第7話 放課後の雑談

「やったぁぁぁぁ!!ありがとう!!お前達はきっと入ってくれるって俺は信じていたぜ!!」

「おい、健!喜ぶのは良いが、なんでこんな急にギルドなんて結成しようと思ったんだ?このゲームだってリリースされてまだ2日目だぞ?少し早すぎないか?」

「チッチッチッ!創甘いな!!このゲームは今度ギルドイベントが開催される事が決定された。そしてそのランキング戦の景品が豪華らしいんだ!!どうせなら、この知っているメンバーでと思ってな!」

健はよくぞ聞いてくれたと言わんばかりに得意げに話す。

その光景をみた創は言わなきゃ良かったと後悔した。

だって、奴の調子こいてる姿を見ていると無性に腹が立ってくるからだ。


「まぁ、残念だが俺はソレイユ大陸に居ないし、まだレベル低いから遠慮しておく。すまない………」

「私はそんなの気にしないけどなぁ~!なんなら私が創を迎えに行ってあげようか?」

葵はニヤニヤしながら話しかけてくる。彼女は俺を簡単に逃がしてくれそうもない様子だ。


「でも、葵は俺の居るフォスカ島までの行き方知っているのか?」

「あ………知らない………」

葵は悔しそうな表情で「あぁぁ、もう!!せっかく創と一緒にゲーム楽しめると思ったのにぃぃぃぃ!!もう、なんか悔しい!!」っと葵はその場でバタバタと暴れる。


「ん~フォスカ島………フォスカ島か………」

夏樹は創が居るフォスカ島が何か引っかかるのか、腕を組みぶつぶつと独り言を言いながら考えている。


「あの、もしかしてそのフォスカ島って敵ある程度強くないですか?」

何かわかったのか創に質問してきた。

「そう言われてみれば確かに、敵は強かったかもな………最初に倒した敵が★付きだったし………」

「はぁ!?」その場に居た3人が目を見開き驚いた。

夏樹はやっぱりと確信した表情をし「あの………それもしかし………」と言いかけた時、葵は夏樹の言葉を上書きするように勢い良く聞いてきた。


「★付きってボス属性じゃん!!なんでフィールドにいるのよ?」

さっきまでバタバタと暴れていた葵は一遍し、創の両肩を掴み前後に揺さぶりながら聞いてきた。

(本当にコイツは忙しい女だな………)と心の底から思う創だった。


「そ、そんなの………俺に聞かれたってわからねぇよ………しかも、★付きはボス属性じゃなく、レアモンスターだよ。てか、もういい加減揺さぶるのやめてくれ!」

創はうんざりした表情で葵にやめるよう促す。


「あ!ごめん!」

葵はハッ!と我に返り肩を揺さぶっていた手を離し、少し申し訳なさそうにする。

だが、やっぱり自分の気持ちを抑えることが出来なく再び創に言い寄る。


「だって!普通、フィールドにボス属性モンスターが居るなんてありえないよ!雑魚敵がボスって事でしょ?」

彼女のあまりの勢いに創は完全に押されてしまった。

しかも、彼女は先程、俺が言った事を全く聞いていない。

★付きはボス属性じゃなくレアモンスターだ!!

だが、創は葵の圧にそんなことはもうどうでも良くなってきた。


「いやいや、俺に言われても………俺だって何でなのかわからないし……」

創は葵意外の3人にこの場を何とかするようアイコンタクトをする。それに気付いたのは琴音だった。


「葵ちゃん!創さんも困っているみたいだし、その辺にして少し落ち着こう?ちょっとらしくないよ?」

親友から言われ、創を見ると確かに迷惑そうな表情をしていたのに気付き、少しやり過ぎたと反省し静かに彼から離れた。

そんな創も葵の姿を見て(少しやりすぎたかな?)と可哀想に感じた。


「まぁ、普通のRPGならまずありえない事だし、疑問に思うのは無理も無いさ。俺だってこの話題になるまでただのレアモンスターとしか思ってもいなかったし、やけにレベル上がるなぁ~としか思ってなかったしね!」

「ってことは創のレベルいくつなんだ?今の話しなら結構上がってるんじゃないか?」

創の話を聞いて咄嗟に健が聞いてきた。


「今はレベル60だぞ?」

それを聞いた4人は衝撃のあまり呆然と立ち尽くす。

「無知より怖いものは無いとはこの事か?」と健は葵と顔を合わす。

「そうね、本人も訳わかってなさそうだしね………」

「何が何でもウチらのギルドに入れたいですね!」

そう言って夏樹は目を輝かせている。


「あ、あの………どうしてもダメなんですか?」

琴音は上目遣いでお願いしてくる。

正直、上目遣いは反則だ………グッと俺の心を持っていかれそうになる。

これだけのリアクションを取られると鈍感な俺でさえ自分のレベルがどれだけ突出しているのかわかる。


「まぁ、せっかく誘ってくれたのは有難いが、今回はすまない。次はあっちの世界であった時にまた誘ってくれ!今日はもう帰ろうぜ!?」

創達が話しこんでいる間に夕焼けが眩しい時間になっていた。

健がポケットからスマホを取り出し時間をみる。


「もうこんな時間か!!早く帰ってログインしねぇと!!」

「あぁ!本当だ!!みんなもう帰ろう!!後はあっちの世界で!」

葵の発言でこの場を締め、皆は各自帰宅した。

創は帰宅後、帰りの途中で買ったコンビニ弁当を食べ、用を済ませてからすぐにログインする。


昨日、ログアウトした町外れの森の中から再開した。

「ふう………今日はいろいろあり過ぎて、ようやくログインできたわぁ!」

「お帰りなさいませ。マスター。」

レオがログインすると同時にアラウネも出現した。

どうやらホムンクルスは『ホムンコール』で収容しない限り、プレイヤーのログイン・アウト時と同時に出現・消失するみたいだ。

創は健の言っていたイベントや製薬に関して気になることがあったため、とりあえず町に戻る事にし、アラウネと敵を倒しながら向った。

道中出会ったモンスターは健達が言っていた通りで、ボス属性ばかりのモンスターだった。この森だけなのか、それともこの島全体がそうなのかはわからないが、何か理由がありそうな予感がする。

創とアラウネはようやく町の入り口までたどり着いた。


「流石に町へアラウネを連れて行くのはマズイよな……とりあえず収容しとくか。」

『ホムンリバース!』

創はアラウネを収容し、町へ入ると昨日とは少し雰囲気が違っていた。

町全体が色鮮やかで華やかな装飾がされており、お祭り雰囲気を醸しだし賑わっている。

また、町の中央広場にはあきらかに村の所有物では無い大きなビジョンが用意されており、人だかりも出来ていた。

創はとりあえずこの状況を把握するため、広場に居た町人に聞くことにした。


「あの、すみません。町全体に装飾されている飾りやこの大きなビジョンはどうしたのですか?」

「あぁ、あれかい?天からの報せが来て、何やら5日後に冒険者による戦技大会が開催されるみたいですよ!それで、天からは華やかな装飾を施しなさいと命を受け、この様に準備をしている最中なんですよ。」

「なるほど!そうでしたか。ご丁寧にありがとうございます。」

町人が言う天とはゲームマスター、あるいはAIの事だろう。

創は軽く頭を下げその場を後にし、せっかくなので出店を見て回る事にした。

ゲーム内での出店はどんな変り種があるのか、ちょっとは楽しみにしていたんだが綿飴、たこ焼き、フライドポテトなど現実とほぼ同じで少し残念ではあった。

そんな中、出店ではないが気になるお店が目に入り、行ってみる事にした。


店に入ると、そこは魔法屋だった。

中には色々な魔道書、巻物、マジックアイテムなどこんな田舎町ではありえないくらいの品揃えだった。


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