第14話 真夏の夜の想い人


人々の熱気


しっとりと肌に絡みつく汗


私のパルスは70ぐらい


ちょっと興奮しているけれど


集中すればするほど周りは静かになる


「缶ビール2本ください。」


あ、そっか、わたし今バイト中だった。


ユリ「はーい!」


冷たい氷水から、缶を取り出しタオルで拭く。


ユリ「1000円でーす。」


目線を上げると、そこには私の大好きな顔があった。


ユリ「リョーマ!!」


リョーマ「バイト頑張ってるみたいだな。」


ユリ「来てくれてありがとう!ウズラじいちゃんも。」


ウズラじい「お前、迷惑かけずにちゃんとやっとるか?そちらの美人さんがサクラ先生ですかな?いやいや、うちの孫娘がお世話になって……。」


デール「いやいや、僕は男ですよー。サクラ先生はあっち。おーい、サクラ先生ー!」


デールが指さす先には、アイスピックで冷凍フルーツを無心で突き刺しほぐしているサクラがいた。


サクラ「ん?あ……ごめんなさい、ちょっとぼーっとしとしちゃって……。」


ウズラじい「ほぉーーー!!こんなお若いのに先生とはこれまたご立派な!!」


リョーマ「博士、あんまり興奮すると血圧上がりますよ。」


サクラ「研究職のお仕事か何かをされているんですか?」


ウズラじい「そうなんじゃそうなんじゃ、あんまり詳しいことは言えないんじゃが、サクラ先生ならいつでも大歓迎じゃからの、大学の研究室でも自宅のラボにでもご招待しますぞ!」


リョーマ「はいはい、お仕事の邪魔になるからね、あっち行って花火見ましょーね。」


ユリ「リョーマ、もういっちゃうの?」


リョーマ「ユリのがんばってる姿見れたからね。帰り迎えに来るから、またバイト終わったら連絡して。」


ユリ「うん!」


ウズラじい「サクラ先生はワシがお送りしますぞー!」


リョーマ「エロジジイが本性出す前においとましますね。ユリ、頑張って!」


ユリ「うん!がんばる!」


ウズラじい「おい、リョーマ、今お前教授に向かってエロジジイって言ったか?!単位やらんぞ……」


リョーマ「はいはい、行きますよー……」


ウズラじいとリョーマは人の波に飲まれ消えていった。


サクラ「元気なおじいさまね。もしかして、隣の山葉大学の教授なの?」


ユリ「はい。元気すぎちゃって困ってます。」


リコ「で、あのリョーマ君は?!」


ユリ「おじいちゃんのクラスの生徒だよ。」


マリ「そうじゃなくて!」


リコ「付き合ってるの?」


ユリ「え?誰が?」


マリ「ユリちゃんとリョーマ君!」


ユリ「えーーー!!どうだろーーフフフ。」


サクラ「何それ!その返しはどう見ても付き合ってるでしょう……そうだ、マリちゃんとリコちゃんちゃん、そろそろ会場の方に売りに行ってもらえる?」


リコ「わかりました。」


マリ「もうこっちのお茶のタンク空なんで交換したら行きますね。」


マリとリコが最後のタンクを取り付け、小さなクーラーボックスに飲み物を詰め込む。


リコ「どうせなら、この大きいクーラーボックスで、いっぱい入れて?台車に乗せて行く?」


マリ「この人ゴミだと何回も行ったり来たりしてたら時間もロスするし……。サクラ先生、こっちので一気に持っていって花火の人がはけたら帰ってくる感じでもいいですか?」


サクラ「無理はしないでね、本当にみんなよく頑張ってくれたから、休憩しながら花火ゆっくり見て帰ってきてくれればいいから……。」


リコ「台車にのぼりをつけて……値段も書いて………オッケー!」


簡易の移動販売台車が出来上がる。


マリ「行ってきます!」


少し空いてきた人の波の流れに沿って、2人は花火会場へ向かっていった。

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