第15話 専用武器

「変な事を聞いてしまいすまない。ただちょっと気になる事があってな………」

「なんもだ!まぁ、人それぞれ色々な事があるしな!?」


レミシーはあまり気にしていない様子だった。

それよりも、武器製造の事で頭が一杯みだいだ。


「さて、おしゃべりはこのくらいにして、そろそろ本題に入っていいか?」

「あぁ、長く喋りすぎた。では、この武器を作ってくれ。」


レオはレミシーに先ほど手に取った銃を作って欲しいと頼む。

しかし、レミシーは顔を横に振った。


「それは出来ない。作るのはレオ自身だからな!」


その言葉を聞いたレオは唖然とする。


「いや、ちょっと待って!!意味が全然わからないんだけど!?」


焦るレオを見て、レミシーはわかりやすく答える。


「まぁ、武器を実際に作るのは私だ。ただその段取りをするのがお前の仕事なんだよ。レオ、一つ聞くが恥ると知っていても真剣にできるか?」


レミシーのその問いの真意があまり出来ていないレオは気軽に答えた。


「あぁ!そんなの全然大丈夫だ!」


その言葉を聞いたレミシーの弟子達は「おぉぉぉ!!」歓声をあげ、レミシーの目つきが職人の目へと一気に変わった。


「おし!!お前の意思は受け取った。自分から言った事に嘘はつくなよ?弟子達よ!今の言葉、しかと聞いたな!?では、私はこれから武器製造に入る。各自、手順の段取りをしてくれ!!」


レミシーの指示が出ると弟子達はバタバタと急ぎ、段取りを汲む。

しかも何故か木兵がやたらと準備されている。


「レオ、その銃であの木兵を撃っていってくれ。」

「は!?これで?だってこれ木製の模型だろ?」

「いいから、言われたとおりにしろ!!」


さっきのレミシーとは違い、口調も荒く別人と変わっていた。

あまりの気迫にレオは押され、木製の銃で木兵を撃つマネをした。


「バカヤロウ!ちがう!!声を出して撃て!!」


まるで体育会系の熱血監督並みに怒鳴る。


「こ、声って………」


言われるがままにレオは子供が銃のおもちゃで遊ぶように「バン!バン!」と声に出して木兵を目標に撃つ。


(うわぁ、なにこれ………いい年して「バン!バン!」って………恥ずかしいにも程がある。)


内心、引き気味で適当にやっていればと思い。正直手抜きで演技していた。

 すると突然、片手剣が飛んできた。

レオは運動神経がいい方な為、なんとか交わした。

 それを見たアテナも「レミシーあれはいくらなんでもやりすぎじゃ?」と忠告するが、レミシーは依然と態度を変えない。「あれじゃダメなんだ………もっと本気のアイツの戦い方を見ないと………」その言葉を聞いたアテナは理解し、「レオ!もっと真剣にやってください!もっとこう………なんていうか集中して!!」そのアテナの言葉にレミシーは少し笑顔になる。それを見たアテナも笑顔で返す。

 レオはなんで俺だけこんな目にあっているのか、未だにわかっていない。

しかし、アテナに言われては真剣にやらない訳にはいかない。

再び木製模型の銃で声を出して木兵を撃つ。


―――どのくらい時間が経っただろうか、レオもだいぶ疲れが見え初めて来た。


それでも尚、スパルタなレミシーは大声でレオに渇を入れる。


「おらぁ!!そんなんでバテてるんじゃねぇぞ!?まだだぁ!気合入れろぉぉ!!」


レミシーもだいぶ熱が入ってきた。言われてばかりのレオも流石にカチンと気だし、これでもかと言うくらい大きな声を出し、機敏に動き木兵を撃つ振りをしている。

 すると、徐々に変化が見えてきた。先ほどまでなんでもなかった木製模型の銃が青白く発光している。その事にレオは気付いていないがレミシーはそれを見てニヤッと笑う。

そして、弟子にアイコンタクトをし、木兵の数を増やすよう促した。

段々と余裕が無くなって来たレオはさら集中力が高まり、「バン!バン!」と声に出して言っていたがいつの間にか言わなくなっていた。


その時、「パンッ!!」と発砲の音と共に木兵が打ち砕けた。

しかし、レオはそれに気付いていない。それはスポーツ選手とかが稀に超集中状態に入るゾーンにレオはいつの間にか入っていた。


「パンッ!パンパンッ!!」


木兵が次々を粉々になる。

それを見たレミシーは「これだよ!これ!!これが見たかったんだ!!!」と目を輝かせていた。


「レミシー!?これはどういうこと………?」


アテナはレオが使用している木製模型の銃から急に発砲した事に驚き、レミシー問い質す。


「なぁに、心配ないよ。これは本来の姿なんだから!本来、私達、魔工鍛冶士マテリアルスミスの作る武器は鍛冶士ブラックスミスとは違い、魔力を注ぎ込み造り立てる。その為、武器本来の力を発揮するには今、レオがしている様に無意識で魔力を武器に注いで攻撃できるようにならないと話しにならいのさ………だから、武器を作る前段階としてレオにやらせていたって訳だ。しかも、私達の武器は誰でも使えるって訳でもない。MPが少ない職業や冒険者が使うとすぐに枯渇してしまう。だからINTやMPが高いヤツじゃないと無理なのさ。」

「そうだったのですか………」


アテナはその意味を知った上で改めてレオが無意識に魔工武器マテリアルウェポンを使いこなしている姿を見て嬉しさのあまり笑みがこぼれる。

 そしてレミシーは近くに居た弟子に「おい!ペンとスケッチブックを持って来い!!」と命令し、急ぎで持ってこさせた。

レミシーはペンとスケッチブックを受け取るなり、すぐにレオの戦闘を見ながら武器のイラストを書いていく。


「いいねぇ!すごくいいよ!!」


そして、スケッチしている時、レミシーはある事を思いついた。

即座に先ほどの木箱に手をかけ、物を掻き分けて、もう一つの銃を取り出した。


「レオ!これも使え!!」


レミシーはレオに向ってもう一つの木製模型の銃を投げると、無言で受け取り二丁の銃で木兵を撃つ。


「パパパン!パパパパパンッ!!」


レミシーの予想は的中し、その姿を見て感激している。


「おぉ!二丁拳銃もいけるか!?これは面白い!!良い!!実に良い!イメージが………イメージが沸いて来るぞ!!」とレミシーは盛り上がりスケッチブックにペンを走らせる。


これはレオ専用の凄い武器が作り出せるのでは?とアテナも心を躍らせながら見守る。


「よし!出来た!!レオ!!もう終わっていいぞ!」


書き終えたレミシーがレオに終了の合図を出した。

それを見たレオは「ふぅ………」と一息つき、その場に座り込んだ。


「もう無理………疲れたぁぁぁ!!」とその場で大の字に仰向けになって倒れた。

「レオ、お疲れ様です。頑張りましたね!」とアテナは笑顔で水を持ってきてレオに渡す。

レオは一気に水を飲み干す。


「はぁ~、アテナありがとう!」と礼をすると彼女はニコッと笑顔で返す。


反則だ………レオは彼女の笑顔に見惚れてしまった。

こんな心も体も疲弊している時に、こんな綺麗な女性が優しく笑顔で返すとか男なら誰でも惚れてしまうだろう。


「おし!!後は私の出番だ!レオとアテナは武器が出来上がるまで休んでいてくれ!出来上がるまで1日程かかるが問題ないか?」


その言葉でレオは一気に現実へ戻される。


(ったく、少しは空気読めよな………)


内心、苛立っていたレオは少しキツイ口調で答える。


「まぁ、1日なら大丈夫だ!よろしく頼む。」


武器製造をレミシーに託し、アテナとレオは店を見て回ろうとその場を後にしようとした時だった。


「あぁぁぁぁ!!!」


レミシーの悲鳴が工場全体に響き渡る。

弟子やレオ達が彼女の方を振り向いた。


「無い!魔鉱石がないぃぃぃぃ!!」


どうやら武器に使用する魔鉱石の在庫を切らしていたらしい。


「くそ!!どうする………?今から鉱山に入ったとしても質の良い魔鉱石を見つけるのには早くて2~3日かかる………」


その事を聞いたレオは「はぁ~、次は原料かよ………2~3日かかってしまうならコロシアムまでに間に合わない………何か手は………!!!?」と少し面倒臭そうに考えているとある事を思い出した。


「ちょっと待てよ!?確か………まだ20万円分が………」と呟きながらステータス画面を開き、メニューを出しショップの項目を押した。


すると確かに最初課金した残りの20万円分のポイントが入ったままだった。

しかし、ポイントがあっても今はもう色々と状況が変わりゲームと同様に課金ショップやガチャが使えるのかは不明だ。


「こうなりゃ一か八かだ!」とレオはガチャの項目を押す。


すると各職業のガチャ選択画面へと移動した。


「レミシー!原料は魔鉱石じゃないとダメなのか?」

「いや、基本的には鉱石で十分だ。ただ魔鉱石を使えば性能が上になるがな。」


レオは職業別ガチャの鍛冶士ブラックスミスを選んだ。そして提供割合と排出アイテム一覧を見る。


「URは5%か、まずまずな確率だな。しかも、まだ確率優遇されていて助かった。あとは排出アイテムだが………<UR 魔鉱石クリムゾンダイト><UR 鉱石アダマンタイト>UR鉱石はこの2種か………果たしてこのどちらかが出てくれるかだな………でも魔鉱石の方が出てくれるとありがたい。後はこのガチャが果たして出来るかどうかだ………」


レオは課金ガチャが出来る事を願い、ボタンを押した。

すると、目の前に時空の歪みみたいな空間ができ、そこからジェシカが出てきた。


「お久しぶりです。レオ様!少々お待ちを!」と言い、空間の歪みの中から何かを一生懸命に引っ張りだそうと頑張っている。


「んん~!!よいしょっとぉ!!」


ドスンッ!!


なんと、ジェシカが頑張って空間の歪みから引っ張り出したのは課金ガチャマシーンだった。


「今回は鍛冶士ブラックスミスガチャを選択していましたが間違いないですか?」

「あぁ!大丈夫だ。」


ジェシカは改めて間違いが無いか確認した。

突然の出来事に辺りは騒然とする。


「レオ!?これは一体なんですか?」


アテナはいつでも戦闘出来るよう構え、警戒しながらレオに聞く。

周りにいたドワーフ族達もその場にある武器になりそうなものを手に取り、構えて警戒している。


「みんな!これは大丈夫だ!危険なものじゃないんだ!武器を下ろしてくれ!!これは俺が呼び出したものなんだ。」


ジェシカは辺りが殺伐とし、皆武器を持ち怖い顔をしてこちらを見ている為、涙目で怯えている。


「あ、あの………私は怪しい者じゃ………」


そうは言うが、時空の歪みから突然現れて怪しい者じゃないと言っても誰も信じないだろう。

アテナを含め、周りに居た者達はレオの言う事を聞き、武器を下ろした。


「信じてくれてありがとう!これは課金ガチャと言う物なんだ。」

「課金?ガチャ………ですか?」


アテナは聞きなれない言葉に少し動揺する。


「まぁ、ちょっと1回試しにやってみるから、そこで見といて。」


レオが早速、ガチャマシーンのレバーに手を掛け、勢い良くレバーを下へ振り下ろした。

するとマシーンの下の穴から10個の玉が出てくる。

 それが弾け、アイテムが出てくる様を見た者達は「こ、これは………??アイテムが次々と現れたぞ?もしかして………神の力なのか?」

初めてガチャを見た為、色々な反応している者達を見てレオはニヤッする。


「ほら次々と行くよぉ!?」


レオは次々とレバーを引く。その度にアイテムが次々と現れる。

ガチャの結果は以下の通り

<SR金の金槌×5><SR銀の金敷×5><SR玉鋼×8>

<R石炭×2><R魔鉱石×10><R鋼鉱石×10>


「か………神の力だ………こんなに沢山のアイテムを瞬時に出現させるなんて、神の力意外ありえない!!?」と周りの者は勝手に盛り上がる。


(まぁ、実際は神の力ってより金の力なんだけど………この際、なんでもいいか!)


レオは久々のガチャを堪能できて、満たされる気持ちはあるが結果が見ての通り無残な為、イラ立ちが抑えきれない。


「くそぉ!久しぶりにガチャが出来たのはいいんだが、中々URがでねぇ………ヒキ弱だなぁ………」


(このままじゃURが出ずに終わってしまう。何か流れを変えるには………そうだ!!)

何か思いついたのか、レオは2人を呼んだ。


「アテナ!レミシー!ちょっと来てくれ!!」2人をガチャマシーンの前まで呼ぶ。

「さぁ、君達、10連ずつ引いてくれ!!」


その言葉に2人は「えぇぇ!?」と突然の事で焦る。

それでもレオは「まぁ、いいから、いいから♪」と2人の背中を押し、強制的にレバーの位置まで誘導する。


「あぁ!わかったよ!引けばいいんだろ!?じゃぁ、私から引くわ!」


レミシーは面倒臭そうにレバーを引いた。

すると、玉が次々と出てきた中に虹色の玉が2つ出てきた。


「おぉぉぉ!!でかしたレミシー!!」


1人興奮するレオはレミシーの肩をバンバンと叩きながら喜んだ。


「いってぇなぁ!やめろっての!」


不機嫌そうにレミシーはレオの手を跳ね除ける。

そんな事をやっている間に玉が次々と弾けアイテムが現れる。

結果は以下の通り

<URグラビティアックス×1><UR鉱石アダマンタイト×1>

<SSR魔工の金敷×1><SR金の金槌×2>

<R石炭×5>


「おぉ!!でた………UR鉱石アダマンタイト!」


レミシーは目を輝かせ恐る恐る手で触れる。

それもそのはず鉱石アダマンタイトや魔鉱石クリムゾンダイトは本来、神話クラスの鉱石な為、滅多にお目にかかれないからだ。

だが、レオは<UR鉱石アダマンタイト>で満足するなんて、そんな妥協はしたくなはい!


「まだだ………ガチャはまだ引ける!!まだ魔鉱石クリムゾンダイトを狙える!………さぁ!アテナ引くんだ!!」


アテナはレオの気持ちが入り過ぎている姿を見て、重く感じながらも目を瞑りレバーを引く。

すると玉の中に1つ虹色があった。

結果は以下の通り

<UR魔鉱石クリムゾンダイト×1><SSR魔工の金敷×2>

<SSR魔鉱石の金槌×2><SRパワードグローブ×1>

<SR玉鋼×3><R鋼鉱石×1>


「おっしゃぁぁぁぁ!!!きたぁぁぁ!!!」


レオは鍛冶場全体に響き渡るくらいの大声で歓喜を表した。


「よくやったアテナ!アテナならやってくれると思ったよぉ!!」と激しく喜ぶレオの姿にアテナは笑みが零れるが内心(もう引きたくない………)と感じていた。

レオは<UR魔鉱石クリムゾンダイト>をレミシーに渡す。


「これで、最高の武器が作れる!あ、それと………この武器はどうする?」とレミシーが武器<URグラビティアックス>を手に取り、レオに聞いてきた。


するとレオは何も気にせず「その武器、俺が持っていても装備できないしレミシーにプレゼントするから使いなよ!」とレミシーにあげた。

 その言葉にアテナとレオ以外の周りに居た者達は騒然とした。

レミシーは思わず赤面するが、レオは全く持って赤面する意味がわからない。


「わ、わたしに………本当にいいのか?」とモジモジしながらレオに確認を取る。

「どうしたレミシー?顔が赤いぞ?大丈夫か?」

「それは…その………う、うん………あ、ありがとう………」


いつもの勝気なレミシーとは違い、急に乙女になった様な様子でレオからプレゼントされた武器を受け取る。というのも彼女は普段、勝気な性格な上に族長をしている為か異性からプレゼントを貰うとか、デートに誘われる等と言った経験は全く無いため、そのような免疫は備えていないからだ。

しかし、レミシーにプレゼントした場面を見た者達はレオに称賛した。


「お前やったなぁ!」

「おぉぉぉ!!!あのレミシー姐さんにプレゼント!!?」


あちらこちらから声が上がって来る。そしてこの事はあっという間に里全体に広がってしまった。


「はぁ、たかが武器を渡しただけで………なんでこんな騒ぎになるんだよ!!」


(そういや、現実世界リアルでも似たような事は多々あったっけ………今となっては懐かしく感じるな………)


レオは現実世界リアルの事を思い出し、今の状況と擦り合わせ面倒事ではあるが、懐かしく感じていた。

レオはアテナがこちらをジーっと見ているのに気が付き「アテナ、どうした?」と声を掛けた。


「あ!い、いえ!!なんでもないです!なんでも………」


(でも、なんだろう。この感じ………)


アテナは慌てて自分の気持ちを抑え、なんでもないと誤魔化すが、本当はレオがレミシーに武器をプレゼントしてた様子を見て、自分の胸の辺りがモヤモヤする感じを覚えていた。この感じが何なのか初めての事だった為、どうしていいかわからずレオの方を見つめていたのだ。

 一方でレミシーは「レオって実は私の事………」と勝手に思い込み自分の妄想に入ってしまう。

そして、レミシーは自分の勝手な思い込みを真に受け、レオ専用の武器製造に気持ちが入る。

 レオはそれを見て(レミシーってこういうタイプだったのか………)と面倒なキャラだと認識した。彼女の目は真剣で武器の製造にしか視野に入らない程の集中力で打ち込んでいる。

そんな姿を見ると「ただ自分には必要なかった武器だからプレゼントしただけで深い意味は無い。」とは言い出せなかった。

 レオはアテナに対し顔を横に振り、彼女の誤解を解く事は出来なかったことを伝え、2人はそのまま鍛冶場を後にした。

とりあえず、2人は期日が迫るコロシアムに対して準備を整えようと、ドワーフの里の店で色々と必要なものを調達する。

 その中でレオはアイテムショップにてパーティ用アイテム<結束の印>と言うペンダントを8個購入した。このゲームの1パーティは最大8名と人数が多い。それは1パーティで4名ずつの小隊を作れる事にあるからだ。例えばボス戦やクエスト等で2パーティで行なったほうがいい場合は即席ではあるが2小隊に編隊し進行できる。

 また、<結束の印>とはパーティ作成者が加入させたい者へ渡し、その者が受け取り装備するかストレージに入れると効果が発揮される。

その効果はパーティに自動加入され、ステータス能力が全て10%向上すると言う内容だ。

 パーティ自体はアイテムが無くても、その作成者がリーダーとして全て権限がある為、加入・退出は自由に出来る。

しかし、このアイテムでステータス能力10%向上は正直かなりお徳だ。その為、大抵の人はこのアイテムを購入し、パーティを作成する事が多い。

その後、レオはある程度アイテムを作っておこうと思いアテナと別れ、与えられた自分の休憩部屋に篭り、ひたすら製薬作成を行い続け、それは深夜まで続いた。


――――コロシアムまで後2日


レオはふと気付くと周りを見渡す。

部屋中に製薬に使う道具が飛散し、自分が寝落ちしていた事に気が付く。


「あぁ、MP切れでそのまま寝落ちしてしまったのか………」


だが、マジックストレージを開くときちんと作成したアイテムがずらりと陳列されていた。


「おし!これだけあれば多分、凌げるだろう………」


レオはアイテムを確認した後、レミシーの事が気になり様子を見に鍛冶場へ向う。


カンカンッカンッ!


鍛冶場が近くなるにつれ、鉱石を叩く音が大きく響いてくる。

レオは邪魔しないようにとこっそり顔を出し、作業の様子を伺う。

すると、レミシーは弟子達に指示を出しながらも重要な作業は自分で行ない、絶対失敗しないよう慎重に行なっていて、銃を作るのにかなりの大作業になっていた。

しかも、レミシーは昨日の作業開始から不眠不休でレオ専用の武器を作成している。

そんな一生懸命に作業をしているレミシーの姿を見て、レオは益々言いづらくなってしまった。


(俺の専用武器の為にあんなに頑張って作ってくれているのに俺はここで何をしている?誤解を解くのが先決かもしれないが、それよりも他にやるべき事があるんじゃないか?)と自分を問い質していると、ポンポンと肩叩かれ振り向くとそこにアテナが立っていた。


「おはようございます。やっぱり作業が気になって見に来ていましたか。実は私も気になって見に来てしまったんですよ!」と笑顔で話す。


レオは彼女を見て、先ほど思っていた自分の気持ちに覚悟を決め、真剣な表情で「アテナ頼みがある!突然ですまないが俺に特訓をしてくれ!!」と頼む。


「はっ!?え!?今!?てか、なんで急に!?」と突然すぎる事でアテナは動揺を隠し切れない。


だが、レオは「頼む!!」と言って譲らない。


――――それは今までの戦闘を思い返してみると、レオは誰かしらに頼っていた事に気付く。しかも、コロシアムまで後2日と迫り、自分なりにも準備をしておかないといけないと焦りを感じてきていた。そんな中、レミシーが昨日から徹夜で自分の武器を作ってくれている姿を見て、自分は何もしていない、出来ていないと無力さに嫌気を刺したからだ。

だから尚更、(自分で何とかしたい!お荷物は御免だ!)と強く思う気持ちもあり、アテナに急遽頼んだのである。

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