第9話
「
読み終えた文を懐へと突っ込みながら、四人の名を呼んだ豊前坊。その表情は真剣で、名を呼ばれた四人は只事では無いことがすぐにわかった。
「なんだよ、
同じように真剣な表情で天音が身を乗り出すように尋ねる。
それにごほんと咳をすると、伸びきった顎髭を撫でながら口を開いた。
「うむ……ぬしらには天岩戸神社へと行って貰わねばならんようになった」
「天岩戸神社……へ?」
天岩戸神社。
宮崎は高千穂に鎮座する、日本書紀に記された天照大御神が隠れたと天岩戸と呼ばれる洞窟を御神体として祀る神社で、岩戸川の川上には八百万の神々が集まった天安河原がある。
そこへ行けと言うのである。
「なんでそんな所に行かなきゃならないんだ?」
「
「はぁ?理由も教えて貰えず、あの婆さんの指示だから?うちらもそんな暇じゃねぇよっ!!ただでさえ、最近は妖魔がよく出るんだからよぉ」
後ろに手を付き仰け反るようにして座り直した天音が悪態をつく。それをじとりとした目で見ている若鷹丸。
「なんだよ、若鷹丸?やんのか、てめぇ?」
天音がぎろりと睨み返しながら言うと、若鷹丸がさっと顔を伏せ目を逸らした。
「おい、天音。ここの事は我ら天狗衆に任せとけば良い。突然の事で戸惑うのも分かるが、御影様の命とあらば仕方がない」
「ちっ……わかったわかった。で、いつ出発すればいいんだ?明日か?明後日か?」
「否……今からだ」
「はぁ?!」
今から……豊前坊の言葉に、天音だけではなく、さすがの茨木、
「ふざけんなっ、
噛みつかんばかりの表情で怒りを顕にする天音に、豊前坊は頭をぼりぼりと掻きながら、奥の方へと声を掛けた。
すると、一人の可愛らしい巫女姿の童女が部屋の中へと入ってきた。
そして、そこにいる五人へとぺこりと頭を下げる。
「お
「お花の操る車に乗って行ってもらう」
「車って……あれだろ?」
「そうじゃ」
「まじかぁ……」
にこにことしているお花とは対照的にウンザリとした面持ちの天音。それを横で宥めている
「まぁ……しょうがありませんわよ、天音。どう足掻いても御影様の命には逆らえませんから」
諦めた様子の茨木がにこりと微笑み豊前坊をみた。
「そう言う事じゃ、四人共。今から準備を整え、すぐに出発しろ」
その言葉に諦めがついたのか、天音はあからさまに大きなため息をつきながら準備しに部屋へと戻っていった。
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