第10話:先輩との食事からのラブホへ
朝起きると、ナナミはすでにいなかった。今夜先輩と食事に行くと思うだけでもネクタイの色を選ぶのに時間がかかってしまう。
今日の仕事は、やけに捗っていた。やはり、彼女がいる奴は段取りも要領もいいのは、その後に嬉しいことが待っているからなのだろうか。そんなことを考えつつも、気づけば18時になっていた。待ち合わせのホルモン屋に行く。
正直初デートがホルモン屋でいいのか疑問だったが、先輩の希望だったから仕方がない。でも、俺はどうしてもその後のことを想像してしまう。だって、ホルモンって強壮効果もありそうだし。「ホルモン」と名がつくからには、いかにも男性ホルモンをたっぷり含んでいそうだもんな。けど、実際はニンニクとかの方がいいらしいんだからややこしい名前つけないで欲しいよなと1人不貞腐れてホルモン屋で待っていた。
先輩がやってきた。今日の先輩は黄色のロングスカートに白色のブラウス。中のキャミソールが赤なのは差し色とかいうやつなのだろうけど。俺にとってはブラのストラップにしか見えずに、しどろもどろになってしまう。
「勇也君のエッチ。私の胸ばっか見てたでしょ?」
「ちがっ、だって、白に赤って目立ちますよね?」
「そうね。だって、勝負下着は赤って決まっているじゃない?」
思わず俺は吹き出してしまいそうなった。よかった。水も飲んでいなくて。
「とりあえず、乾杯しましょう。俺、喉乾いているんで。生中でいいですか?」
「いいけど……なまちゅうってなんか響きがやらしいよね」
「えっ?」
俺は今までそんなこと考えたことなどなかった。こんなとんでもない発想はもしかすると本当に処女なのかもしれない。俺は先輩の顔をまじまじと見てしまった。誤魔化すように、店員を呼び生中を2杯頼むことにした。
「乾杯しよう。私の処女喪失に」
「先輩……ちょっと声大きいです」
「あっ、ごめん、あまりにも嬉しくて……つい」
えへへと笑う先輩がかわいらしく見えてしまう。これはもう処女決定だろう。俺はそのまま乾杯することにした。
「あのさ、勇也くん、その先輩呼びやめてくれない?」
「あっ、はい。なら何て呼べばいいですか?」
「姫香ね。あと、敬語も禁止」
「あっ、はい、じゃなくて、うん。姫香」
「いいわね。やっと呼んでもらった。このハツ美味しいね」
子供のようにあどけない笑顔を振りまく先輩が見れる日が来るなんて俺は思ってもいなかった。嬉しすぎて酒の進みが早かったようだ。
「ちょっと、勇也君、飲みすぎて使い物にならなかったらダメだからその辺でやめてよね」
プクと頬を膨らませる様子がかわいくてたまらない。それにしても、この破壊力のある胸とくびれのギャップはなんなんだと1人興奮してしまう。しかし、使い物にならないとはちと言いすぎではなかろうか。まだまだ現役なんだけど……
「はいじゃなくて、うん」
先輩も少し酔っぱらっているようだ。話し方がねっとりとっしてこれはこれで最高である。腕時計を見ると、もう夜の九時になっていた。
「うん。じゃあもう清算して……くるね」
「私も払うよ」
先輩は財布を出そうとしたが、酔っぱらっているせいか鞄のチャックが外せないようでいた。とはいえ、女性に払わすつもりもない。
「ここは俺に払わせてください」
「う……ん。ありがとう」
俺たちはホルモン屋から出たのはいいが、先輩が公園に行こうと俺の手を引いた。内心ラブホじゃないのかと残念に思ってしまった自分がいた。
ベンチに座ると、先輩はゆらゆらと動いている。これは酔っぱらっているのだろう。自動販売機で酔い冷ましの水とコーヒーを買う。
「先輩、どっちがいいですか?」
「先輩じゃないのっ。姫香なの。勇也君のいじわるっ」
「ごめんごめん。ほら、もう水でいいよね」
俺は先輩を宥めるようにペットボトルのキャップを外して渡すと先輩は一気に飲んだ。500ミリの水が半分くらいに減っていた。
「あぁ、美味しかった」
「それはよかった」
俺は余った缶コーヒーを飲んでいると、一口頂戴と先輩が缶を無理やり奪い取る。
「うわぁっ」
先輩の白いブラスにコーヒーがかかってしまった。これはまずいと俺はハンカチをふき取ろうとするも場所が場所だったので躊躇してしまう。
「そうだ。いいこと思いついた。これ洗って乾かせばいいのよ」
突然の先輩の発言に俺は咳き込んでしまう。確かにさっきそうなればいいなと思ったが、まさかここでその発言が来るとは思っていなかった。
「あの……せん……姫香。意味わかってる?」
「えぇわかっているわよ。私こう見えて一途なのよね。他に彼とかいたらこんな風に男の人と2人で飲みに行かないよ。それに彼がいたら勇也君にあんなこと頼まないよ」
「そうだよね……ごめん」
酔いが醒めたかのようなハッキリとした物言いについ謝ってしまった。
「あっ、ごめん。なんか強く言い過ぎた。でも、本当だよ?」
俺は心の中でナナミに謝った。ごめん。このまま俺は先輩の処女をもらいます。
「疑うようなこと言ってごめん。じゃあ行こうか」
「うんっ」
俺たちは黙ってラブホ街を歩く。どこがいいのか俺には見当もつかない。学生の時は相手の家かもしくは部室だったから……
赤くいやらしく光るネオンの前で先輩が立ち止まる。
「ここにしよう?」
うつむきながら話す先輩の声は消え入りそうな程小さかった。
「うん、いこう」
部屋に入るとベッドとソファ、テレビ、大きな鏡があった。これは鏡を見て興奮するタイプの部屋のようだ。俺が部屋を見渡していると先輩が言った。
「汗かいて気持ち悪いから先にシャワー浴びるね」
「あっ、うん」
先輩は処女だというのに全く緊張していなのだろうか。それとも、緊張を隠すためにシャワーを浴びているのか。
シャワーの水温がやけに響いて想像してしまう。俺はテレビを見て落ち着こうと考えたが、それがまた失敗だった。画面いっぱいにモザイク処理がされていない男女の交わりのシーンが映し出され、とんでもない声が響いている。慌てて音量を下げようとしたら間違って上げていたようだ。どんどんとその声が大きくなっていく。やっとの思いで消えたと思ったら、先輩が悲しそうに笑っていた。
「勇也君、もしかして1人でしてたの?」
「いや、違います。テレビ見ようとしたらなんか違う画面出てきて」
「いやだよぉ。私でちゃんとしてくれないと」
シャンプーの匂いなのか髪の毛からは甘い匂いがするまま俺に抱き着いた。もちろん先輩はバスローブなので生乳がじかに俺の胸板に当たっている。
「あっ、あの……俺もシャワー浴びてきます」
俺は浴室に逃げるように入って行った。
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