻く混沌とした漆黒の欲望……深淵の闇より生まれし悪魔、7つの大罪までは息の根を止めることができなかった。
そのため俺たち一族は代々、自身の身体の一部を贄とし、体内に悪魔を封印継承する道を選んだ。
だが、封印され長き眠りについていたはずの悪魔たちの力は日に日に強くなり、俺の体に変化が起き始める。
ある日突然、喉に突起物が現れ、声が悪魔のように低くなり、
(※アナウンス ただの声変わりです。)
身体中のありとあらゆる皮膚から、黒く濃い毛が生え始める。
肉体も筋肉量が増え、戦闘に適した形状へと変化し始め、少しの食事では空腹が満たせず、最近では一日5食、食事を取ることもある。
(※アナウンス ただの成長期です。)
女子のことが気になって仕方がないし、いかに女子にモテるかだけを考えて1日が終わることが増えた。
このモテは俺自身の能力であることが示したいが故に、全国トップを争う頭脳を使い、統計学、心理学、行動認知学を網羅した、女子を口説くための、オリジナルのモテバイブルを完成させた。
つまり、向かうところ敵無しだと自負している。
(※アナウンス ただの思春期です。おめでとうございます、自力でモテています。)
そんな俺の中の7つの大罪、色欲の悪魔、アモデウスが暴走し、学園中の女子たちを口説き尽くしたころ、俺は聖女に出会う。
つぶらな瞳。ピンクに染まる唇。ふわっふわの白い肌。
そんな子ウサギのようなミニョンは、純真無垢に見えて実は2人きりになると大胆な性格。
俺が求めていた唯一無二の聖女だった。
(※ アナウンス どストライクの好みのタイプだったんですね。よかったですね。)
俺の邪心眼が暴走し、他の女子の胸の揺れる動きから目が離せなくなったり、短いスカートからのぞく太ももに期待が膨らみ、下着が透けて見えるまで凝視してしまう呪いにかかってしまっても、しっかり頬をつまんで俺の中の悪魔を抑えつけてくれる。
俺の中に悪魔がいることをミニョンに打ち明けた時、ミニョンはすんなりと受け入れてくれた。
そしてミニョンはにっこりと笑って、
「私も色々やってみたい事があるの。」
と言った。
まず、一人称を俺から僕に変更した。
神聖な彼女の要望で、俺はめちゃくちゃ痛いブリーチを我慢して、定期的に髪を金髪に染めている。
本当なら絶えず鏡を見続けて前髪の流れを整え続けたいが、それもミニョンに禁止されたため我慢していた。
彼女が密かに入手したという、少女漫画という名の禁忌の書の人物になり切るため、
俺は何があっても、俺の神聖な聖女のために、とことんつきあう事を決めたのだ。
いいんだ、悪魔をこの身に宿す事を宿命とした呪われた俺を受け入れてくれたんだ。
なんでもするさ。
フッ……邪心眼を持たぬ者にはわからないだろうな……。
今日は大地の恵みの粉で作られた、四角く形成され香ばしく焼き上げられたた供物を使っての儀式を再現するらしい。
全速力でトーストをくわえながら走るミニョン。
角に隠れていたパクがタイミングを見計らってとびだす。
ミニョン「キャッ!」
『ドン!』
パク「あ……ごめん。」
ミニョン「いったぁ……ちょっと!パク!ヒロイン突き飛ばしてどうすんのよ!やり直し!」
改めて、全速力で向かってくるミニョン。
ミニョン「キャッ!」
『ドン!』
パク「あ……ごめん。」
ミニョン「ちょっと!ちゃんとうまくぶつかって受け止めて!」
出会い頭にぶつかって恋が始まる。
彼女は禁断の書を再現したいらしい。
パク「"そして俺は過去を凌駕する"って言いたいんだけど、今日はいうタイミングある?」
ミニョン「はぁ?何言ってんの?」
……今日の聖女はあまり機嫌が良くないらしい。
ここは、素直に従っておこう。
これは俺達の物語だからな。筋書きは俺達が決めればいい。
回れ右してパクは定位置に戻る。
そんな何度も同じ曲がり角でやりとりを繰り返しているパクとミニョンを影から見つめていたのは、リコだった。
リコ「またやってる……。朝からイチャイチャ……。」
出るタイミングを完璧に失ったリコはなかなか学校にたどり着けずにいた。
リコ「それにしても、ミニョン先輩……ちっちゃくてとっても可愛すぎる……。ココナッツみたいないい匂いするし……。
パク先輩もいつも石鹸のいい匂い……。金髪にしてから頭皮痛めてる感じだけど……。いいなぁ……理想のバカップルって感じで……。」
よくこの現場に遭遇するリコは、2人のやりとりを観察するのが密かな楽しみであった。
パク「ミニョン、そろそろ学校行かないと……
"あ……が……あ……離れろ……!死にたくなかったら、早く僕から離れるんだ!そして……ぅぐふっ……
……フッ……フフフハハハ!!
さあ、聖女よ!おしおきの時間だ。俺の身体を弄んだ罪は重いぞ!"」
ミニョン「もう!ダメ、カッコいいパクでいて!悪魔だったっけ?はいはい、悪霊〜退散〜♡私のカッコいいパクに戻ってね♡」
リコはいつか盛大にパクに見ていた事をすべて打ち明けようとニヤニヤしていた。
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