第2話 幽霊パトカー

目の前をパトカーが颯爽と通り過ぎていった。もちろん、僕らのものではない。

こちらは型落ちしたセダンの中で、もさもさと餡パンを食っているところなのだ。

ちなみに隣の人はメロンパンである。

「……先輩、パトカーカッコいいっすね」

「そーか」

「僕、刑事になってパトカー乗り回すのが夢だったんです」

「あれ交通課だぞ」

先輩の冷静な指摘に、僕は思わずハンドルを抱え込むようにして突っ伏した。そうでもしないとやってられないのだ、この部署は。

「何で僕らは寒空の下、出るかわからない都市伝説を待ってんですかね」

「そういう職場だからなぁ。あ、いた」

空になったメロンパンの袋を手に、先輩が前方を指さす。

慌てて顔を上げた僕の前を、パトカーが軽快に駆け抜けた。くそ、無駄にカッコいいな。

「仕事だ。アクセル吹かしていこうぜ、新入り」

湧き上がる嫉妬心と餡パンを牛乳で無理やり飲み下す僕に、先輩が笑みを刻んだおもてをむける。

夜の闇をさいて走る赤いテールランプを睨みつけ、僕はサイドブレーキを踏んだ。

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