第18話 コロシアム
オオォォォ!!
薄気味悪い声の様な音を響かせながら強風が吹く中、3人は辺りを見回すとまるで屋外野球場の様な円形の建設物内に居ることを確認した。
そこには推測ではあるが、自分達の他に何十万、いや何百万のプレイヤーが集まっている様に思えた。
こんな相当数の人が集まっても全然、狭さを感じさせないほどの巨大スケールな建設物だ。
他のプレイヤー達もこの事態を重く受け止めているみたいで、事前に準備をしてきたのであろう。
パーティ、ギルドごとに集まり作戦会議をしている様子が見受けられる。
(この中に葵や健達が居るのだろうか?)
そこらへんに居るプレイヤーを見るが、やはり見当たらないが目の前に居た彼女の存在に気付く。
「なんだよ?私が居たらダメなのか?」
「い、いや………レミシーも無事に転送されて安心しているところだよ。あはっ、あはははは………」
「私はレミシーが居てとても心強いですよ!」
明らかに俺が動揺してた事を知ってかアテナのフォローでとりあえず、この場は収めた。
(レミシーが一緒に転送された事は果たして本当に良かったのか、ただ彼女を不幸な目に合わせてしまうのではないだろうか。)
先の戦闘から巻き込んでおきながら、今更そのような事を考え、悩むレオは自然と表情に表れていたみたいだ。
それを読み取ったかのように彼女は「お前について来たのは私の意志だ。後悔なんてしてないよ!」と慰められてしまう。
「すまない!状況の急変で少し弱気になっていたようだ。変な心配させてしまった。」
(そうだ。俺が弱気になってどうする!俺がしっかりしないと………こんなマスターでは従えているアテナに顔向けできないじゃないか!)
自分に言い聞かせながら、先の戦闘後に座り込んでいた体を起こし立ち上がる。
ゴゴゴゴゴッ………
突然、雲行きが怪しくなり雷が鳴り響く。
「2人ともおでましだ………」
だが、その言葉の意味を知るのはアテナだけだった。
「おい?何がお出ましなんだ?これから何が起こるってんだ!?」
何がなんだか、まだ話しも聞かされていなかったレミシーはどうしていいかわからない。
「あ………」
「あ………じゃねぇよ!!まぁ、この状況からすれば大体予想は付くが連戦は正直きつい。HPやMPは先の戦闘で消費したままだ。」
「それならご安心を!!」と言わんばかりにレオはストレージを開き2人にポーションセットを渡す。さらに<身代わりのロザリー>も一つずつ渡した。
「後は状況に応じて渡すか、俺の回復弾で2人とも回復させる。いいか?これだけ人が多ければ、はぐれてしまうリスクももちろんある。その時は自分の命を優先しろ!絶対に死ぬなよ!?」
2人は頷き、レオから貰ったアイテムをストレージに入れる。
ますます、天候が崩れていき稲光が頻繁に現れ、嵐が直ぐそこまで来ているかのような荒々しい天候になってきた。
「あはははは!!みなさん、5日も待たせて本当に申し訳ない。しかし、今から私主催のお祭り「コロシアム」を開催しようではないか!」
突然の大声にプレイヤー達は驚き、何事かと声が聞こえる上空を見上げた。
何処から現れたのか、そこには少年?いや、魔王ミグラスがいた。
俺達をゴミの様に見下す目で「さて、この数は流石に多すぎるなぁ。とりあえず間引きをしなきゃね?」と言って宙に浮く椅子をストレージから取り出すと、座り込み指をパチンッ!と鳴らした。
ゴゴゴゴゴッ………
巨大地震が来たかの様に地面が揺れる。レオ達3人はこの揺れに覚えがあり、その場から壁の方へ急いで後退する。
レオ達3人はプレイヤーの間をすり抜けながら建設物の壁際へ向っている途中、見殺しには出来ないと、後方へ逃げるよう促しながら自分達は進んだ。
素直に聞き入れる者、事態を軽視し聞かない者、どうしていいかわからない者など居たがまず助かったのは素直に聞き入れる者だった。中にはギルドやパーティに有能な指揮者がメンバーを纏め上げ、その場を耐え抜こうと挑む団体もあった。
しかし、魔王ミグラスは俺達が思っていたイメージより、さらに残酷な状況へと仕向けていた。
地面から鋭利な刃の様な角が2本対となって突き上げてきた。
しかも、それが5組もあったため、辺りは人や地面の土の塊が一緒くたんに上空へ飛び上がる。
この初手攻撃は紛れも無く、ここに来る前、3人でようやく倒したアントリオンだ。
だが、レオ達が倒した時とは違い、角がまるで刀の様な刃物になっていることだ。
上空へ放り出された者達はその刀の様な角でスパスパと胴体、首、足、腕など体の到る所が切断されていき、大声で悲鳴や喘ぐ声が会場全体に響き渡り、血の雨が降り注ぐ。
レオ達はその地獄絵図の様な状況を見て、衝撃のあまり声がでない。
(は、はやく………はやく、助けなきゃ!一人でも多く助けなきゃ!!あれは………あれは、俺と同じリアルから来た人間達なんだよ!!)
自分に言い聞かせるが、会場の規模が大きいため、どこからどうすればいいか検討も付かない。
ハッ!と咄嗟に思いつく。
(そうだ。別に俺は移動しなくていいんだ。)
何も言わずレオは両手を左右の銃ホルダーを開け、銃を取る。
カチャ、カチャカチャカチャ………次々と両方の銃の魔水晶が緑色に変わって行く。
「レオ!何をしている!?一度にそんな装填すると!!」
俺にはレミシーが何を言っているのかわからなかった。
俺はただ、目の前の同胞達を助けたい一心で銃に魔弾を装填していく。
ドクンッ!!
「ぐっ………」
急に頭痛、眩暈、吐き気がレオ襲う。
「レオ!大丈夫ですか!?」
アテナは倒れこむレオを素早く抱え、肩を貸す。
「なんだこれ………」
「ほら、言わんこっちゃない!だから、止めようとしたのに………それはな、急性精神枯渇症だよ。簡単に言うとMP切れだ。精神力を鍛えてない奴が急に大量のMPを消費させると起こってしまう症状だ。」
「そ、そうだったのか………うぅっ!」
「なんでもいいからとりあえずMPポーション飲んでみろ!」
言われたとおり、ストレージからMPポーションを取り出し、飲んでみると体が青く発光し、MPが回復していくと同時に先ほどの体調不良が改善されていく。
レオはすぐに『オートポーション』設定にMPポーションを加えた。
そして、装填された魔弾で怪我をした者を助けようと構え撃とうとした瞬間………
『ホーリー・レンジ・ヒール!!』
雲に覆われ薄暗くなった天候の中、雲が裂け空から差し込む日差しが会場を照らす。
すると、倒れて居たプレイヤー達は回復していく。
が………中には回復しない者もいた。
何 者かによる回復魔法で回復した者達はみんなダメージを受けて居るが体の一部が切り落とされていない者達だけだ。切り落とされた者は出血多量やショックで既にもう亡くなっていた。
「レミシー!アテナ!この世界に蘇生魔法はあるのか!?」
その言葉に2人とも頭を横に振るところを見ると、蘇生自体無いに等しい。
マキアの村長が死んだ際もそうだ。あの時は大魔道士のフォリス婆がその場に居たにしろ、そんな言葉は一つも出ては来なかった。
「死んだら終わり」それはわかっている。わかっていたはずだ………だが、心のどこかではまだ信じていない自分が居た。
それを悉ことごとく打ち砕かれる状況が今、レオの目の前に広がっている。
そして、今まで嗅いだ事の無い血の生臭さに込み上げてくるものを感じる。
この状況でモンスターと戦うなど、想像していただろうか………気にせず動けば誰かの体の一部を踏んでしまいそうなくらい、辺りにはゴロゴロと転がっている。
出来れば踏みたくない。だが、それを気にしていると行動が制限され、上手く立ち回るのが難しくなる。
だが、たた見ているだけではこの事態は収束できない。
そのもどかしさとこの状況にレオは苛立ちを隠せない。
「はい、は~い!意外と死んだねぇ!?それ邪魔でしょ?今回収するからね!」
魔王ミグラスはこの状況を見て、新たに小さなモンスターを召喚させた。
耳が細長く、目も釣りあがって鋭く深緑色の体をしている。
その名はゴブリンだ。奴等は背中に竹で編み込んだような大きな籠を背負わされており、まるで運動会の競争種目の様に死体をすばやく回収していく。
「やめろ………やめろぉぉぉぉ!!」
同胞の亡骸を粗末に扱う光景を目の当たりにしたレオは我慢の限界に達した。
先ほどの装填した回復弾を『リムーバル』で取り外し、新たに魔弾を装填し始める。
また、レオだけでは無くレミシーやアテナを始め他のプレイヤー達もこの光景に怒り心頭しゴブリン達に攻撃を仕掛ける。
だが、そこにはゴブリンだけが居るわけではない。その事を忘れた者達はアントリオンの攻撃により先ほどの二の舞の様に空に舞い上がり地面に付くまでにはバラバラになってしまった。
「レミシー!アテナ!準備はいいか?目の前の敵から蹴散らすぞ!!」
今まで見たこと無い様な怒り満ちた表情のレオだが、意外と冷静に判断している。
ゴブリンはモンスターの中でも最弱である為、レオのレベルであれば1確出来る。
装填した魔弾を使わず、無属性の魔力弾で近場に居る奴から倒していく。
そして、レミシーとアテナ2人が武器を構えると二つの銃で2人の武器に属性付与弾エンチャントバレットを打ち込み炎属性へと付与させた。
2人は先の戦闘で攻撃パターンや立ち回り方がわかっており、レオが指示しなくても互いに意思疎通しながら攻撃をしかける。
レオもスピードアップポーションを飲み、攻撃速度を上げゴブリン達を打ち込むが数が数なだけに、なかなか減らない。
「くそっ!数が多すぎる!!」
だが、同胞の亡骸はきちんと供養してあげたいと思うレオは尚更、自作ポーションでドーピングしステータスや攻撃速度を上げていく。
ドオォォォン!!
突如、大きな音と共にコロシアム会場の壁が破壊され崩れ落ちる。
そして、土煙が上がる中から前進してくる人影が見えてきた。
「プロヴィデンス王国騎士団長ピース・ティーチオが助太刀に参った!!」
おそらく、プレイヤーの誰かが国王に言ったのであろう。
騎士団が助けに来てくれたのはありがたいが、冒険者と騎士団の実力差はいかがなものか?
余計に亡骸が増えるのでは無いのだろうか?と頭の中に過ぎるレオであった。
団長の合図と共に一斉に騎士団はコロシアム内へ攻め込む。
しかも、よく見ると騎士団の後ろには魔術師ギルドとプリースト隊が控えていた。
多分、先ほどの範囲回復魔法はプリースト隊によるものだろう。
「騎士団!突入せよ!!」
騎士団長が施設内へ指を挿し、掛け声を掛けると「おぉぉ!!」と大きな声と共に騎士団員達は突入を開始した。
施設内へ入ると、次々とゴブリン達を薙ぎ払い、アントリオンの方へと向っていく。
「ほう、部外者か………まぁいい、あいつ等はどの程度か知るのに丁度良い。さて、見物させてもらうかな!」
魔王ミグラスは依然と余裕を見せ、座っている椅子から立ち上がろうとはしない。
すると、魔王ミグラスの元へフードを深々と被り布コートを羽織った8人の者達が集結する。
「ようやくきたか。調整の方はどうだ?」
「はっ!今もまだ調整中ではございますが、数時間ならいけるかと………」
「そうか、なかなかしぶといな。まぁ、今回はお披露目みたいなもんだ。数時間もあれば大丈夫だろう。もし、万が一何かあればお前達が回収し撤退しろ。」
「かしこまりました。」
覆面8人の中のリーダー的存在の1人が魔王ミグラスと意味深な事を話し合っていた。
レオ達はその事を気にするどころか、それよりも今の状況を打破するのに必死な為。全く気付かない。
騎士団達はアントリオンの攻撃を受けながら敵を引き付けている隙に、魔術師隊が詠唱し炎属性の魔法で攻撃する。その間に傷ついた者が居ればプリースト隊が回復魔法で怪我人を癒していく。
その光景はレオ達、冒険者達よりもスムーズな連携が取れ効率良くモンスターの討伐をこなしていく。
「王国の騎士団ってここまで凄いのか!?」
レオは本ゲームのスタート地点が僻地だった為、首都プロヴィデンス王国の騎士団達の強さなど知る由も無く、目の前で繰り広げられている戦闘に釘付けになる。
これなら楽勝だ!やれる!!誰もがそう思えるくらい、騎士団長の指揮は的確で怪我人を最小限に抑えながら、空いたスポットを補うよう指示し戦っている。
「ほう!これは中々やるなぁ!下手な冒険者より有能じゃないか。じゃぁ、もう少し間引くか。その方が適度に難易度が上がって面白いだろう?」
魔王ミグラスは右手におぞましい程の魔力を集中させ、魔法を放つ。
『クライム・オブ・ザ・ウィーク!!』
「レベル60だ!」
右手に浮かんでいる魔力を込めた黒い球体を静かに下へ落下させると、まるで水に油を垂らした時の様に、施設上空に薄い膜を張るかの如く広がっていく。
するとレベル60に満たない冒険者や騎士団達が次々と倒れていった。
プリースト隊は急いで回復魔法を施すが効果がみられない。
それは即死効果魔法だからなのか、それとも回復魔法を無効する術なのかは定かではない。
今の攻撃により施設内に生き残っている者は当初の約2割程度の人数にまで減少してしまった。
先ほど、奮闘していた騎士団も半数までは行かないが、騎士、魔術師、プリースト隊においても結構な数を失った。
騎士団長ピース・ティーチオは騎士達の士気を下げまいと自ら先陣を切り、奮闘し部下達の士気の低下を抑えている。
だが、団長一人ではそう長くは続かない。レオ達は騎士団と共闘する事にし、前線で戦う騎士達のグループに加わることにした。
前線で戦う者達を支えるかの様にプリースト隊の指揮官であろう聖女っぽい人物が支援魔法を掛ける。
丁寧な支援魔法の心地よさにピース・ティーチオは直ぐに誰が自分に掛けたか、すぐにわかった。
「ありがとう!レイラ!!さすがは我が婚約者フィアンセの妹だ!」
と自慢そうに礼を言うと彼女は無言で深々とお辞儀をする。彼はそれを見て満足そうな表情で再度モンスターに向っていく。
だがこの時、レオは聞き間違いかと思うくらい小さな音を拾った。
「………チッ………」
確かに、誰かが舌打ちしたような音だった。辺りを見渡すが、その様な事をやる者は見当たらない。目に入ってくるのは皆、真剣に戦闘している姿だった。
騎士団達はあちらこちらに居るゴブリン達を切り倒していく。
そして亡くなった冒険者や王国兵の亡骸はプリースト隊が丁寧に回収し、祈りを奉げ浄化させていく。
浄化せず一定時間放置しておくと、どんな亡骸もこの世界の瘴気に侵されアンデットモンスターに変わってしまうからだ。
その為、ゴブリンが回収し籠の中に入っている亡骸も早々に回収しなければならない。
中には既に数体、アンデット化した者達が動き出している。
いくらアンデット化したからと言っても元は冒険者でレオと同じ現実世界から来た人間だ。
それを倒すなどやはり抵抗がある。
そして、一番の問題があの刀の様な角を2本持っているアントリオンだ。
奴等を討伐する為に騎士団長のピース・ティーチオが独自に指示しパーティ編成をはじめる、騎士団長とレオ達3人、プリースト隊はレイラを含む3人、魔術師隊から4人はアントリオン討伐へ、残りの者はゴブリン討伐、亡骸回収&浄化へと編成された。
レオは騎士団長のピース・ティーチオにここへ来る前、アントリオンと戦っていたこと話し、今回の討伐作戦への参考にしてもらうことにした。
だが、5匹同時にはこのメンバーでも厳しい為、編成されたメンバーの中でも更に2チームに編成した。
Aチームは騎士団長、レイラ、プリースト1人、魔術師2人
Bチームはレオ、アテナ、レミシー、プリースト2人、魔術師2人
となった。
「では作戦を開始する!散開!!」
騎士団長ピース・ティーチオの発声で作戦が開始された。
両チームのプリースト達はチーム内へ支援魔法を付与させる。尚且つレオ、アテナ、レミシーの3人はレオ特製ポーションで攻撃速度、防御力、攻撃力をさらに上げる。
「俺達は先の戦闘と同じパターンで1度試してみるぞ!」
レオの掛け声と共にアテナは『ヘイトブースト』と『ダメージアブソーブ』を使用し、レオはスクロールで『フレイムウォール』を使う。魔術師に頼んで『フレイムウォール』を使ってもらえばいいんだが、彼らは魔法が本業な為、威力もレオとは比べ物にならないくらい強い。
なので、ヘイト値を恐れなければならないため、まずはレオが先制する。
ゴゴゴゴゴ………
「よし!出てくるぞ!!魔術師の方達は『フレイムランス』でモンスターの腹部を狙ってくれ!アテナとレミシーも追撃頼む!」
レオは先程の付与から時間がある程度経過している事が気になり、念の為に彼女達の武器へ再度、魔弾を打ち込み属性付与を施した。
『フレイムウォール』で地面温度が上昇した為、熱すぎてアントリオンが外へと飛び出してきた。
即座に、魔法をスタンバイしていた魔術師が1人ずつ『フレイムランス』を2発同時に撃つ。
流石は王国の宮廷魔術師ギルドに所属しているだけあって、魔術師達は予め自分達に『ダブル魔法』のスキルをかけていたのだ。
その後に続き、アテナ、レミシーも追撃をし、一気にダメージを与える。
攻撃を受けたアントリオンは地下へ戻り回復するどころか、地上の着地地点には既に魔術師の魔法『フレイムフロア』により、燃え盛る火炎の絨毯となっていた。
敵はそのまま、その中へ落下し火炎にまかれもがき苦しんでいる。
そこから見る大きさは先の戦闘で倒したアントリオンとほぼ変わらないが、容姿は先ほどの奴とは違い、妙に黒光りをしている。
念の為、レオはプリーストに敵のステータスが見られる魔法を使ってもらった。
すると………
メタルクローLv120
HP 5,000,000
MP 1,250,000
ATK 600,000
DEF 500,000
MDEF 25,000
SPD 90,000
とAチーム、Bチームに開示される。
「やはり、MDEFは通常のアントリオン同様に低い。これなら何とかなりそうだな!」とレオは自分の作戦に自信が持てた。だが、怪しく黒光りする肌は一体何を意味するのか………
(このパターン、なんかお約束って感じだよな………)
レオはゲームイベントのお約束的な感じでフラグが立っている事を気にしていた。
一方、端から見ていた他のプレイヤー達も騎士団長とレオ達が奮闘する姿に触発され、我もと敵に攻撃を仕掛ける。
「よし!我らも続くぞ!!NPCと錬金術士ごときに手柄を獲られるな!」
威勢よく指揮を取るのはギルド「ローランドホープ」のリーダー、ネネリ・ラニクスだ。
彼女が束ねるギルドのメンバーは現在10人で精鋭揃いではあるが、その内の3人は魔王ミグラスが放ったスキルにより亡くなり現在は7名となっている。
ネネリを含む5人は皆、3桁のレベルに達していて現状ではランキング1位のギルドであろう。
そのメンバーの1人がレオ達の戦いを見て興奮し、今にも飛び出して行きそうな奴がネネリに許可を強請る。
「リーダー!?アレ使ってもいいか?アイツら見ていると俺も体が疼いちまってよ………」
「しょうがない奴だなお前は………許可しよう。だが、ギルメンだけは殺すなよ?」
「ってことは、他のプレイヤーは?」
「かまわん!私には関係ない。」
「ははははっ!!ありがてぇぜ!!」
『モード・バーサーカー!!』
「うおぉぉぉ!!」
スキルを使うと体の筋肉が膨れ上がり血管も浮き出し、目は赤く発色し、興奮状態も最高潮のあまり息遣いが荒くなった。
「アグァァァ!!」
もはや人間とは思えない程の豹変を遂げた彼はランディ・ルーカスLv105のグラディエーターだ。
準備が整い地面に砂埃が舞ったと思うとそこにはもう彼の姿は無く、メタルクローに向って突進していた。
その光景を見ていたアークウィザードLv100のファリン・ブリッドは呆れて呟く。
「あーあ、あいつまた1人で行っちゃった………」
「まぁ、今に始まったことじゃない。いつものことだ………さぁ!私達もランディの後を追うぞ!」
「陣形だが、マキシー!先頭を頼む。次にファリン、きなこで左翼にマフィン、右翼にパンジー、バックポジションに私が付く。この広い戦場じゃ、どこから攻撃が来るかわからないからな。」
ギルメンが声を揃え「了解!」と返事をし、プリーストLv110のきなこは全員に支援魔法を掛けていく。
「あ、あの………くれぐれも気をつけてくださいね?」
「大丈夫だよぉ!きなこは私が守るからぁ~!とりあえず私から離れないでね!」
とファリンはきなこに抱きつき、不安を取り除こうとする。
ネネリは準備をしているパラディンLv125のマキシー・オルトランに声を掛ける。
「マキシー、状況によってはアレを使わせるかもしれないが大丈夫か?」
「んぁ?ネネリ、誰に聞いてんだよ?パラディンの俺が仲間守らなくてどうするよ?全然、問題ない!大丈夫だ。」
「それならいいが………」
「なぁに、その時はきなこ!お前のヒール頼むぞ!?」
「は、はい!!?」
突然、話が振られなんの事がわからないが、きなこはとりあえず返事をした。
その円満な雰囲気を味わうかのように、ネネリはほんのひと時笑顔になる。
だが、魔王ミグラスによって殺された3人の恨みは忘れてはいない。
優雅に宙に浮いて見下すようにこの状況を見ている魔王ミグラスを嶮しい顔で睨みつける。
「お前だけは必ず私が!!」
そう想う気持ちを胸に秘め、今は目の前の敵を殲滅する事に専念する。
「よし!いくぞ!!」
ネネリ達は陣形を維持しランディの後を追う。
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