第5話 真夏の海の水着とボサノバ


海騎馬男子の部、最終決戦。


しかしその勝敗より大きな事件を、どう誤魔化すかで、2チームは同じゴールに向かって団結していた。


全員敵ではなく何かを探すように海面を見渡す。


パク「これだと何か探しているのが、すぐバレそうですよね……僕とクルルは揉み合ってる演技をした方がいいのかも……」


パクの提案で、なんとなく両者は揉み合いの演技をするが、超チームくっついて右へ左へ移動するだけなのビーチサイドはだんだん盛り下がっていく。


拡声器でチップさんが檄を飛ばす。


チップ「どうしたー!何かあったのか?!さっきまでの威勢はどうした!!」


しっかり水着を履きなおしたクルルは腰紐をしっかり締め直す。


パク「さすがにバレてますよね……ハナ先輩……どうしましょう。」


ハナ「……すまん……」


パク「もう、最終手段ですね。僕、インナーがギリ水着で通せると思うんで、僕が落馬した後に上の海パン脱ぎますから、すぐそれ履いてください。」


ハナ「パクの脱ぎたて……仕方ない……」


パク「仕方ないも何も、それしかもう方法ないでしょう!それとも、全裸で女子部員の前に立ちますか?!僕一緒にされたくないですから!」


普段は冷静なパクも、そうしてはいられなかった。


マリ「一生 ″あの全裸の人″ っていわれちゃいますよ〜」


双眼鏡で覗きながら、マリが小さくつぶやく。


パク「クルル、海に落としてくれ!」


クルル「パク先輩!行きます!」


クルルの手がパクの鉢巻に伸びそのまま両チームは、海に倒れ込む。


クルル「とったどぉ〜!!」


クルルは鉢巻と歓声を手に海を上がる。


注目がそちらに集まっているのうちに、ハナはパクの水着をはき、こっそりと他のチームメンバーの影に隠れ海から上がるのであった。



女子の海騎馬戦はサクラ先生も参加しての白熱のキャットファイト、そして嬉しい事故を全ての男子が期待していた。


が、女子達は用意周到。


しっかりラッシュガードに身を包み、粛々と競技をし、あっという間に終わってしまうのであった。


最終的な勝敗はクルル達のチームが優勝し、豪華メニューを取得。ヒデ達のチームが荷物運びをすることになった。




日が傾き、キャンプファイヤーを囲いながらライブが始まる。


海なので最小限の機材と、ほとんど生音の楽器やパーカッションのみだが、全員の疲れ果てた体にはそれぐらいが心地よかった。


各々、親睦を深めながら自由に茜色に染まるビーチを楽しむ。


ボサノバのリズムに合わせてギターが始まり、聴いたことがない、心地よい声で誰かが歌いはじめる。


この曲は、ドラマの主題歌で、振り付けが話題になったノリの良い男ボーカルの曲。


さらには最近そのドラマ内で共演した2人が結婚したことで話題だったのだが、軽音部の新しい子の歌声なのかな、と、ヒデはステージを見た。


白いロングワンピースを着た長い髪の女の子。


もっと近くで……よく、顔が見たい……


ヒデ「あっ。」


それはフウカだった。


目が合い、思わず逸らしてしまった。


部活でほとんど毎日顔を合わせていたはずなのに、わからなかった。


普段は結んでいる髪を下ろしていたからなのか、服装のせいなのか。


さっきヨシキから色々聞いてしまったからなのか。


フウカの歌を聞いたのは、初めてではないはずなのに。


疲れているせいなのか。


ヒデ「好きだな……。」


パク「心の声漏れてますよ。」


パクが飲み物をヒデに渡す。


ヒデ「うん、好き……な声だよ、心の声、間違ってない。」 


パク「合ってますよね、ボサノバ調の曲。普段のフウカ先輩はテキパキした元気なイメージでしたけど、歌声は柔らかいというか、女性らしくて綺麗ですよね。」


ヒデ「調子狂うなぁ……」


パク「え?」


ユリ「パクせんぱーい!」


ユリが大きく手を振る。


パク「あれ?どうしたんだろ?」


ユリ「リコちゃん知りませんかー?そろそろ待機してほしくてー!」


パク「ちょっと探してみるよ!」


ユリ「ありがとうございまーす!」


パク「ということだから、ちょっと失礼しますね。」


ヒデ「待て、リコちゃんがカニに釣られているとまずい。俺も探す。」


パク「カニ?あぁ、そうでしたね。カニに釣られてステージに穴を開けるなんてあるまじきですからね。」


二手に分かれて2人はリコを探した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る