1章~覚悟そして旅立ち~
第10話 翌日
―――そして翌日
コロシアムまであと4日
俺は町長の家の空き部屋に泊めてもらったと言うか、サリアがずっと泣いていたから付き添っていた。
その為、俺はほぼ徹夜だ………
「おはようございます。」
目の下が真っ黒いクマを作ったサリアが多少引きつった笑顔で挨拶してきた。
「おはよう………ごめん、限界だ………すまないが少しベッドで横になってくる」
なんだこのマジでダサい俺は………彼女もあまり寝られず酷い顔にも関わらず笑顔で挨拶してくれたのに、自分の睡眠欲に負けた………
マジで格好悪い。
だけど、凄く眠い……とりあえず挨拶は返して、自分のベッドまで手すりに掴まりながら歩いていく。
やっと部屋にたどり着いたと思えば雪崩落ちる様にベッドに倒れむ。
「あぁ~、これで目が覚めたら夢でしたって事にならないかなぁ………」
――――それから半日は寝たのだろうか、サリアが起こしにきた。
「レオ様!起きて下さい!!」
「ん………はっ!!」
レオはパッと眼を開け、ガバッ!と勢い良く起きて辺りをキョロキョロ見渡す。
「やっぱり夢じゃないのか………」
「夢?ですか?」
サリアは首を傾げ聞いてきた。
「あ、いや!こっちの話しだから気にしないで!あははは」
レオは慌てて対処する。
先ほどの体調とは違い、寝た事で体力は回復しているみたいだ。
「サリア、本当にすまない!俺の軽率な行動でこの様な事態に陥ってしまった………何かあれば何でも言ってくれ!俺はそういう事しか返せる事ができない………」
レオはベッドから降り、床で土下座をしながらサリアに謝罪した。
サリアはレオの急な行動により、あたふたしていたが心を落ち着かせて応えてくれた。
「レオ様、お顔を上げて下さい。私はレオ様が原因だと思っていませんよ?と言うのも、お父様も言っていませんでしたか?今回で5人目だと………まったく同じ話の内容が5人ですよ?その時点で変だと思いませんか?そして冒険者を見送った後にお父様が私に言っていました。もし、私が死んだ時………そこから新たな時が動き出すと………」
「そうだったのか………ん?ちょっと待て!何故、今回で5人目だと知っている?これは町長と俺の2人だけで話をしていた時の話だが?もしかして………?」
じっとサリアを見つめた。
「あ!それは………その……実は扉越しに聞き耳を立てて聞いていました………」
モジモジしながらサリアは答える。
それを聞いてレオは額に片手を当て、頭を左右に振りため息が漏れる。
「はぁ………何も無かったから良かったものの………もしかしたらサリアだって狙われていたかもしれないんだぞ?」
「ご、ごめんなさい!」
彼女は深々と頭を下げ謝罪した。
でも、元はといえば変な探りを入れた俺が事の発端だ。もちろん罪悪感はある。
「いやいや!元はといえば俺が原因なんだ。サリアは悪くない。だからそんなに謝らないでくれ。」
「は、はい………」
しばしの間、沈黙が続きお互い気まずい雰囲気ではあったが、そんな中切り込んだのはサリアの方だ。
「そ、そうでした!レオ様にお見せしたい物がございます!!」
「見せたいもの?」
サリアは真剣な眼差しで無言で頷く。
「実は以前、お父様が『私の身に何かあった時は冒険者に見せてやってくれ』と私にお願いをしてきた事がありました。たぶん、その事は今、この時なのだと思います………」
彼女は決心が付いた様な真剣な眼差しでレオに話した。
レオはゲームイベントの流れなら、たぶん彼女が話した事はこの先、又は今回の真意がわかるアクションだと気が付いた。ただ、これから行くのには昼過ぎで時間が少なく、日が暮れて闇が深くなるにつれてモンスターも凶暴化する為、少々リスクが伴う。自分1人なら兎も角、彼女も一緒となると難易度はさらに上がってしまう。しかし、ミグラスが企画したコロシアムまで今日を入れると4日後だ。さすがに時間が無い………
どうすればいいか迷っている中、彼女はレオが真剣な顔したままずっと考えこんでいる姿をみて、少し心配になり声を掛けた。
「あ、あの………レオ様?」
その一声にレオはハッ!と我に返る。
「あ、ごめん!ちょっと考え事していて………んと、その見せたいものって今からだと結構時間掛かる場所にあるのかな?」
「いえ!町の南側にある戦神の滝の祠にあるので、大体片道1時間程度って所です。」
「なるほど!って………片道1時間か………ちなみに今から行くことは可能か?」
「え!?今からですか?行けなくは無いですけど………今からだと日が暮れてしまいますよ?」
「かまわない。それを承知で決めたんだ。サリアの事はきちんと守るし、心配しなくていい。」
(俺にはアラウネしか戦闘要員は居ないが何とかなるだろう………)
「それでしたら………今から準備いたしますので、レオ様も準備が出来ましたら1階のロビーで待って頂けますか?」
「了解!んじゃ、ロビーで!」
お互い話が終えサリアはレオの部屋から退室し、自分の部屋へ戻り外出の準備に取り掛かる。
5分ほど経過し、先にレオが準備を終えたのでロビーで待っていると少し遅れてサリアもやってきた。
「遅くなってすみません!」
息を切らしながら走って向ってきた。
レオは彼女がたったこの距離で息を切らしているのに気付いた。だいぶ運動をしていないようだ。
「よし、時間的余裕も無いから早速行くとしよう。」
レオはサリアのリュックを何も言わず担ぎ、家を出た。
「あ、レオ様!自分の荷物くらいは自分で持ちます!」
彼女は慌ててレオが担いでいるリュックを受け取ろうとする。
「気にしなくていいよ!俺が持ちたいから持っているだけだし!そんな事より先を急ぐよ!」
レオとサリアは町の南口を出て道なりに南下していく。
しばらくすると標識があり左右に道が分かれていた。
サリアに聞くと戦神の滝は右だと言うので、そっちに向かう事にした。
(そろそろいいかな?)
レオは周りを見渡し人が居ないことを確認する。
「サリア、今からホムンクルスを召喚するけど、見た目はモンスターみたいだけど絶対大丈夫だから驚かないでね?」と一言断りを入れた。
『ホムンコール!!』
すると眩い光の中からアラウネが現れた。
案の定、サリアは顔を引き攣り、少し涙目になっていた。
無理も無いか………背丈が3m超える大型な図体だし………
「ご、ごめん………やっぱり怖いよね?」
「い、いえ!ぜ、ぜ、全然、大丈夫です………」
(うん、全然大丈夫じゃないね………)
怖がっては居るが、躊躇している時間の余裕は無い。
レオはサリアを抱き上げ、アラウネの手に乗ると、アラウネは自分の頭に2人を乗せた。
(図体は大きいけど、綺麗な女性なんだけどなぁ~)
とレオは心の中で少し愚痴る。
アラウネで移動中、そこから見る景色は素晴らしいものだった。
見渡す限り青く広い草原。そよ風が青々とした草の香りを新鮮な空気と共にレオ達に運ぶ。
あまりの気持ちいい風だった為、レオは深々と呼吸をする。
「はぁ~、何年ぶりだろう、こんな気持ちいい風に当たるのは………この世界も捨てたものじゃないなぁ~!」
サリアはアラウネに少し慣れてきたのか、怖がらずに乗っていられるようになった。
そしてレオの深呼吸を見て自分もする。
「すぅ~、はぁ~!これは気持ちいいですね!!私も外に出るのは久々なのでとても新鮮です!!」
お互い新鮮な空気で深呼吸したおかげで少し気が晴れた。
「なぁ、戦神の滝の祠って名前からして何かありそうな感じだけど、言い伝えとかってあるの?」
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