第9話:抱くための練習

 早速俺はナナミの胸を触ろうとしたら、俺の手をぺチンと叩かれてしまった。


「ちょっと、本気? いきなり胸とかないわ。あり得ないわよ。まずは雰囲気作りからでしょ?」

「雰囲気ってどうすんだよ。そんなのラブホへ行けば十分雰囲気あるじゃないか」


「はぁ。これだから素人童貞君は」

「素人童貞じゃねぇよ」

「ならわかるでしょうよ。考えて」

 

 俺はオアズケを食らった犬のようにナナミの体を凝視しながら考える。やるんだよな。そうか、あれだ。


「キスか?」

「当たりよ。ちゃんとわかっているじゃない」

「でも、キスもいいのか?」

「キスはもともと課金なしよ。だって、全年齢版でもそれくらい普通でしょ?」

「まぁそうだけどさ。ナナミは嫌じゃないのか?」

「えっ?」


 ナナミは心底驚いたように、キョトンとした顔で俺を見た。なんか変なこと聞いてしまったのだろうか。


「何かおかしかったか?」

「いや、なんだろう。普通の人間みたいな扱いされたの久しぶりだったから驚いたってか……こんな状態だと、普通はアバターとか穴の開いた人形くらいにしかみんな思っていなくてすぐに、キスして課金してフィニッシュ迎えることが最近多かったから。なんか拍子抜けってか……なんかね」


「悪い。なんかまずかったなら謝る」

「違うのよ。嬉しい……ちがっ、びっくりしただけよ。早く始めるわよ」


「1つ確認なんだけど……」

「何よ」


「キスは濃厚なのもありなのか……?」

「くっ……そうね。あなたの優しさに免じて許してあげるわ」


 俺は課金ルールの仕組みがいまいちわからないがやったことがないので合っているのかどうかすらわからない。まぁ、濃厚なキスから胸までできるのなら、久々にやる俺にとってはありがたい。


「では、ナナミさんよろしくお願いします」

「ちょっと……なんでいきなり敬語なのよ。もうっ!!」


 ナナミはぷんすか怒っているが、顔が真っ赤になっていたのだった。それがまた可愛く見えた俺は自然とナナミに詰め寄りキスをした。


 ナナミの唇は思っていた以上に柔らかかった。じっくりと味わうつもりだったが久々の感触に俺はもう我慢できなかった。そのまま抱き合い、舌と舌をからませるようにしていく。


 ナナミは身をよじり始めたのでこれはお気に召したということで間違いないだろう。どんどんとナナミの顔が上気していくのがわかる。そのまま服の上から軽く触っていた。もっと鷲摑みにしてしまいたい衝動に駆られるがどこまでが課金対象になるのかわからない。俺は柔らかな膨らみの感触を遠慮気味に楽しみながら、それ以上進めないでいた。


「勇也ッ……もう少し……いいよっ」


 そんな潤いたっぷりな瞳で俺を見上げないでほしい。我慢できなくなりそうだ。でも、もう少しいいならありがたい。


 俺の鼻息は少し荒くなっていた。まだ裸にもなっていないのにこんなに興奮するなんて、マジで童貞と同じだなと自嘲的な笑いが出てしまう。


 再びし激しいキスをして、今度は襟ぐりの隙間から手を突っ込み、じかに触ることにした。ふわふわして気持ちいい。


 そういえば、俺の付き合った彼女って貧乳ばっかだった気がする。そんなことを思い出しながらも、手はピンポイントを探している。さらなる快感へのスイッチが見つかった。俺はそれを指で転がそうとしたとき、ナナミに変化が起きた。


「あっ……そこはだめぇつ」


 そう言っているが表情からして気持ちいいに違いない。俺はそのまま引掻くようにして転がせた。


「ダメッ。それっ。おかしくなっちゃうっ」

「もう少し練習に付き合ってくれ」

「い……やぁっ、それ以上、あぁ……だめぇっなっ……のっ!!」


 ナナミの声がもうR18バージョンのそれそのものである。ダメだ。俺のアソコもギンギンになっている。どうしよう。このまま続きをしたいが課金しろと言われるのだけは避けたかった俺は、ナナミから離れることにした。


 こういう小心者の自分が嫌になる。課金してもいいかもって思ってしまったが、なんだか自分のポリシーに反するような気がして肝心の1歩が踏み出せない自分に腹が立つ。


 ナナミは息絶え絶えなのか、呼吸を整えながら俺言った。


「なんでやめたの?」

「えっ……だってそれ以上はダメって課金っていう意味だろう?」

「勇也のバカっ、あんたなんかきらいっ!!」


パチン


 俺だって耐えたというのに、なぜ平手打ちを食らわされなければいけないのだろうか。頬を抑えつつ、ナナミはまたどこかに消えたので、そのままベッドで興奮を抑えるために眠ることにした。


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