第3話 真夏の海の騎馬戦
BBQもそこそこに、チーム対抗で水泳リレー、ビーチフラッグ、借り物競走が行われた。
そして最後は海騎馬戦。
男女別で行われるため、女子の視線を集められる、もしくは合法的に女子を凝視できると、男子たちは湧き上がっていた。
チップ「チーム対抗協議はこれで最後だ!まだどのチームが優勝してもおかしくない!そして最下位チームは荷物運びをすることが先程決まった!心して挑むように!」
チップが拡声器で戦いの狼煙をあげる。
1番深い場所に位置しているのは、スキー部部長ヒデと後輩ヨシキのチームだ。
ヨシキ「部長〜あの坂を俺らだけで荷物運びなんて絶対やばいっすよ……なんとしても最下位は防がないと!」
ヒデ「大丈夫、俺たちならこの短時間でかなりの親睦を築けている。そして何より俺は腕が長い!ここで″騎馬戦で優勝したチームの″という肩書きをつけて女子達にアピールするのだ!」
ヨシキ「優勝すれば同じチームの女子たちからも株が上がりますしね!」
ヒデ「カニや伊勢海老なんて、みんな食べたいに決まっている!俺はリコちゃんが無類のカニ好きだということを知っているのだ!
さっきだってクーラーボックスから蟹味噌を見つけて、コッソリ頂こうとしたところをチップさんに叱られていた!」
ヨシキ「カニをエサに釣るんすね!」
ヒデ「言い方が悪い!好物を献上してお近づきになりたいというだけだ!消してやましい……モゴモゴ……
とにかく、同じチームだったら俺の分まで喜んで差し出すのに、あろうことがライバルチームだ。何とか手に入れて、夕日を見ながら二人でこっそりカニを食べようと誘う、完璧なシナリオだ!!」
パク「熱弁されてるところ、申し訳ないですけど、口が過ぎると女の子は逃げちゃいますよ。」
ニッコリとパクがほほ笑むその手にはヒデの鉢巻が握られていた。
ヒデ「なっ!!!ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ!!!」
ヨシキ「ええええ?部長マジっすか?!」
ハナ「たしかに、ウチのリコはカニで簡単に釣れるかもしれないな。食い意地張ってるし。」
パク「ハナ先輩まで。」
ハナ「俺が朝食を食べないって言ったら、1日3回食べていいのに、何でその中でも1番カロリー多くとっていい朝食を食べないんだ、もったいないって力説されたの思い出した……。」
パク「まぁ、たしかに。ずっとダイエットするって言ってますよね、リコちゃん。」
ハナ「食べていいっていう思考がもうダメだよな……おっと、逃げるぞ。」
軽音部部長ハナとパク率いるチームが、ヒデ達のチームを落としたことを皮切りにハナ達は集中攻撃に合う。
ヨシキ「勝敗どうなるんスかねぇ……荷物マジ勘弁ですって!明日もあるのに体力続かないっすよ部長!」
ヨシキは身を投げ出して海にぷかぷか浮いている。
ヒデ「女子達にかかっているな……」
ヒデは眉間に皺を寄せビーチで応援する女子達を眺める。
ヨシキ「フウカ先輩にお願いして、俺何とか勝ってもらえるように頼み込むッス」
ヒデ「すまん、後輩!……いや、ここは俺の責任でもあるわけだから俺から今、副部長に懺悔してくる。」
ヨシキ「フウカ先輩に懺悔したって逆効果ですって!俺が上手いことしますから、ね?部長?ちょ、止まってくださいよー!」
ヨシキが羽交い締めにしても、ヒデは海を上がっていく。
ヨシキ「フウカ先輩がヤキモチ焼くと練習メニューキツくなるんすから!本当に、部長、やめてください!」
ヒデ「ヤキモチ?!」
ヨシキ「これだから。フウカ先輩部長に絶対気ありますよ。」
ヒデ「……詳しく教えろ後輩。」
ヨシキ「詳しくも何も、そのままんまっスよ……」
海から上がりかかったヒデ達のチームが踵を返していく。
そのころ海騎馬戦は佳境を迎えていた。
パクが大将のチームと軽音部一年のクルルが大将の一騎打ちだが、何度も揉み合いになるものの、どうにも2チームとも深い場所から出てこない。
パクたちはその場所から動かない。クルル達は何故か女子達の方ばかりを見て、お尻を向けずにパクチームの周りを回る。
女子達からは見えないが彼らには大事件が起きていた。
マリ「……ヤバすぎる、あの人たち……」
マリは必死に笑いを堪えていた。
双眼鏡でことの一部始終を見ており、さらにマリは読唇術が得意だったため、言っていることがほとんど読めたのだった。
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