花咲く春の諸事情【春編コマーシャル】



風が窓のカーテンを激しく揺らす。


図書室で一人で勉強するマリがいた。


自分だけの特等席。


自分だけの教室。


誰にも支配されない自分だけの空間。


叫び出したくなる気持ちを抑え込み


目をつぶって心を落ち着かせる――





教室からは死角になった花壇。


太陽の光に反射してピカピカと羽が反射する蝶々。


さすがにこれが飛んでいたら目立ちすぎるか。


手のひらの上で飛び回る蝶々は、

急に飛ぶのをピタッとやめて、ユリの手の中に落ちてゆく。


パキパキッ……


こんな簡単に粉々になるなんて。


脆すぎる――





陽の当たらない薄暗い校舎裏。


泣いている女子生徒を困った顔でなだめるパクがいた。


恋愛なんて正直面倒だ。


頭を撫でて自分の胸に引き寄せる。


1番じゃなくていい、都合のいい女でいい。


本当の僕を知らなずにそんなこと言える君が信じられないな。


人間の感情は煩わしい――





水道のハンドルにティッシュをかけ、水を出す。


手を洗う。念入りに。


誰かが触った石鹸なんてもっと触りたくない。


脇に抱えていたタオルでゴシゴシと手を拭く。


顔半分を不織布の大きなマスクで隠したリコは鏡を見ながらマスクを外す


いいかげん慣れないと――





鍵のかかった音楽室。


グランドピアノに向かうハナ。


何度も同じ場所を弾き直し、譜面に採譜していく。


滑らかに筆が進むが、力を入れすぎたのか簡単にペンが折れてしまう。


鍵盤にポタリ、ポタリと垂れる赤い液体。


うつむいた顔は表情が見えない――


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