第4話 真夏の海の恋とポロリ


フウカ「なんなのよ、アイツら。男同士で肩組んで……またどうせ、ろくなこと考えてないんでしょうけど!」


鉢巻を取られ、負けたヒデが海から上がろうと、こちらを向いて何か言っているようだった。


ヒデと目があった気がしていた。

そして自分に向かって海から上がってくる。


そう思って、ちょっとドキドキしたのに、そのまま戻ってしまうなんて。


フウカの隣でマリは双眼鏡をのぞいている。


マリ「……ヘェ〜」


双眼鏡を外し、チラリとフウカの顔を伺いながら、わざと困った顔をした。


マリ「ヒデ先輩って、県で優勝して代表選ばれてましたよね?」


フウカ「え?そう、そうだけと、どうしたの?いきなり。」


マリ「なんか、同じチームになって初めて喋ったんですけど、すごく面倒見が良くてしっかりしてて頼りになるなぁ〜って。 

しかも代表とかすごいじゃないですか〜。」


フウカ「え?そう、そうね、部長としてはしっかりしてるのかもね。」


マリ「年上ってカッコいいなぁって、なんか思っちゃって……彼女……いるのかなぁ……。」


フウカ「彼女?アイツに彼女なんて……いない、と、思うけど……休日だっていつも部活だし……」


マリは必死に口元が緩むのをキュッとしてこらえた。


フウカ「それに、女子の前だといつも鼻の下5cm伸びてるし!手取り足取り教えるふりして後輩にやたらとボディータッチしようとするし!あんなやつ……あんなやつ!やめておきなさい!」


マリ「そうなんですね。さっきもフウカ先輩の事見てたみたいだし……勝ち目がないならやめておきま〜す。」


フウカが1人でもモヤモヤ考えている中、マリはニンマリしながら再び男子達の観察に戻った。




しばらく、残り3チームだったが、軽音部のパクとクルルに挟まれてスキー部のチームが落馬した。


軽音部2人の先輩後輩同士の戦いなのだが、始めに事件に気付いたのはハナだった。


ハナ「おい!クルル!お前、ケツ!」


クルル「えっ?!やっぱり?!」


ハナ「そんなもん見せんなよ!早くしまえよ!」


クルルは必死にずり落ちていく水着をあげてお尻を隠そうとするが、どうにも張り付いてあげることができない。


パクが今こそ、と身を乗り出すもハナが前に進まない。


パク「部長?」


ハナ「すまん……。」


進むどころかどんどん沈んでゆく。


クルル「あれ?部長……もしかして……赤色の海パン履いてたはずですよね?僕の位置から赤色が見えないんですけど……。」


クルルがニマニマしながら自分の水着を必死で直す。


ハナ「すまん……。」


クルル「僕のお尻なんて可愛いもんじゃないですか!

 部長!海パンどこやったんですか?」


ハナ「すまん……。」


パクは必死に笑いを堪えながら、うつ向くハナの後頭部に向かって呟く。


パク「仮にこの場をやり過ごして、どうやって海から上がっていくつもりだったんですか?!」


ハナ「そのうち見つかるかなって……」


ハナはどんどん小さくなってゆく。


パク「どこで脱げたんですか?」


パクは声をうわずらせながら必死で耐えて、あたりを見回すが、赤色の海パンらしきものは見当たらない。


ハナ「ヒデの鉢巻を取って逃げた時に……」


パク「結構序盤じゃないですか!ずっと脱げっぱなしだったってことですか!?」


ハナ「すいません……」  


パク「下手に探し出すと女子たちにも気づかれますよね……。ちょっと一旦離れて作戦会議をしようか……

。」


取っ組み合いの一騎打ちで、一気に結果が出ると思いきや、両チームが距離を取ったのでビーチは少しざわついていた。


双眼鏡で読唇術を使うマリだけは肩を震わせて必死に笑いを堪えている。


フウカ「マリちゃん、何か見えるの?大丈夫?」


フウカがマリの様子に気づいて声をかける。


マリ「いえいえ、……あぁもぅ……、涙が……。」


フウカ「砂が目に入った?」


マリ「そういうことにしておきます……喉、乾いちゃったんで……何か飲んできます。」


フウカ「うん……わかった。」


マリは1人で岩陰に隠れ、ひとしきり笑った後、飲み物を持って何食わぬ顔をして戻るのであった。


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